一歩前に出て…戻る。
眼前で炎が盛る。
「おぉー」
一歩前に出て…戻る。
眼前で炎が盛る。
「おぉー」
「やっぱり」
一歩前に出て…戻る。
眼前で炎が盛る。
「おぉー」
「同じ事しかしませんね」
言いながらレフィーヤが見るのは今まさに炎を吐き出しているモンスター、F.O.Eの一体であるベビーサラマンダーと呼ばれるものだ。
なんでも、目の前に現れたものを燃やそうとするらしいの、しかも少しでも目の前から外れると狙って来ないとか。試して見た処それは事実であった。のだが、其処でふと疑問に思った事を口にしたのだ。
「これ、どの位繰り返したら学習して狙ってくるように成るんですかね?」
分からないなら試して見ようと初めて今に至る。そしてレフィーヤは愕然としていた。
「三十回も繰り返してるのに全く変わらないって…可笑しいでしょう」
「こっちに近づいてもこないしな」
「あと、地味に思ってたのだけれど」
「何ですか?」
「燃えてるのに燃えてない草って可笑しくないかしら?」
「……そう言えばそうですね」
頭の悪い事を言っている様に思えるが、事実として地面に生える草はベビーサラマンダーの吐く炎に因って燃え、しかし灰になる事無く其処に在り続けているのだ。とんでもない耐火性能である。ずっと燃やされ続けて強くなったのだろうか。それとも、元からその様に作られているのか。
「まぁ、取り敢えず。やっぱりF.O.Eは生物として可笑しいのは間違いないですね」
「そうだね…で、ローウェンは何時まで其れをやってる積りなんだい?」
「彼奴が疲れ果てるまで」
「て、事はもうやめるって事よね」
そんなコバックの言葉に、改めてベビーサラマンダーを見ると、へたり込んでいる姿が見える。何気なく前に進み出てみるも、炎を吐いてこない。完全に疲れ果ててしまっている様だ。
「……レフィーヤ、止め頼む」
「あ、はーい」
そしていつもの。これ見よがしに目の前で氷槍を作って見せる。が、やはりなんの反応する元気は無いようで。そのまま、どうせだからと大きく強くと作った氷槍を、態々真上まで移動させて。
「そい」
頭部に落す。音を立てて勢いよく地面にめり込むベビーサラマンダー。ビクリとその体を大きく振るわせて、動きを止めた。
「…良し」
「態々真上から落とす意味は?」
「特にないです」
普通に放っても威力はあると自負している。というか其れで駄目でもいけるまで叩き込めばいい。動けないのだから的でしか無いし。詰り、本当に意味が在る訳では無い。いや、如いて言えば一撃だけで良いから楽、だからと言った所か。
「…そう言えば」
ふと、そんな事を呟きながら何かを探す様に辺りを見渡すレフィーヤ。
「なんか、モンスター全然居ませんね」
「ん?……そう言えばそうだね。考えてみれば、あんな風にベビーサラマンダーで遊んでたのに一匹も現れないのは可笑しいな」
「あ、遊んでた判定なんですね」
「傍から見れば遊んでた、或はふざけてたようにしか見えないだろうあれは?」
レフィーヤは確かにと頷く。と、話がずれてしまったと戻す様に言葉にする。
「で、結局何で出て来なかったんですかね?」
「強い事は確かなF.O.E相手にあんなことをしてたからモンスターにやべぇ奴だって思われちゃったのかしら?」
「間違って無い様に思えるな」
「でしょう?あ、これベビーサラマンダーから採れたものね」
「あ、私が持っておきます」
「お願いするわね」
コバックから受け取った物を仕舞いつつ、ふと思い出した事を口にした。
「もしかして六階で殺気放ったから逃げたとか?」
「……あぁ、ありそう」
「よっぽどの馬鹿でない限りは突っ込んでは来ないわよね、それなら」
まぁ、流石にモンスターが全く出て来なく成る様な事は無いかと。軽く笑って。
「…無いですよね。流石に」
「僕は経験に無いかな」
「あたしもよ」
確認する様にそれぞれ言って、そして視線を何故か上を見つめているローウェンに向けた。
「で、ローウェンは如何ですか?」
「あるぞ」
「あるの?!」
人外凄い。思わずそんな言葉が過る。流石に殺気だけでモンスターが逃げ出すなんてことはオラリオでも……多分無かった。そう、多分。
それは置いて置くとして。
「何で上なんか見てるんですか?」
「いや、居るなぁ…って思ってな」
「はい?」
何が?と首を傾げるレフィーヤ。一体何を見つけたのかと彼女も、更にコバックやハインリヒも上を見る。が、しかし。別に此れと言ったモノは見当たらない。視線をローウェンに向ける。
「で、何が居るんですか?」
「知り合い」
「知り合いですか……はい?」
知り合いと今言ったかと思わずローウェンを二度見するレフィーヤ。彼は、面倒だと言わんばかりに顔を顰め乍ら頭を掻く。
「お前達が気にしても仕方ない事だ。取りあえずサクッと進むぞ。F.O.Eに気を付けながら進めば全く戦闘する事無く行けるだろうし」
「え、それって」
「モンスターは出て来ないって事だ」
「……何で分かるんですか?」
「いや、なんでって言われてもな」
少し、言葉を選ぶ様に間を置いて。
「生物的に終わってる奴でも無い限りは…死にたくないのは当然だろう?」
「それって」
其れって詰り。今現在、モンスター達が出たら死ぬと思う様な状態と言う事なのかと。思ったが口に出して言えなかったレフィーヤだった。
「居ると分かってればF.O.Eで…いや、言っても仕方ないか」
そう、鞄の中を確認しながら。
「出来れば、あの爺さんに消耗した状態で会いたくないんだけどな」
殺し合いに成るだろうしと、独り言のように彼は呟いた。