世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第七十四話

「それにしてもこんな所で会うとは思ってませんでしたよ。運命を感じますね!!」

「出来れば会いたくは無かったがな」

「またまたぁー!!」

「本音なのだが」

 

「ねぇ、なんで爺はあんなに嫌そうにあの子の対応してるの? というかあの子誰?」

「関わりたくないからとしか言いようが無いですね。あと、誰なのかと言えば、ガンナーのクルミさんです」

「いや、誰?」

「そうですね」

 

何と言えば良いのか、さてと考えていると周囲がざわつく音が聞えた。はて、何事かと見れば其処には。臨戦態勢のライシュッツとクルミの姿が。なんでそんな事のに成っているのかと驚いているアーテリンデに向かって、クルミを指差しながらレフィーヤは言った

 

「あんな感じで対応しないと死ぬかもしれない人です」

「危険人物じゃないの!?」

「そうですよ。前に居た街でも転んだのを見られたから恥ずかしいと言う理由で襲い掛かられた事在りますし」

「なんであんなの街に入れてるのよ!!」

「正しい判断だと思いますけどね」

「なんで?!」

 

発言の意味が分からないとレフィーヤを見るアーテリンデ。いやだってと言葉を置いてから。

 

「入れなかったら確実に暴れますよ?…あの人は」

 

ある意味、質が悪いと言えるのは周りへの配慮が出来ると言う事だ。城門と入れないと判断した人物だけを死なない程度に吹き飛ばして、其れ以外には一切被害を出さないのだクルミと言うキチガイは。大砲なんて使ってるのに。

 

「え、いやそれは流石に」

「確実にやるだろうな」

「幾らなんでも酷くないですか?! 拗ねますよもう!!」

「ならば砲門をこちらに向けるのを止めろ」

「あらうっかり」

 

ごめんなさいと言いながら大砲を担ぎ上げるクルミ。其れを見て、恐れ戦いていた周囲の人達が少しだけ緊張を和らげるのをレフィーヤは感じた。当然、隣に居るアーテリンデも。だが、クルミの事を知っているレフィーヤとライシュッツは分かっている。あれは構えを解いた訳では無く、単純に叩きつけやすい様に担いだだけなのだと。

 

「だが、疑問では在る。誰がのお主の事を入れた?」

「ギルド長が入れてくれましたよ?」

「彼女が?」

「はい、『下手に関わらずに好きな様にさせた方が良い』なんて言いながらです…よく考えたら結構失礼な事言われてませんか、あたし??」

「いや、そうでも無いだろう」

「ですかね」

 

相槌を返しながらも心の中で思う事はきっとレフィーヤと同じだろう。ギルド長の判断に感謝と。キチガイに対しての正しい対処をありがとう。今度会ったら全力で感謝の言葉をを言おうと決めたレフィーヤだった。

 

「あぁ、それでええっと…クルミだっけ。貴女は何がしたいのよ?」

「ちょっと、その口調如何かと思いますよ?」

「口調?!」

「年上だからと言って敬語で話せとは言いませんけど、それでも少しは気にした方が良いと思いますよ!!」

「いえ、如何見ても年下じゃない」

 

「え、二十七歳以上だったんですか?! 見た目にそぐわないと言いますか」

 

「ちょっと待って下さい」

「はい?」

「二十七歳以上って…え、クルミさん若しかして二十六歳?」

「いやですねもう!! 女性の年齢を暴露なんて酷い事しますね!!…あ、でもさっきの言い方だと直ぐにわかっちゃいますよね。またもうっかり!!」

 

てへっと言いながら舌を出すクルミ。だが其れを見て反応する余裕は無かった。まさかの年上であったと言う衝撃的事実に思考が吹っ飛んで真っ白だ。

 

「え、年上だったの…?」

「もしかして気が付いてませんでした? なら許しちゃいます!! 若く見られてうれしくない女性なんて居ませんからね!!」

 

