世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第六十九話

止まる。

 

音を響かせ、迷宮を揺るがしながら倒れる炎の魔人に一瞥もくれる事無く。互いに、にらみ合う様に銃口を向けながら。ローウェンは、ふっと息を吐いて言葉にする。

 

「やはり、変わってないなあんたは」

 

ライシュッツに向かって。だからこそ分からないと。

 

「何故、迷宮を踏破していない?」

 

あんたなら、出来ないような事では無いだろう?と、そう問い掛ける様に投げかけて。ライシュッツは、無言を返す。

 

「ハイ・ラガードのトップギルド、エスバット。そこにあんたが居ると言う事は知っていた。なのに迷宮が未踏破なのは、あんたが探索に出ていないのか、それとも何かしらの理由で戦えない状況に成っているのかだと思ったんだが」

 

しかし、何て呟きながら撃つ。当然の様にそれは、ライシュッツによって射ち落される。

 

「別に、訛っている訳で無い。探索に出ていないと言う訳でも無いよなあんた」

「さて、依頼を受けて此処に居ただけやもしれんぞ」

「十五階まで行ったの、あんたたちだけだよな。少なくとも情報として残ってるのは」

「む」

「言ってしまえばあんたたちエスバットが最前線とと言った所か。しかし」

 

「其処止まりでだ」

 

チラリと、アーテリンデの事を横目で見て。視線を戻す。

 

「改めて訊くぞ。あんた……何してんだ?」

「………」

 

沈黙、しかしそれは思考している故の物で。ライシュッツの息を吐いた。

 

「お主の言った通りだ。何も、してなどいない」

「爺……?」

「敢えて言うならば唯、馬鹿なおいぼれが馬鹿な事をしでかしただけだ」

「爺、貴方何を言って!?」

 

思わずと言った様に前へ出ようとするアーテリンデ。しかしライシュッツの視線を受けて止まる。

 

「…何が在った」

「言わねば分からないか?」

「何て言うって事は調べられる範囲の情報で答えが分かると言う事か」

 

言って、少し考える様な仕草をして。

 

「……あぁ、成程」

「理解早過ぎませんか?」

 

余りにさらりと答えに行き付いた様子のローウェンに、何時もの様に口に出してしまう。視線が自分に向けられるのを感じて、何とも居心地が悪いものだと思うレフィーヤ。そんな彼女を見て、彼は可笑しそうに笑って。

 

「お前が分かる範囲でも答えに近い所まで…いや、辿り着いてるな。もうちょっとこじ付け必要だが」

「え、それって」

 

辿り着いていると言った。其れは詰り。

 

「天の支配者?」

「ほう、流石は彼奴の仲間なだけは在るな」

 

そんな事を口にするライシュッツ。其れを聞きながら、更に思考する。ローウェンの言ったこじ付け。それは、詰り迷宮の情報とハイ・ラガードのおとぎ話をかと思い。知っている情報でこじ付けが、当て嵌める事が出来るものは……あると思い至る。

 

「確か、炎の魔人は倒されても幾らかの時が経つとまた現れる。っで在ってますよね?」

「そうだな」

「それで」

 

こじ付けるとするなら。

 

「おとぎ話に出てくる不死。其れを与えられた何者かがそれ?」

「正解だ」

 

称賛する様にライシュッツは言った。そして、補足する様にローウェンもまた口を開く。

 

「そして、お前が知らないだろう情報。エスバットに関するものだが。元々は四人だったそうだ」

「四人?」

 

視線を向ける。何時の間にか、構えを解いていたライシュッツと、顔を歪めるアーテリンデ。その、二人しか居ない。それが意味することは。

 

「何が在ったか知らんが、恐らくは此処に居ない二人、或はその内の一人が」

「天の支配者によって不死と成った」

 

そう、答える様にライシュッツは口にする。当然と、炎の魔人を見ながら。

 

「彼奴の様に、化物としてな」

「爺!!」

「もう、終りですアーテリンデお嬢様」

 

叫ぶ少女に、諭す様に言葉にするライシュッツ。

 

「なにが、何が終わりだと言うの!? まだ――――――」

「既に囲まれております」

「…え?」

 

言葉に驚き、ハッとした様子で視線を走らせると、左右と後ろを三人によって塞がれている事に気が付いた。何時の間に、そう呟くアーテリンデに。レフィーヤは静かに言葉を口にする。

 

「……気が付いて無かったんですか?」

「寧ろ何で放置されると思ってたのよ?」

「普通、戦闘している奴の仲間を放置する訳無いよね?」

「だからといってサラッと包囲するお前らも如何なんだよ?」

 

キチガイだな。なんてローウェンは言う。如何してそんな事を言葉にできるのだとレフィーヤは思わずにはいられない。いや違ったなと首を振って改める、彼は人外だったかと。

 

状況を理解し、其れでもと巫剣を構えようとして。小さな氷の礫によって手から弾き飛ばされる。唖然とした様に、跳んで来た方向。其処に何でも無いかのように佇むレフィーヤをアーテリンデは見る。そしてその視線を受けた彼女はと言えば。

 

なんとなく何かしそうだから氷飛ばしたら武器を弾き飛ばせてしまった。なんて思いながら成長を喜べばいいのか、それともキチガイじみてきている事を嘆けば良いのか、悩んだ。

 

そんな悩むレフィーヤを見て、愉快そうに笑いながら。さてと、ローウェンは改めてライシュッツを見る。

 

「それで、結局は何が在った?」

「言った筈だが?」

 

そう言うライシュッツに、否定する様にローウェンは首を振る。

 

「結局、あんたがなんで何もしなかったのか、何をしでかしたのか。言ってないよな」

「老いぼれの古傷を抉るか?」

「あぁ、喜んで」

「そうか、いやそうだろうな。お主がそうだったなら、私とてそうしているだろうしな。尤も先程言った通り」

 

ならば、良いだろうと。彼は胸に手をやり、目を閉じて。そして…語る。

 

「馬鹿が馬鹿をしでかしただけの話だがな」

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