世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

66 / 241
第六十六話

一歩前に出て…戻る。

 

眼前で炎が盛る。

 

「おぉー」

 

一歩前に出て…戻る。

 

眼前で炎が盛る。

 

「おぉー」

「やっぱり」

 

一歩前に出て…戻る。

 

眼前で炎が盛る。

 

「おぉー」

「同じ事しかしませんね」

 

言いながらレフィーヤが見るのは今まさに炎を吐き出しているモンスター、F.O.Eの一体であるベビーサラマンダーと呼ばれるものだ。

 

なんでも、目の前に現れたものを燃やそうとするらしいの、しかも少しでも目の前から外れると狙って来ないとか。試して見た処それは事実であった。のだが、其処でふと疑問に思った事を口にしたのだ。

 

「これ、どの位繰り返したら学習して狙ってくるように成るんですかね?」

 

分からないなら試して見ようと初めて今に至る。そしてレフィーヤは愕然としていた。

 

「三十回も繰り返してるのに全く変わらないって…可笑しいでしょう」

「こっちに近づいてもこないしな」

「あと、地味に思ってたのだけれど」

「何ですか?」

「燃えてるのに燃えてない草って可笑しくないかしら?」

「……そう言えばそうですね」

 

頭の悪い事を言っている様に思えるが、事実として地面に生える草はベビーサラマンダーの吐く炎に因って燃え、しかし灰になる事無く其処に在り続けているのだ。とんでもない耐火性能である。ずっと燃やされ続けて強くなったのだろうか。それとも、元からその様に作られているのか。

 

「まぁ、取り敢えず。やっぱりF.O.Eは生物として可笑しいのは間違いないですね」

「そうだね…で、ローウェンは何時まで其れをやってる積りなんだい?」

「彼奴が疲れ果てるまで」

「て、事はもうやめるって事よね」

 

そんなコバックの言葉に、改めてベビーサラマンダーを見ると、へたり込んでいる姿が見える。何気なく前に進み出てみるも、炎を吐いてこない。完全に疲れ果ててしまっている様だ。

 

「……レフィーヤ、止め頼む」

「あ、はーい」

 

そしていつもの。これ見よがしに目の前で氷槍を作って見せる。が、やはりなんの反応する元気は無いようで。そのまま、どうせだからと大きく強くと作った氷槍を、態々真上まで移動させて。

 

「そい」

 

頭部に落す。音を立てて勢いよく地面にめり込むベビーサラマンダー。ビクリとその体を大きく振るわせて、動きを止めた。

 

「…良し」

「態々真上から落とす意味は?」

「特にないです」

 

普通に放っても威力はあると自負している。というか其れで駄目でもいけるまで叩き込めばいい。動けないのだから的でしか無いし。詰り、本当に意味が在る訳では無い。いや、如いて言えば一撃だけで良いから楽、だからと言った所か。

 

「…そう言えば」

 

ふと、そんな事を呟きながら何かを探す様に辺りを見渡すレフィーヤ。

 

「なんか、モンスター全然居ませんね」

「ん?……そう言えばそうだね。考えてみれば、あんな風にベビーサラマンダーで遊んでたのに一匹も現れないのは可笑しいな」

「あ、遊んでた判定なんですね」

「傍から見れば遊んでた、或はふざけてたようにしか見えないだろうあれは?」

 

レフィーヤは確かにと頷く。と、話がずれてしまったと戻す様に言葉にする。

 

「で、結局何で出て来なかったんですかね?」

「強い事は確かなF.O.E相手にあんなことをしてたからモンスターにやべぇ奴だって思われちゃったのかしら?」

「間違って無い様に思えるな」

「でしょう?あ、これベビーサラマンダーから採れたものね」

「あ、私が持っておきます」

「お願いするわね」

 

コバックから受け取った物を仕舞いつつ、ふと思い出した事を口にした。

 

「もしかして六階で殺気放ったから逃げたとか?」

「……あぁ、ありそう」

「よっぽどの馬鹿でない限りは突っ込んでは来ないわよね、それなら」

 

まぁ、流石にモンスターが全く出て来なく成る様な事は無いかと。軽く笑って。

 

「…無いですよね。流石に」

「僕は経験に無いかな」

「あたしもよ」

 

確認する様にそれぞれ言って、そして視線を何故か上を見つめているローウェンに向けた。

 

「で、ローウェンは如何ですか?」

「あるぞ」

「あるの?!」

 

人外凄い。思わずそんな言葉が過る。流石に殺気だけでモンスターが逃げ出すなんてことはオラリオでも……多分無かった。そう、多分。

 

それは置いて置くとして。

 

「何で上なんか見てるんですか?」

「いや、居るなぁ…って思ってな」

「はい?」

 

何が?と首を傾げるレフィーヤ。一体何を見つけたのかと彼女も、更にコバックやハインリヒも上を見る。が、しかし。別に此れと言ったモノは見当たらない。視線をローウェンに向ける。

 

「で、何が居るんですか?」

「知り合い」

「知り合いですか……はい?」

 

知り合いと今言ったかと思わずローウェンを二度見するレフィーヤ。彼は、面倒だと言わんばかりに顔を顰め乍ら頭を掻く。

 

「お前達が気にしても仕方ない事だ。取りあえずサクッと進むぞ。F.O.Eに気を付けながら進めば全く戦闘する事無く行けるだろうし」

「え、それって」

「モンスターは出て来ないって事だ」

「……何で分かるんですか?」

「いや、なんでって言われてもな」

 

少し、言葉を選ぶ様に間を置いて。

 

「生物的に終わってる奴でも無い限りは…死にたくないのは当然だろう?」

「それって」

 

其れって詰り。今現在、モンスター達が出たら死ぬと思う様な状態と言う事なのかと。思ったが口に出して言えなかったレフィーヤだった。

 

「居ると分かってればF.O.Eで…いや、言っても仕方ないか」

 

そう、鞄の中を確認しながら。

 

「出来れば、あの爺さんに消耗した状態で会いたくないんだけどな」

 

殺し合いに成るだろうしと、独り言のように彼は呟いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。