世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第八十九話

さっくり天空の女王、後にハルピュイアと名付けられたモンスターを倒したギルド・フロンティア一行、と言うかレフィーヤとローウェンの二人。しっかりと確認を終えた後に現れたカナーンに感謝の言葉を送られた。

 

何故かドン引きしていたが。まぁ其れに関してはミズガルズの調査隊も変わらないのだが……いや一人だけ。アリアンナだけが素直に凄いと目を輝かせていたのをよく覚えている。やはり彼女はちょっとあれな感じがする。

 

そて、そんなこんなで天の支配者の居城へと至る道に辿り着いた彼等は今…ハイ・ラガートの街に帰還していた。いきなり行ったりはしない。だって疲れてるし。そう言う事でフロースの宿でしっかりと休息した一行。其々が其々の予定に合わせて予定動き出す。

 

ローウェンは報告と改めて調べ事をする為に公宮へ向かい、コバックは装備の整備、ハインリヒは古くなった薬の破棄と材料を買いに外へ。そしてレフィーヤはと言えばあと一枚ほど残っている大印術を手軽に使える様にする為の布製作・・・・なのだが、どうにも気乗りせず何と無く食堂でボーっとしていた。ら、である。

 

「いやぁ、貴方達もこの宿に泊まってたんですね。今まで出会わなかったのが不思議なくらいですよ」

「……そうだな」

「何ですか其の間は?」

 

何故そこまで間が出来るのかと。まさかまだハルピュイアの時の事を引きずっているのか?切り替えが不十分だなと思いながら目の前に座る二人。ミズガルズの調査隊のフラヴィオとパラディンの男性へと視線を向ける。そう、驚く事に彼等もフロースの宿に泊まっていたのだ。本当に、先程言った通り今まで出会わなかったのが不思議に思えてならない。

 

「あぁー…失敗したかね。こんな事なら宿の食堂なんて覗かなきゃよかったぜ」

「失敗とは失礼ですね。まぁ、貴方達にとって現状が思っていた物と違うならそうでしょうけども」

「正しくってやつだ。俺たちの予定では此処でさっさと朝食を済ませて外に出ようとしてたわけだからな」

「あ、そうでしたか。それは私が悪いですね。お詫びと言っては何ですが朝食代は私が出しますよ」

「ほんとかい? いや悪いねー」

「お、おいおっさん?」

「いいからいいから。ここはお嬢ちゃんの言葉に甘えようじゃないの」

「お嬢ちゃんじゃ無くてレフィーヤ・ウィリディスですよ、私は」

「お、そうかい。そう言えば名乗って無かったな、ベルトランだ。まぁ、宜しく」

 

さてと、じゃあ何を頼もうかなとメニューを覗き込むベルトランと名乗った彼。なんかうまい事意識をずらされちゃったなと思いながらレフィーヤは見る。正直言って、彼があんな風に言葉にしなければもっとフラヴィオに色々と言葉を投げかける積りだったし。フラヴィオでは対応できないと判断したのか意識を自分に向けさせてさっさと離れられるように話を切り上げた上で食事まで奢らせるとは……年の功と言うやつか。

 

まぁ、そう言ったのは自分なのだが。と、ベルトランの視線がメニューからレフィーヤへと移る。

 

「そういや、あんたは良くここを利用するのか?」

「此処ですか? そうですね、朝食は大体ここで済ませますね」

「なら、ここのお勧めを」

「カレーですね」

 

食い気味に言ってしまったからか、少し驚いた様子のベルトラン。しかしお勧めはと訊かれたらカレーと答える他無いだろう。だってカレーは美味しいのだから、辛さと美味さの調和もばっちりだし。

 

「そうカレー。カレーこそがこの宿一の辛味を持つ料理。食べなければ損ですよ」

「お、おぉ。そうかい」

「…辛ければ美味いってもんじゃないだろう」

 

「は?」

 

随分と低い声が出たがそんな事は如何でも良い。今、彼は…フラヴィオは何と言ったのか。

 

視線を彼に向ける。彼は口が滑ってしまったと言った様子で、その隣に座っているベルトランもまた、あちゃーっと言いながら額に手を当てていた。いや、どんな様子なのかは如何でも良い。重要なのは先程の発言だ。

 

「……今、何て言いましたか?」

「え、いや、あの。違うくて」

「あ?」

「……辛ければ美味いって訳じゃ無いって、その…言いまし、た」

 

どんどん声が小さく成っていく。しかし、再び言葉にされたそれは正しく。あぁ、何と言う事だとレフィーヤは体を震わせた。内から感情が溢れ出しましそうだと堪える様に顔を伏せて。いや、あぁいやそうだ。堪える必要等ないのだ。その感情に身を任せればいい。

 

そしてレフィーヤは抑える事を止めて、勢いよく顔を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「その通りです!!」

「はい?」

 

唖然とした様子のフラヴィオ。しかしそんな事は如何でも良い。重要なのは先程の言葉。レフィーヤ自身が思い至った答えを、彼も持っていると言う事だけだ。

 

「そうなんですよ、そうなんですよね!! 辛ければ良いって訳じゃ無いんですよね!! 辛くて辛くて辛くて!! けれどしっかりとした美味しさを持っている! だからこその辛味なんですよね!!」

「お、おう」

「其れは正しく!! 無限か有限か分からず、しかしだからこそ何処までも続く無限螺旋の最果て!! 辛さは美味さを磨き、上手さは辛さを引き立てるデュエットの如く!! どちらかが欠けても至れぬ究極!! 本当に……あぁッ!!」

 

笑みが浮かぶのを抑えられない。まさか同じ辛味の求道者がこんなにも近くに居たとは。勢いよく立ち上がり、其の儘近づき、手を取る。さっきから呆気に取られいるフラヴィオの手を。

 

「とことん語らいましょう!!」

「語らうなアホ」

 

不意に言葉が聞え。直後に衝撃。突然の事に耐える事も出来ず意識が暗く沈んで行き。最後に見たのはあきれ顔のローウェンだった。

 

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