世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第六十七話

ローウェンの言葉の通り、進めど進めどモンスターの姿は、唯同じ事を繰り返すF.O.Eのみ。其れ以外は、一切ない。

 

そしてローウェンはと言えば、強力と言っても脅威とは言えないF.O.Eを避ける様に進んでいた。此れ以上消耗しない様に。そんな彼を無視しで態々F.O.Eの相手をする様な理由などない三人も同じように動く。

 

F.O.Eの動く音と、自分たちが歩む音以外の無い第二階層。明確な変化を感じ取れたのは、十階に到達した時だ。

 

情報に因れば、炎の魔人と呼ばれる第二階層の主である強大なモンスターが居る階。その情報が正しいのだと理解出来る程の存在感と。其れを塗り潰す様に感じる何者かの意思。其れは殺気か、敵意か。或は・・・覚悟とでも呼ぶべきもの。

 

分かる事は、主以上に脅威と言える何者かが、ローウェンの知り合いだと言う人物が居ると言う事。

 

思わず息を呑むレフィーヤ。ローウェンの知り合いと言う時点で相当な人物であるとは思っていたが、想像以上で在った。それでも、気にしていないかのようにローウェンが進むのを見て、彼女も進む。同じくモンスターの居ない十階を。

 

それにしてもと、納得する。確かにこの様な状態ならば、真面なモンスターは出て来れないだろう。

 

途中、ベビーサラマンダーに焼かれる螺旋の水泡樹が見えるも、彼等は気を向けない。黙々と、黙々と歩みを進めて。

 

二つの人影を見た。

 

何方も黒衣を纏って居る。と、内の一人が彼等に、今、気が付いた様に振り返る。恰好を見るにドクトルマグスと思われる少女が口を開き。

 

「あら、君たち……って、爺?」

 

その横をするりと抜ける様に前へ出た人物にたいして訝し気に見つめる。爺と呼ばれたガンナーの男性は少女の言葉に耳を貸す事無く、彼等に向かって。いいや、彼に、ローウェンに向かって歩んでいく。

 

そして、それはローウェンも同じ事。彼等は何も語らず、互いに歩み寄り。手の届く距離まで近づき。

 

 

『死ねぇ!!』

 

 

殴り合いを始めた。

 

「え、ちょ、じい、え?? えぇえええええええええええええええ?!」

 

驚きと困惑から声を出す少女。其れを横目に、彼等はその殴り合いを見て、また驚いた様に口にする。

 

「凄い、二人も避けながら相手に攻撃してますよ」

「あれだけ激しく動いてるのに、拳を全て見切っているのかしら」

「先読みまで考えればとんでもないハイレベルな殴り合いだね」

 

「言う事それだけなの?!」

 

思わずと言った様子で叫ぶ少女。其れを聞いてレフィーヤは彼女の方を向いて。

 

「いえだって、まだ撃ち合い始めた訳じゃ無いですし」

「そうね、まだ序の口よこんなの」

「うんうん」

 

「頭おかしいわよ君達?! あぁもぉー!! ストップ! 二人とも止めなさい!!」

 

えぇー、止めちゃうのー? なんて呟きながら止めようとする少女をさらに止める様な真似はしない。正直、止めてもらわないと話が進まないし。別に、頭が可笑しいと言われてショックを受けた訳では無い。断じてだ。

 

間に入られた二人はと言えば、仕方ないと言った様子で距離を取る。なので、レフィーヤは近づく。

 

「ちょっと爺。如何したのよ行き成り」

「申し訳ございません。少々懐かしいクソガキのが見えたもので、陥没させてやろうかと」

「かんぼ?!」

「ボケ老人がはしゃいでんじゃねぇよ」

 

「あ”? ぶちのめすぞクソガキ」

「は? やれるとおもってるのかボケ老人風情が」

「だから止めなさいって言ってるでしょう!!」

 

全くと、頭が痛いと言わんばかりに手で押さえながら。其れを見ながらふと思った事を口にするレフィーヤ。

 

「それで貴方達なんて言うんですか?」

「知らないで絡んで来たの?!」

「いえ、ローウェンさんは彼の事を知っているみたいですが、少なくとも私はさっぱりです」

「えぇ…」

 

唖然とした様に声を零す少女、しかし少しすれば気を取り直して口にする。

 

「なら、名乗ってあげる。あたしはアーテリンデ。それで」

 

言いながら、アーテリンデと名乗った少女は爺と呼ぶ男性の方を向き。ローウェンに向かって中指を立てている姿を目にする。

 

「って、何してるのよ!?」

「申し訳ございませんお嬢様。全てクソガキが悪いのです」

「止めなさいって言ってるでしょう!! あぁもう……はぁ、それで彼があたしの仲間のライシュッツよ」

「他人に紹介をさせて置いて何も言わない爺がいるらしい」

「首をへし折る」

「だ・か・ら! 止めなさいって何度言わせるの!!」

 

まるで叫ぶ様に言うアーテリンデ。しかし、三人はそれどころでは無い。今、アーテリンデが言った男性の名前。それは聞き覚えの在る物で、深く印象に残っている者だったから。思わず、零す様に呟いた。

 

「ライシュッツって…あの」

「え?…えぇ、そうよ。流石に、君達も知って居る様ね」

 

頷くアーテリンデ。やはりかと震える。まさか、この様な場所で出会う事の成ろうとはと。あの。

 

「人外ガンナーの一人であるライシュッツと出会うとは」

「そう、じんが――――えッ、じ、人外? なにそれ??」

 

魔弾の銃士じゃなくて? と、首を傾げるアーテリンデ。それを見る事無く視線をローウェンへと向ける。頭を突き合わせてゴリゴリと嫌な音を響かせている二人を見る。殺し合いに成ると言っていたが、大丈夫なのだろうかと。

 

そう、思っていると。ローウェンはふっと息を吐いて、離れる。

 

「変わらんなあんたは」

「お主もな」

 

先程までの行為など無かったと言わんばかりの様子。余りの変わり様に付いていけないと言った様子のアーテリンデ。だが、レフィーヤは勿論他の二人にも分かった。戦意が高まっていると。

 

「……で?」

「なんだ」

「言わなきゃ分からんほど耄碌したのか」

 

先程までのは唯の戯れだと思わせる程の圧。発しながら、しかし仕方ないと言わんばかりに息を吐いて。

 

「あんた、何してんだ?」

「それは」

 

「なにも…してないよな?」

 

答えようとしたアーテリンデの言葉を押し退けて、彼は断言した。其れに、少しムッとした様子のアーテリンデと、何も言わむライシュッツ。

 

「あぁ」

 

その様子に、言葉が零れる。まるで、耐えがたいと言わんばかりに。

 

「気にくわんな。本当に気にくわん」

「ならば……何する」

「言わなきゃ…分からんか?」

「…いいや」

 

否定する様に口にしてライシュッツは銃を、ローウェンへと向ける。

 

「爺、何を?!」

「申し訳ございませんお嬢様。必ず辿り着きます」

「―――――――ッ?!」

「今ここで」

 

 

「殺さなければ」

 

 

アーテリンデは悲痛な表情を浮かべながらも、ならばと武器を構えようとしてライシュッツに下がる様に手で示される。思わずと言った様子でライシュッツを見るが。しかし、最後には下がって行った。

 

その行動、その言葉に、ローウェンは静かに手で顔を覆いながら呟く様に口にする。

 

「あんたが何でそんな事にしてるのかは知らん…が」

 

そして。

 

「倒させてもらう。冒険者としてな」

 

銃を抜いた。

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