世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第八十一話

視界に広がる美しき花々。風も無いと言うのに舞い散り続ける中。ギルド・フロンティア一行は、ある存在と相対していた。それは、翼の生えた人であって人で無きモノ。それは、彼等を見ながら小さく呟いた。

 

「全能なる星は、我らに如何なる業を定めるのか……」

 

その呟きの意味は分からない。そしてそれもまた、意に介す事無く翼を広げ空へと飛び立った。更なる言葉を残して。

 

「父なる太陽、母なる月よ。この土の民に、新たな生命の祝福を」

 

やがて、姿の見えなく成った。暫くの間、消えていった方向を見つめ、不意にローウェンが呟いた。

 

「反射的に頭蓋を撃ち抜きそうになった」

「私もです」

 

そんなよく分からない邂逅から始まる。第四階層の探索だった。そして、翼の生えた者は、未だどれだけ危険であったのかを知らない。

 

 

 

「あいつ何が言いたかったんだろうな?」

「さっぱりだね」

 

言いながらハインリヒは地面に落ちた花弁を手に取る。此れと言って意味の無い行為だ。尤も、それを咎めるのはもっと意味の無い事だが。

 

「意味深な言葉ではありましたね」

「そうだなー。如何いう意味で言ったのだか……まぁ、取り敢えず進むか」

「ですね」

 

今考えても仕方ない事。ローウェンの言葉通り。第四階層、桜の立橋を進み行く。

 

辺りを警戒しながら、ふとローウェンに問い掛ける。

 

「そう言えばこの前公宮に行ったじゃないですか」

「行ったな」

「戻ってきてミッションでは無いって言ってましたけど。結局どんな話してたんですか?」

「頼まれごと」

「…ミッションで無く?」

「ミッションで無く」

 

なら何の話をしてきたんだと。其処ら辺の情報共有が出来てないぞと、しっかり説明して欲しいレフィーヤ。その視線にさてと呟きながらローウェンは言葉にする。

 

「と言ってもな、空に浮かぶ城に関して何かは分かったら知らせて欲しいと頼まれただけだし」

「それにしてはあの時随分と返ってくるまでに時間が掛かっていたようでしたけど?」

「伝承とかそう言った物を片っ端から聞いてたからな。それは時間かかるだろう」

「……それは教えてくれないんですね」

「ぶっちゃけ纏めるのとかに時間かかり過ぎて説明できるような状態じゃ無かったしな。分かった事にしても確証無しで直接確かめなければいけない状態だったし」

「…若しかして、それで少し早めにここに来たんですか?」

「攻略と言うよりは調査目的でな」

「なんで言ってくれなかったんですか?」

「言ったぞ?お前が聞いて無かっただけだろ」

 

そんなはずは無いと思い返す。やはり、其れらしい事は言っていない。と言う事は彼が説明を怠ったのに言い訳していると云事だ。なんかカレー食べてる時に何か言っていたような気がするがきっとそうだ。レフィーヤは悪くないのだと言い聞かせる。

 

「いや、言ってたよ?」

「言ってたわよ?」

「コバックさんまで聞いていた?!」

「あたしまでってどういう事よ」

「しかし…くッ!! ハインリヒさんが聞いたと言うなら確かに言ったのでしょうね」

「あたしは?」

「なら、認めるしかありませんね。ごめんなさい」

「ねぇ、あたしは??」

 

何か聞えるが華麗に無視しながら素直に謝るレフィーヤ。カレーに集中していたせいで聞き逃したのだからどう考えても自分が悪いのだから。だからと言ってカレーに、いや辛さへの探求は止めないが。

 

何故ならそれは冒険なのだから!!

 

「ま、気にしてないから。お前も今度気を付ければ其れで良い」

「分かりました」

「おっし、切り替えていくぞー。と言ってもメインの情報確認は済んだんだけどな」

「え、そうなんですか?」

「翼人が居るって確認出来たし」

「翼…人?それって伝承関連の事ですか?」

「そうだぞ」

 

言って、少し思い出す様に視線を彷徨わせてから、確かと呟いて言葉にする。

 

「天の城、天の支配者は人ならざる人、天を自由に飛ぶ従者を生み出した。それは翼をもつ、翼人…あぁ、えっと。人であって、いやあり? どっちでも良いか其処は。で何処まで言ったっけ?」

「それは翼をもつ翼人って所までだね」

「ありがと、でその後が。人であって、人でない異形の種族。彼等は天空への道を守護し……えぇ、また天空への道を知る唯一の種。空に戻りたくば、その翼を借りよ…で、ちょっと待って。確かこの後がとても重要な事だったからきちんと思い出すから」

「分かりました」

「それで、えぇっと、それで。そう、そうだ。必要な言葉は一つ。太古の盟約に基づき上帝の言葉を告げる。我らを空、いや天だっけな?への道を開け…違うな。なんだっけ?」

「大丈夫ですか?」

「大丈夫だけど、流石に全部を一気に憶えられなかったか…いや、あぁ思い出した」

「あら、それは」

「コバックさん黙って」

「酷い」

 

と言いながら落ち込むコバックを横目に。レフィーヤは言葉を待つ。

 

「太古の盟約に基づき上帝の言葉を告げる。我らに天への帰り道を示せ……あれ、やっぱなんか違うな??」

 

違うのかよと思ったレフィーヤは悪くないと思う。いやまぁ、だからと言ってローウェンが悪い訳では無いけれど。

 

「如何する。戻るかい? 今回は軽い調査目的だったからそれでも別に構わないけど?」

「あぁー…そうするか。なんか微妙な間違いをしてる気がして気分が悪いんだよな」

「其れ分かるわ。鎧とかで変なところに汚れがついてなかなか取れない事にイライラするのと似てるわよね」

「それもなんか違くないか?」

 

少しずれた事を言葉にするコバック。完全に間違った事を言っている訳でも無いから指摘し辛いが。何にせよ、取り敢えず今回は街に変える方向でまとまった様だ。

 

「帰るなら早く帰りましょうよ。なんか嫌な事を思い出すんですよ、この階層」

「そんな事ばかりだね。まぁ、否定はしないけど。下が丸見えだからね」

 

第六迷宮は悪夢だったねと呟きながら、床の無い部分から下を覗き込むハインリヒ。そんな事をして大丈夫なのかと声を掛けようとして。

 

 

強烈な揺れが彼等を襲う。

 

 

「うぉ?! 何んじゃこれ?!」

「じ、じじ、地震ですか?!」

「ちょ、やば、落ちる落ちる落ちる!!」

「ハインリヒちゃん!!」

 

立っていられ無くなる程の揺れに、床の無い場所から落ちそうになっているハインリヒへと一番近くに居たコバックが手を伸ばし。そして。

 

「――――――――――あッ」

 

無情にも、上から下へと・・・・落下した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕の眼鏡ぇぇぇええええええええええええええええええ――――ッ!!??」

 

ハインリヒのそれは、遠く、遠くの地へと落ちて行き。耳にも届かぬ儚い音を響かせた。

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