世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第七十二話

どれだけの時間が経っただろう。ハッとした様にアーテリンデはライシュッツから離れ。表情を取り繕う。少々頬を染めているのはご愛敬かと思う事にしたレフィーヤ。

 

「落ち着いたか?」

「…えぇ」

「そりゃよかった」

 

そう言ってから、それでと言葉にするローウェン。

 

「如何するんだ?」

「どうって」

「いやまぁ、色々と葛藤なら何やらがあったのは分かるが。やらかした事が事だしな」

 

アーテリンデの表情が曇る。そう、確かにその通りだ。言っていた事が正しいなら冒険者が第三階層よりも先に行けなかったのは彼等が邪魔していたから。冒険者が冒険者を襲うなど、そんな事……レフィーヤ、は、首を傾げた。

 

「有り触れた事な気がするのは私だけですかね?」

「え?」

「レフィーヤ、アスラーガでは割と良く在った事だがハイ・ラガードでは一度も無いだろう?」

「そう言えばそうでしたね」

 

つい思った事が零れてしまったレフィーヤにローウェンは言う。確かにと頷きながらアスラーガでの日常を、ドン引きしているアーテリンデを横目で見なが思い出した。本当に、酷い日常だったと。

 

「けど、襲われたって事に関しては僕もそう思う所は無いよ。あくまでも僕の意見だけど」

「え?」

「そうね、死んだわけでも無いし。此れまでの犠牲者は確かに残念だけど所詮、赤の他人だものね」

「……え?」

 

思わずと言った様に一歩下がるアーテリンデ。流石に、レフィーヤでさえ彼等の発言は如何かと思っているのだから慣れて無さそうな彼女がそうなっても仕方ないかと思い、ローウェンを見る。

 

「でも、ローウェンさん可成り不機嫌でしたよね。何が気に入らなかったんですか?」

「自分が進まないくせに他人の足を引っ張ってる事がとても気に入らなかった」

「あぁ、確かにそれは不快ですね」

 

「今更だけど、言う事が其れで良いの?」

 

「全く問題ない」

 

だろう?と、確認する様に視線を向けるローウェン。実際、悪い事ではあるとは思うが、だから如何したと言った感じなので頷き。ふと、オラリオでの日々を思い出して。あれ、今の私ただのキチガイじゃない?なんて思ってしまって一瞬悩むも関係無い事かと切り替える。

 

「と言う訳で、爺さんの計画は俺達が突き出さなければ破綻すると言う根本的に在れな理由でおじゃんと成りました、詰り……ざまぁ!!」

「此処でも煽りますか」

「気に入らないのは変わらないシネ!!」

 

そうですかと言いながら、最後の方が若干発音が可笑しい事は全く気にしないレフィーヤ。

 

「だがまぁ、ハイ・ラガードに於いての犯罪を犯した事には変わりないの。のだがぁ!!さっきも言った様に別に気にしていないので突き出したりはしないと言う事…でいいか?」

「良いんじゃない?」

「否定する理由も無いわね」

「神様は言いました『バレなければ犯罪やないんやで?』と…詰りあなた達は犯罪など犯していないのです!!」

「まじかよ、神様めっちゃ良い事言ってんだな」

「正しく金言と言うやつか」

「心に染み渡るわね」

 

「君達可笑しいわよ」

「此れが冒険者だ」

「色々と壊れるからはっきりと言わないで…爺も笑わないの!!」

「いえ、申し訳ございません。懐かしかったもので」

 

可笑しそうに笑うライシュッツ。先程までとは、雰囲気が違う。ふと、気に成る事が在ると言った様子で彼はローウェンに問い掛ける。

 

「しかし、其れだけと言う訳では無いだろう?」

「ん?そうだなー…凄い個人的な理由は在るぞ」

「ほう、それは何だ?」

「言わなきゃ駄目かそれ。結構恥ずかしい理由なんだが?」

「老いぼれの古傷を抉ったお主が言うか。癒えぬ傷を負ったこの老いぼれは今にも命尽きそうだと言うのに」

「ほら、ローウェンさん何やってるんですか。謝る代わりに行ったらどうですか。老人虐待の償いをしなくては!!」

「なに、彼の言った言葉程辛くは無い。ため込む方が悪いだろう?だからさっさと言えば良い」

「お前等ノリノリだな」

 

「いえ、そんな事よりまず彼の傷を治療する方が先じゃない?」

「………」

 

僅かな間、沈黙。そうだけどそうじゃ無い発言をしたコバックに視線が集まる。そして。

 

「さぁ早く!!」

「このままじゃぽっくり言っちゃいますよこの人」

「冥土の土産としたい。老いぼれの願い。最後に聞いてくれんか」

 

無視して続ける。えぇ、と呟くコバックや。なにこれと言った様子のアーテリンデを。そんな彼等を見て、仕方ないと言った様に彼は言った。

 