そんな嬉しそうなクルミを見ながら漸く真面な思考を取り戻したレフィーヤ。同時にこれ以上齢関わる話は止めた方が良いなと思った。大した理由では無く、唯そう思っただけだ。故に話題を変える、いや戻す様に言葉にする。

 

「それで、本当に此れから如何する積りなんですか?」

「ん? あぁ、そうですね。久しぶりに親の元気な姿も見れましたし。また旅に出るのもいいですけど。なんだかんだ言って久しぶりですからね。暫くは滞在しますよ」

「そうですか」

 

いや旅に出ろよ、なんて思ったレフィーヤは悪くない。きっと周りに居る全員が思った事だから。しかし、だからと言ってここはアスラーガ程の魔境では無い。ハイ・ラガードではちゃんと衛視が仕事をしているのだから下手をすれば捕まってしまうかもしれないし、もしそうなったら・・・・そうなったら。

 

「一つ聞いて良いですか?」

「何ですかレフィーヤちゃん?」

「若しも、衛視に捕まったらどうしますか」

「捕まったらッて其れは勿論抵抗しますよ。捕まりたくなんてありませんし…あ、若しかして被害が出る事気にしてますか?大丈夫ですよ、流石に故郷で在るこの街を敵に回す程……うーん」

「…如何かしましたか?」

「あ、いえ大した事では無いんですけど」

 

「国墜としって、とってもロマンあふれる言葉だなって思っただけなのでー」

 

瞬間、レフィーヤの脳裏に藪蛇と言う言葉が過った。神が言っていた言葉でどの様な意味なのかはよく分かっていないが、それでも過ったと言う事はこの状況に合った言葉なのだろうと。逃げ出したくなりながらも思った。

 

と、其の時だ

 

「お主、今暇か?」

「え、まぁそうですね」

 

そんな言葉をライシュッツが口にして、クルミは答えた。どうしてその様な事を言ったのか、少し不思議に思っていると、彼は続けて言葉にする。

 

「ならば少し依頼を手伝ってくれ」

「依頼をですか?」

「正確にはミッションの方が正しいか。少々第二階層に用があってな」

「え、ちょっと爺それって」

「出来るだけ、失敗の確率は下げておきたいのでな。お主が良ければ付いて着てくれんか?」

「良いですよ! 冒険大好きですから!!」

 

やったぁと、言いながら喜んで提案を受け入れるクルミ。其れを見て、ライシュッツが何の積りで其れを提案したのかを悟った。

 

街中で放し飼いでは危険だから、迷宮に連れ出す積りなのだと。

 

成程、其処ならば何か在っても被害は少なくて済む。此れ以上ない対処だろう。それでも、街の危険が皆無になった訳では無いが。滞在期間中の全てを街で過ごされるよりはマシだろう。尤も、冒険した時間だけ滞在時間が伸びてしまったら・・・いや、其れでも冒険で暴れれば幾らかはましかと。そう思いながら頷いて。

 

ガッと手を掴まれた。

 

えっ? と声を零しながら見ると、笑顔を浮かべたクルミが手を掴んでいた。どうしてだと、視線で訴えかけると。彼女は首を傾げてこう言った。

 

「ライシュッツ爺様が言ったじゃないですか。少しでも失敗の確率は減らしておきたいって」

「…私、関係ないですよね?」

「同じ冒険者じゃないですか!!」

「広すぎませんか??」

 

言って、縋る様にエスバットの二人を見る。アーテリンデは驚いた表情を浮かべ、ライシュッツは全てを諦めたかのような表情をしていた。其れを見た瞬間か、或は、クルミが同じ冒険者と言った瞬間に一気に人が居なくなったのを見た時にか。あぁ、もう駄目なのだと悟る。しかし、其れでも若しかしたらと言葉を口にした。

 

「……せめて、仲間と相談させてください」

 

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