くるくると。
くるくると。
回る、回る。レフィーヤは回る。意味も無く、しかしそれでも止まらず回り続ける。あぁ、そんな言葉を零しながら動き続ける景色を見て、仲間たちに向かって言葉を発する。
「止まらないので助けてくださーい」
「杖を床にぶっさせ」
「なるほどー」
言葉の通りに杖を突きさして止まるレフィーヤ。未だに映る景色が回っているからか気分が悪い。何故この様なひどいひどい目に遭わなければいけないのだと。凍った床を滑りながら進む仲間たちを見んながら思う。因みにコバックは転けて腰を強打していた。
「あぁー…気持ち悪い」
「あんな勢いで回るからだろ」
「回りたくて回った訳じゃ無いですよ」
「知ってる。寧ろ回りたくて回ったなんて言ったらコバックみたいだと言う所だぞ」
「あ、凄く心を抉る言葉」
あれと同じか、視線を腰を抑えながら老人の様に震えているハインリヒに治療されているコバックへと向ける。若しかしたらと考えて、レフィーヤは酷く落ち込んだ。
「…出来れば言われたくないですね、本当に」
「なら気を付けるんだな」
「分かりました」
今度はちゃんと気を付けながら滑ろうと思いながら、其れは其れとして腕を組んで微動だにする事無く滑って行ったローウェンはローウェンで如何なんだろうと思わなくも無い。如何やったらあんな風に滑れるのだろうか。
「で、コバックはどうだ?」
「脂汗が出る程度よ」
「詰り相当きてると」
「そうなるね」
「ならまぁ、休憩いれるか」
「分かりました」
「なら準備しようか」
「ごめんなさいね」
「レフィーヤにも言ったが、気を付けろよ?」
「本当にごめんなさいね」
改めて、謝罪の言葉を口にするコバック。
「こんな事に成るならジャンプしようなんて思わなければよかったわ」
「良し、この馬鹿を置いて先に行くぞ」
「了解」
「張り切っていきましょう」
「待って置いてかないで!!」
言いながら腰を気にしつつ必死に縋るコバック。まぁ、置いて行くと言うのは流石に冗談なのだが。馬鹿みたいな事をするのは何時もの事だし。しかし転んだ訳では無かったのかと思うレフィーヤだった。
「取り敢えず燃やせるものを探してくるか」
「いってらっしゃい」
「気を付けてね」
「おぉー」
そう言って歩いて行くローウェン。は、しかしふとある事に気が付いたかのように立ち止まった。如何したのだろうかと、彼の視線の先を見る。そこには先程滑っていた氷の床がある。少し考える仕草をしてから引き返してくるローウェン。本当に如何したのだろうと首を傾げるレフィーヤに、彼は言葉を口にした。
「あの氷の床の上にF.O.E居ただろ?」
「あぁ、居ましたね」
確か、青嵐の粘塊と言う名前のF.O.E。酷く滑る氷の上でも好きな様に動き回っていた其れを見つけた時、思わず何だあれはと言ってしまったものだと思い出す。それを撃破した際に出来てしまった出っ張りの所為で回転する事になったのも。
「で、其れが如何したんですか」
「あれ、よく燃えたよな」
「燃えましたね…凄く燃えましたね」
ローウェンが何を言いたいのか理解したレフィーヤ。詰り、青嵐の粘塊を燃料がわりにしようとしているのだと。しかし、流石にF.O.Eを燃料扱いは如何なんだと思いつつも。
「流石に生きた儘は難しくないですか?」
「燃やしてからでも良いだろ」
「ですかね」
よいしょと立ち上がるレフィーヤ。使えるモノは使わなければ損だよね、なんて事を思いつつローウェンと一緒にF.O.Eを探しに歩きだした。
少しした後、燃料がわりに使われた哀れなF.O.Eが居たとか何とか。
「復・活!!」
そう言いながらまるでどこぞのキチガイルーンマスターの様にポーズを決めるコバックを。その様子を何を馬鹿な事をしているのだと言う様な視線で彼等は見て…居なかった。と言うかコバックもまた、彼等と同じものを見ていた。
「…で、あれ何かしらね?」
「ビックスノーが殴り合ってる」
「だから何であんな事に成ってるのよ」
「知らん」
はっきりと言葉にするローウェン。だがその通りなのだ。休憩している時にビックスノーと呼ばれるモンスターが現れて襲い掛かって来るのかと思ったらその真横から新たに現れた別のビックスノーが殴り飛ばしたのだ。
そのまま殴り合いに発展し今に至る。
「いや、本当に何でこんなことに成ってるんだろうな?」
「なんででしょうねー?」
首を傾げずにはいられない。考えれば考える程、訳が分からない。別に同士討ちする様な生態は持っていなかった筈だがとビックスノーの情報を思い返し。あ、っと声を零した。
「如何した、何か分かったか?」
「いえ、そう言う訳じゃないんですけど。ただですね」
「なんだ?」
「ビックスノーは複数のスノーゴーストが合体すると生まれる…みたいな情報がありまして」
「……あぁ、もしかして」
視線を殴り合っているビックスノー、その内の一体。横から殴り飛ばした個体を見る。何故か、目の前の殴り合っている相手にでは無く。彼等に意識が向いて居る様に思えた。と言うか彼等の事を横目で見る度に震えている、恐怖的な意味で。
「あの時のか」
「かも知れませんね」
「じゃあ、殴り飛ばしたのは」
「お前が襲ったら俺達も粉砕対象になるかもしれないだろうボケが!!…って感じですかね」
「多分な」
またも、微妙な表情を浮かべるローウェン。きっと自分も同じ顔をしているのだろうなと思いつつ。相手を吹き飛ばし、其れを以て勝利としたビックスノーが腕を振り上げ喜ぶのをただ黙って見ていた。