「ほとんど同じだよ」

「なに?」

「俺も、あんたに自ら約束を破る様な奴に成って欲しくなかった」

 

其れだけだと、視線を逸らす。酷く恥ずかし気で。思った事が零れた。

 

「人外でも思う所があったんですね」

「お前の瞳は節穴だな。塞いでやろう」

「言いながら銃口を押し付けようとしないでくれませんか?」

 

「…やっぱり可笑しいわよ、さっきまで戦ってたのに」

「切り替えが速いのは冒険者として当然だろう!!」

「早過ぎるし、なんで叫びのよ?!」

 

そんな事を言うアーテリンデに、てへっと言いながらをする舌を出すハインリヒ。だが、其の通りだ。戦って勝敗が出たならば切り替える。其れが出来なければ只管疲れてしまうだけなのだから。そう、レフィーヤはアスラーガで学んだ。

 

ローウェンは軽く手を鳴らす。

 

如何したのかと意識を向けると。重要な事がまだあると言って彼はライシュッツへと視線を向けた。

 

「結局、あんたが俺達にさせようとしてた事に関してまだ決まってないよな」

「やらせようとしてた事?」

「天の支配者まじぶちのめせってやつ」

「あぁー…そうでしたね」

 

わざと負けて、今までの清算を点けつつ。目的を果たす。そんな一石投じて二鳥を落とそうとするような計画を立てていたのだったと、思い出しながらライシュッツを見る。

 

「はっきりと言おう。此の侭進んであんたの目的が可能のが非常に気に入らない」

「凄く個人的ですね」

「黙っとれ。と言う事で思惑に乗るのはとても嫌だ。しかしだからと言って諦めるのは死ぬほどいやだ」

「どっちなのそれ?」

「どっちも嫌と言う事だ。なので納得できる何かしらを提示しろ!!」

「凄い事言ってますよ?」

 

が、確かにと思う自身も居るレフィーヤ。誰かに利用されるのは面白く無いのは一緒だ。例えそれが切実なものであっても。いや、其れの方が自分でやれよと思う。だって相手はライシュッツと言う人外なのだから、きっとちょっとしたきっかけがあればその人外性をいかんなく発揮して走破する事…って、走破されたらだけだと思い直す。

 

一番に迷宮の踏破するのは自分たちなのだからと。

 

それで、あんな無茶な事を口にしたのかと見る。が、彼は別に無茶でも何でも無いと言った様子だ。如何いう事なのか。

 

ライシュッツは少し考え込む様な仕草をして。アーテリンデに小さく止めなさいと言われる。

 

「お嬢様?」

「貴方、また一人で決めようとしたわね?」

「…申し訳ございません」

「良いわよ別に、勝手に始めたりして無いんだから。でも、今回はあたしがやるわよ?貴方、考える様な素振りまで見せたし」

「それは、如何いう?」

「考えすぎって事よ」

 

言って、視線をローウェンへと向けて。

 

「貴方、確か名前は」

「ローウェンだ」

「そう、ならローウェン。貴方達、依頼をしたいのだけれど」

「ほう?」

 

楽し気に、彼は笑う。同時に、成程と頷いてしまった。其れなら確かにと。

 

「内容は?」

「天の支配者の打倒…で、如何かしら?」

「ふむ。途中、必ず君の姉を倒す事に、傷付ける事に成るが…良いのかな?」

「えぇ、構わないわ。あたしが耐えられなかったのは…ずっと傷ついて傷付けて、そんな事を繰り返してしまう事だから。だから、此れは終わらせる為」

「成程…成程」

 

チラリと視線を他の三人へと向ける。何かを確認する様に。いや、何かでは無く、受けるか否かと問うているのだ。けれど、あぁそうだったと言わんばかりに忘れていたと口にした。

 

「その依頼を完遂したなら。果たして報酬は如何する積りなのか」

「…そうね」

 

少し考えるような仕草をして、一言。

 

「君達が伝説と成る…じゃあ、不満かしら?」

 

顎が外れたのかと思う勢いで下がった。完全に予想外で。けれど、此れ以上無い程魅力的な報酬で。思わず笑みを浮かべながらローウェンを見る。

 

「伝説に成る、大いに結構!! 寧ろ最高の報酬だ!! しかし、一人で決める訳にはいかない。果たして俺の仲間は如何なのか」

 

なぁ? っと呟き。またも、確認する様に。けれど先程以上の笑みを浮かべながら如何するかと問い掛けた。何気なくレフィーヤは視線をコバックとハインリヒへと向けると、彼等も又楽しそうに笑っている。それは、詰り彼等も又同じと言う事か。ならばして見せるのは一つ。はっきりと頷いて見せるのみ。

 

「仲間全員の賛成…と言う訳で、だ」

 

笑うローウェンは、いやギルド・フロンティアはエスバットへと視線を向けて。はっきりと宣言した。

 

「その依頼、確かに請け負った!!」

 

 

 

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