世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第六十八話

―――銃声が響く

 

其れは如何なんだと思う事は多々あれど。それでも、レフィーヤはローウェンと言う冒険者を尊敬できる人物だと思っている。キチガイだけど。

 

―――銃声が響く

 

けれど、どうしてもふと思ってしまう事があった。オラリオに居る恩恵を得た冒険者に比べるとやはり劣るだろうな、なんて。決まってその後、キチガイさでは勝っているなと思うのだが。

 

―――銃声が響く

 

あぁそう言えばと。今更ながら思い出す。本気で戦う彼を見た事はあるが、一切残弾数を気にせずに全力で戦う彼を見た事無かったなと。

 

―――銃声が響く

 

そんな事を目の前の異常な光景を目にしながら、他人事の様に思っていた。

 

 

 

「なによこれ」

 

唖然とした様子で、アーテリンデが呟いた。最早震える事すら出来ない少女はしかし、それを留める事が出来なかったのだろう。そして、その言葉は唯二人を除いた全員が抱いた言葉だ。

 

他の二人はどんな顔をしているのだろうか。そんな事を片隅で思うも、視線を外す事が出来ない。一歩も動かずに。しかし。

 

自らに向かって来る弾丸を全て射ち落し続けている二人から。

 

―――銃声が響く

 

それはライシュッツの二丁拳銃から弾丸が放たれる。その音は二、放たれた弾丸は…十二。

 

―――銃声が響く

 

それはローウェンが弾丸を撃ち放つ。音は一、放たれた弾丸は三。そして、弾丸が弾丸を弾く音が連続する。

 

もはや疑問しかない。はてと、自分は何方に驚けば良いのか。一瞬にして十二発もほぼ同時に撃ち放ったライシュッツに驚けば良いのか。其れとも、その放たれた弾丸をたったの三発で全て射ち落したローウェンに驚けば良いのか。

 

と、其の時。ふっと音が止む。二人が動きを止めて、ゆっくりとした動作でほぐす様に肩を回したり弾を込めたり。小休止とうべきか。其れとも準備運動が終わったとでもいうべきか。

 

変わらず、二人から視線をさらす事が出来ない。もし今、モンスターに襲われればひとたまりも無いだろう。その事に気が付いていても、無理だった。やはりゆっくりとした動作で動く彼等を見て、見て。そして。

 

何時の間にか、音も無く二人は駆けだしていた。

 

 

「…え、走って」

「追うぞ」

「はい」

 

やはり、唖然としているアーテリンデ。其れを置去りにするのは申し訳ないが一瞬たりとも見逃せないと、彼等は二人を追う様に駆ける。近づき過ぎれば危険だから、一定の距離を保ちつつ。駆ける二人を見る。

 

速い訳では無い、だが、油断すると見失いそうになる。なんだあれはと、呆れるしかない。どんな走り方をすればそんな事になるのかと。

 

当然の様に、駆ける音の無い二人。響くのは唯、銃声のみ。

 

一手先、二手先、三手先を読んで動く。

 

一歩先、二歩先、三歩先を考えて撃つ。

 

するとどうだ。互いに其れを行っているからか、撃ち放たれた弾丸はまるで吸い込まれる様に相手に向かって行き、しかし同じ期吸い寄せられたかのような相手の弾丸によって弾かれる。

 

そんな光景が、続く、続く、続き。不意にライシュッツの放つ弾丸の一発が、見当違いの方向へと向かって行く。外したのかと、思いながらも視線を二人に向け続けていると。

 

とんっと、軽やかにローウェンが前に出た。直後、先程まで彼の居た場所で炎が躍る。ぎょっとするレフィーヤ。一体何がと思うよりも前に、答えの方からやってきた。

 

怒り猛るベビーサラマンダー。眼前に現れたもののみを焼き払うだけであった其れが、猪突猛進と言う言葉が似合う程の突撃を見せている。向かうのはローウェン。其れは近くに居たと言うだけの事。そして、それにローウェンは視線を向ける事無く関節を撃ち抜く。勢いよく転がるベビーサラマンダー。何が起きたのか分からないと言った様子だが、するりと動いたローウェンによって。弾丸を防ぐ盾として利用される。

 

沈黙するベビーサラマンダー。そして、何も無かったと言わんばかりに撃ち合いながら駆け抜けていく二人。F.O.Eが一瞬にして倒された事もそうだが。其れ以上にF.O.Eですら戦闘に利用してしまうと言う狂気じみた行動に戦慄が走る。

 

 

けれど、それが一度だけの物で在る等誰も思わわず。またそれは正しい。

 

 

弾丸が放たれる。すると螺旋の水泡樹が回転しながらローウェンへと向かい。其れを迎撃する様に放たれた弾丸が何故かライシュッツを狙う様に向かっていった。

 

弾丸が放たれる。すると襲い掛かろうと躍り出た樹海の炎王と呼ばれるF.O.Eはしかし、ライシュッツに因って四肢を撃ち抜かれ盾として利用される。

 

弾丸が放たれる。すると迎え撃つ覇王樹と名付けられているF.O.Eはしかし…茨に叩き込まれてへたり込んだ。

 

 

F.O.Eが居れば利用し、しかし確実に止めを刺しながら突き進む二人。しかし、頭の片隅で、何かを忘れている気がしてならないレフィーヤ。そう、とても大事な事で忘れてはいけないようなことが。

 

「待って――――――止まりなさい!!」

 

と、声が聞えた。アーテリンデの声が。急いで追い掛けてきたのか息は荒く、しかしそれを無視するかのように切羽詰まった声を出す。

 

「それ――――以上進んだら駄目!!」

 

何故、駄目なのか。そう思って…思い出す。今居る階、十階にはあれがいる事を。

 

第二階層の主が居る事を。

 

止まる様に叫ぶアーテリンデ。しかし言葉が届いていないのか、其れとも無視しているのか。尚も、撃ち合いながら駆け抜ける二人。彼女の様子から察するに主の居る場所まで近いのだろう。このままでは流石拙いとレフィーヤも又声を出そうとして。既に遅いと言う事に気が付いた。

 

撃ち合う二人は、扉を突き破る様に突破する。追う様に彼等も又駆け込むと、其れの姿を目にした。

 

第二階層の主・炎の魔人。魔人と言う言葉に偽りは無いのだと思わせる其の威容。まるで生贄が現れたかと言わんばかりに傲慢に彼等の事を見下す様に視線を向けて。

 

「邪魔だ」

「どっかいってろ」

 

二人の人外の放つ弾丸に因って、一瞬にして崩れ落ちた。

 

 

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