世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第六十五話

世界樹の迷宮、第二階層・常緋ノ樹林。

 

その名の通り、移ろう事無く緋に染まり続ける葉が美しい階層。そんな場所を彼等、ギルド・フロンティアは進み行き。

 

「おぉ、本当に回るな」

「凄い勢いだね」

「確かに、あの勢いの儘突撃されたら無事では済まないわね」

 

F.O.Eを虐めていた。いや、そうは言っても別に虐めている訳では無く、そう見えるだけで。行っているのは確認だ。調べた情報が本当に合っているのかを。

 

それでも虐められていると言っても間違いで無い状態に成っているF.O.E。螺旋の水泡樹と名付けられているそのモンスターは。物理的な攻撃を受けるとその勢いを利用するのか回転し、其の儘突撃してくると言う。

 

で、それが本当かどうか確かめる為に攻撃したのだが、何時の間にか何処まで回転が速く為るのかを確かめようと攻撃を浴びせられている。

 

「まぁ、ふざけてやっているわけじゃないんですけどね」

「突撃をさせない為に攻撃し続けてる訳だしな」

「態々、痛い思いはしたくないですしね……あ、木にぶつかった」

「で、そのまま倒れると。限界かね?」

「ちょっと確認してくるわね」

「頼む」

 

近づいて行くコバックを、若しもの時は何時でも助けられるように構えながら、そう言えばと口にする。

 

「此処にもありましたね。樹海磁軸」

「あれなぁ。本当に世界樹が近くに在る所だと何故かあるよな」

「あれですかね、天の支配者が行き来が楽になる様に設置したとか」

「成程と思ったが他の迷宮に在るのはなんでだよ」

「え、それは……ほら。管理者は一人じゃないって事で」

「迷宮の?」

「迷宮の」

「ふーん、と言う事はアスラーガ近く迷宮に在るのは守鎮の民が作ったんかね」

「…確かに。、集落内にもありましたしねあれ」

 

そう考えれば在り得ない事でも無いかも知れない。まぁ、世界樹の謎の一つである樹海磁軸の事実が楽だから設置したなんて事だったなら。仕方ないとは思うが……なんか、嫌だ。

 

と、如何でも良い事を考えていると。コバックが軽く手を振っているのが見える。如何やら問題無い様だ。

 

「さて、じゃあ。次だな」

「次?まだ何かするんですか?」

「いや、お前が持ってきた資料に面白い事が書いてあったからな。其れもと思ってな」

「成程…しかし、面白い事ですか」

 

そんなもの有っただろうかとレフィーヤは首を傾げる。自分が読んだ時はそんなのは無かったと思うがと。

 

「あれだ、F.O.Eは特定の行動を同じ場所で繰り返すって書いてたった少し前だ」

「少し前ですか?」

 

と言うと、確か敵対するかしないかと言った事が書いて在った様な。

 

「ま、取り敢えず試す為に探すか」

「また?流石に試す為だけに戦うのはどうかと思うのだだけれど?」

「いや、今回は情報が正しければ戦わないから」

「されなら先にそっちを試せばよかったんじゃないの?」

 

と、言ったのはコバック。何気なく呟かれた其れは。確かにと頷くしかないものだった。尤も。

 

「過ぎた事は気にしても仕方ないから」

「誤魔化した?」

「誤魔化しましたね」

「確実に誤魔化したわね」

「うるせぇよ、と言うかコバックはコバックでさっさとそう言えよ」

「いえ、てっきり試し打ちがしたいのかと思ったのよ、あたし」

 

「いえ、はっきりと言ってましたよね。確認をするって」

「言ってたね」

 

「えッ?」

「え?」

「え?」

 

シンッと、静まり返る。そして、コバックの頬を汗が伝う。恐る恐ると言った様子で彼は問い掛けた。

 

「えっと、何時?」

「朝食後の休憩時」

「あぁ……成程」

「おい」

「ちょ、ちょっと別の事に意識が行ってただけよ! 決して聞く積りが無くて聞かなかった訳じゃ無いわ!!」

「若しも聞く積りが無かったとかだったらお前の頭蓋を撃ち抜いている所だよ。何だったら今から増やしてやろうか? 耳の穴」

「怖いわよ!!」

 

だったらちゃんと話聞けば良いのにと銃口で頭をぐりぐりとされるコバックを見ながら、そう思ったレフィーヤであった。因みに、何に気を取られていたのか後に訊いてみたら

 

「女将さんの娘が一生懸命皿を片付けててね。体が強くないって話なのに偉いわねぇって、思い乍ら見てたのよ」

 

その言葉に、ふむとレフィーヤは考えた。そう、とても単純に。仲間である自分の視点から出なく、第三者からの視点で。すると何と言う事か。

 

単純に見て取れる絵面は少女の事を見つめる男性。詰り、完全にあれな事と思われても仕方ない。事案と言うやつだ。

 

と、其の時だ。

 

「あ」

 

そんなハインリヒから呟きが聞えた。如何したのかと見れば、あれと指さす。その方を見ると、ふわふわと揺蕩う様に進むF.O.E。螺旋の水泡樹が居た。しかも二体。

 

「おぉ、居た居た。じゃ取り敢えずコバックへの折檻は帰ってからするとしてさっくり試すか」

「逃れられないわよね」

「別に良いぞ逃げたければ逃げても、その場合全力で追い立てるが」

「吊るされた方がマシねそれは」

 

元からあたしが悪いのだしねと。そう言いながら諦めた様に肩を落とすコバック。その様子を見ながら、さて、ローウェンは何を試すのかと考えながら後に続き。

 

螺旋の水泡樹の揺蕩う場所の一歩手前で止まった。

 

何故止まるのかと疑問に思いつつも、同じ様に止まり。目の前に螺旋の水泡樹が現れる。反射的に杖を構える、が螺旋の水泡樹は彼等など知らんと言わんばかりにふわふわと揺蕩う様に去って行った。

 

彼等は、すぐ横に居たのに。

 

「………えぇ」

「…うん、あれだな。見えてないのかね?」

「その割には攻撃したらきっちり向かってきたわよね。あたし達移動しながらだったのに」

「…そう言えば攻撃するまで全く反応なかったね」

「そうだったな」

 

何気ない様子で、前へ出るローウェン。そのまま、二匹の螺旋の水泡樹の間をするりと抜けていく。が、やはり無反応。同じ様に三人も続くもやはり同じ。殺意や敵意も滲ませていたのに無反応。

 

そのまま、何も言わずに黙々と進み、やはり同じような事、同じ場所を揺蕩うだけの螺旋の水泡樹を無視して進み、七階に足を踏み入れて。ポツリと呟いた。

 

「いや、流石に生物として可笑しいだろ」

 

その通りだと、レフィーヤは思った。

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