「其れは行った方が良いぞ」
「何でですか?」
「俺も同じ様な事に成った事が在ってな」
「そうなんですか」
「断ったらこれ幸いと敵認定して襲い掛かって来たんだよ、あのキチガイ」
「ミッション頑張ってきますね!!」
そしてレフィーヤは今、クルミとエスバットの二人と一緒に八階にいた。ここに住処があるサラマンドラから採れる素材。通称火トカゲの羽毛の採取がミッションの内容だと言う。なんでも、ミズガルズ図書館の調査隊が其れを採取して来てくれていたようだが。
何処かの馬鹿が保管庫をバーニングした為、紛失してしまったそうだ。
調査隊にはちゃんとした目的があり、序でであった最初は兎も角もう一度というのは頼みにくかったそうだ。なので、改めて入手して来て欲しいとエスバットは頼まれたとの事らしい。
「って、誰ですかその保管庫燃やした人って」
「公国で働いている研究員の一人よ。なんでも、研究して居たら勢い余って保管庫を燃やしてしまったらしいのよ」
「勢い余ったって」
「でもって、もっと問題になったのは、それに便乗した頭のいかれた研究員が火を点けて回った事。お陰で大混乱だったのよ?」
「凄い事に成ってたんですね……その研究員の中にクロって人居ますか?」
「いえ、居なかったと思うけど?…ちょっと待ってクロってもしかして頭が逝ってるアルケミストで有名なあのクロの事??」
「多分そうだと思いますけど」
「また何かやらかしたの?!」
「錬金術師互助組合がバーニングしただけですよ? まぁ、本当にそれをあの人がしたかは分かりませんけど、前科在りますし…あ、これですか?」
「それだけじゃないわよ全く」
そう言いながら、レフィーヤがこれと差し出した物を確認するアーテリンデ。
「うん、間違いなく火トカゲの羽毛ね」
「じゃあこれを届ければミッション達成ですね」
「そうね」
「あ、見付かりましたか??」
そう声を掛けるクルミにアーテリンデは頷いて帰した。
「えぇ、お蔭さまで」
「そんな風に言う必要なんてないですよもう。あたしがやった事なんてサラマンドラの前足一本吹っ飛ばしただけなんですから!!」
「そう言葉にされると…異常さが際立つわね」
言いながらアーテリンデが視線を向けるのはサラマンドラ…の死体だ。見るも無残な状態と成ってしまったサラマンドラに一体何が在ったのかと言えば。
「炎吐いて来るとはけしからんですね。ひき肉にしてヒィイイヤッハァァアアア――――ッ!!」
レフィーヤ達の事を見つけたサラマンドラがブレスを吐いた事に反応してクルミがそう叫びながら突っ込んで行ったのが切っ掛けだった。
普通に考えて勝手に動かれたらとても拙いのだが。どの様に動くのか逆に分かり易い彼女。当然予測済みで。戸惑ったりせずに動くレフィーヤとライシュッツの二人。少し驚いてしまったアーテリンデが遅れた位だ。
尤も、その少しの間が彼女に何もさせずに終わったのだが。
サラマンドラとの戦いは、長く説明する様なことでは無い。再びブレスを吐こうとしたサラマンドラの顔面をライシュッツが撃ち抜き、蹈鞴を踏んだ所でクルミが接近して零距離から大砲をぶちかましたのだ。結果、吹き飛ばすとまでは行かなかったものの、それでも動けなくなる程のダメージを負ったサラマンドラは崩れ落ち、其処にレフィーヤが印術を頭部に叩き込む。
あとは死ぬまで其れの繰り返し。そうして出来上がったのは前足が一本無い頭の潰れたサラマンドラの死体である。
確かに、止めを刺したのはレフィーヤであったが。何もさせずに完封できたのはライシュッツとクルミが異常だったからに過ぎない。動け無い相手に当てる等、出来て当然なのだから。本当に、人外の名に恥じないなとレフィーヤは思い、ふと疑問に過る。
「そう言えばクルミさんって何が目的で冒険しているんですか?」
「伝説の武器を探しているのです」
「え、なによそれ」
「古文書に書かれていたんですよ。遥か昔に作られた究極の破壊兵器、どの様な盾を用いてもそれに砕けないものは無かったとか」
「すっごい物騒ですね」
「其れを知ったあたしは、何時の日か其れを手にする事を願って冒険をしているのです。古代より在り続ける世界樹とその迷宮。其処にならあるかも知れないと言うのが迷宮に挑む理由です」
何時か必ずと、誓いを立てるかのようにクルミは呟いた。それを聞いてレフィーヤは。
「そうですか、見付かるといいですね」
絶対に手に入れません様にと願いながら、そんな心にもない言葉を口にするのだった。
「…手に入れたらその大砲如何するのよ?」
「え、勿論使いますよ? 二刀流。素晴らしき浪漫じゃないですか!! ライシュッツ爺様みたいでカッコいい!!」
「私のをお主の破滅的な物と同じにしないで欲しいのだが」
全くだと頷きながら、サラマンドラから素材採取をしていたライシュッツを見る。と、何かをレフィーヤに差し出してきた。いや、何かでは無くサラマンドラから採れた素材なのだが。
「…何ですか?」
「持って行け」
「え、良いんですか?」
「構わん。此度は完全にお主の事を巻きこんでしまった故な。この位は当然の事だ」
「うーん、なら遠慮なく」
言って受け取るレフィーヤは、あれもしかして荷物持ちにされた?なんて思ったが気にしない事にした。
三人を見渡して、良しと呟いたアーテリンデが言う。
「それじゃあ、戻るとしましょうか」
「はッ」
「分かりました」
「ごーばっくほーむですね!!」
「なにそれ?」
疑問の言葉を口にしながらも歩いて行く。しかしふと、何か在ったのかアーテリンデは速度を落としてレフィーヤの横へ。そして問い掛けてくる。
「爺から聞いたのだけれど、冒険者って種類があるんですってね」
「それってもしかして一般、キチガイ、人外の三種類の事ですか?」
「そうそれ。なんでもあたしは一般で貴女はキチガイ、爺は人外だとか」
「キチガイ呼ばわりは遺憾ではありますが、まぁそう言う事ですかね」
「でも、今一違いが分からないよね。分かり易い違いってある?」
成程、そう言う事かと頷いて、考える様な仕草を少ししてから、口を開く。
「アーテリンデさんは、F.O.Eの事如何思います?」
「F.O.E? そうね、強くて油断ならない普通のモンスターとは一線を画す相手って所かしら」
「それが一般的な考えで、キチガイと呼ばれる冒険者は強いけど馬鹿だから楽、っていう感じです」
「…なにそれ?」
「でも実際そうですよ? 同じような行動しかしてきませんし」
「そう言うって事はやっぱり貴女も」
「聞えませんね」
「…なら人外は?」
「聞けば良いじゃないですか」
言って、レフィーヤは前を歩く二人に対して問い掛ける様に声を出す。
「ライシュッツさん、クルミさん」
「む?」
「なんですか??」
「F.O.Eの事如何思ってますか?」
『便利』
「…と、言うのが人外です」
「ちょっと意味が分からないわね」
「私も同じです」
頭が痛いと言った様子で額に手を当てるアーテリンデ。それも仕方ない事だと、レフィーヤは笑った。
そして、帰還した後にローウェンに同じ質問をした所。
「硬くて強いのに馬鹿だから盾にも武器にもなって便利」
「そうですか」
より詳しく言ってくれました。