世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第九話

「申し訳ありませんでした!!!!」

 

冒険者ギルドに響き渡る謝罪の言葉。何事かと、居合わせた冒険者が視線を向けると。

 

其処に在ったのは、平身低頭。全てを投げ出し、相手に身を委ねる覚悟を思わせる姿。おぉ、其れは正しく彼の果て、極東に伝わるという黄金の型。

 

即ち土下座をしているレフィーヤの姿だった。

 

如何でも良い事だが、彼女は土下座と言う存在を知りはしない。にも拘らず其れを行って見せた事に、ある意味で才能を感じさせる。本当に要らない才能だが。

 

「う。…むぅ」

 

さて、その土下座をされている人物であるギルド長。彼は現在大変困っていた。

 

それはそうだろう。何せ、迷宮に向かった冒険者が、帰って来たと同時にその様な事を行ってきたのだから。流石に、状況が呑み込めない。視線を、彼女と同行したローウェンへと向ける。

 

「なに、唯単にウィリディスが張り切り過ぎて迷宮の人工壁を壊してしまった、それだけの事だ」

「何?」

「本当だぞ?。まぁ、そんな行動に出た理由ならあれだ。ぶっ壊した直後に其れの存在と意味を教えたから…あれだな、責任でも感じてるんだろう」

「そういう事か」

 

視線が、再びレフィーヤへと向かう。それを感じて、レフィーヤは静かに震えた。完全にやらかしてしまった。確実に怒られる様な事をしてしまった。他人なら笑い話で済む。関係ない冒険者なら、人工壁の役割を考えれば、少し警戒すれば問題ないだろう。しかし、レフィーヤは当事者である。はっきり言って怒られるで済む話では無いだろう。

 

しかし。

 

「そう、気に病む事は無い。君は悪くないのだからな」

 

意外な程、ギルド長は優しくレフィーヤに語りかけた。驚いた様に顔を上げてみれば。言葉と同じ様に、優し気に笑みを浮かべていた。如何してなのかと、彼女は疑問に思い。それに答える様にローウェンは口にした。

 

「ギルド長の言う通りだな。ウィリディス、お前は悪くないぞ? というか悪いと言えるの耐えられずに壊れた人工壁と……こいつだな」

「正直に言わせて貰おう、私は何故縛られえているのだ?」

 

疑問の言葉を口にしたのは、レフィーヤにルーンマスターとしての基本的な知識と技術を授け、そして現在簀巻き状態でローウェンに座られているホロンだった。いや、寧ろ何で彼がと疑問に思うのだが。色々な意味で。

 

「いやねぇ、何故かさぁ、ウィリディスの持ってた杖がさぁ、爆炎の印術を放ちやすい様にカスタムされてたんだよねぇ」

「…………あッ」

「いやほんとさぁ!! なんでだろうなぁ?! なんでルーンマスターに成ったばかりのウィリディスがそんな一点物もってんだろなぁ?! ……で、何か言う事は?」

「いや、その・・・・あれだ、短い間とは言え、おしえごで在る事に変わり無い訳で? その、師としてそのぉ、何も与えないのも如何なのかと思った訳で。あのー、それでふと、初心者ならば彼女は杖を持っていないという事に思い至った訳で……だから、な?」

「持ってたのを譲ったと」

「そうなる」

「……成程、ギルド長?」

 

 

「吊るせ」

「うっす」

 

ホロンを引きずる様にローウェンは連れて行く……吊るしに。当然の様に抵抗する訳で。

 

「ちょっと待とうか?! まだ話し合いができると思うのだ・・・・おい、何故カースメーカーを集めている。流石にそれは可笑しいだろう?!いや、待て、待ってくれ!!吊るすならせめて普通に吊るしてくれ頼む!!いや、止め、や、やめろぉぉぉおおおおおお―――――――――ッ!!」

 

まぁ、これまた当然…無駄なのだが。

 

 

 

 

 

 

 

暫くすると、やり遂げたぜ!と、顔に書かれている様に見える程いい笑顔を浮かべたローウェンが戻ってきた。心の底から清々しそうであった。

 

「さて、悪は去ったとして……如何しようかウィリディスの事」

「そうだな」

 

如何しようとはどういう事だ?!

 

まさか自身も吊るされるのか、やはり許されていなかったのかと戦々恐々のレフィーヤ。しかし、その様子に少し可笑し気に笑みを浮かべながらローウェンが否定する。

 

「いや、違う違う。お前が考えて居る様な事では無いぞ。冒険者としてのお前を如何しようかって話だよ」

「うむ」

「え? 冒険者としてって、それって如何いう?」

「あぁー…冒険者は大体が数人で組んで行動するのが定番だ。で、如何しようかって成ったのはだ。杖の事とか、そう言うのを置いといたとしてもお前の放った印術が強い事が問題なんだよ」

「……はい?」

 

強いのが問題? それは如何いう事なのか。問い掛けようとして、気が付く。火力が強すぎて出て来る問題。それに覚えがあるからだ。

 

「…誤射?」

「そう。と言っても、それなりの腕が在る冒険者なら余裕で避けられるから問題ないんだが。当然ながらそのそれなりに腕の在る冒険者と言うのは多い訳じゃ無いからなー」

「まぁ、其れに関しては問題と言える様な物では無い。全て解決する術が既に用意されてるからな」

 

と、断言して見せるギルド長。それは如何いう事なのかとギルド長を見ると、彼はローウェンの事を見ていた。

 

「と言う訳だ。頼めるかローウェン」

「良いよ! 元から其の積りだったしな」

「やはりか」

「はぁ?!」

 

変な声出してばかりだなぁ、そうレフィーヤは思って。いやいやそうでは無いと正気に戻る。元から其の積りだったとは、いったい。

 

「えっと?」

「詰り、あれだ。お前の事を冒険者に誘ったのはギルド……仲間に誘おうと思ってたから、って事だ」

「最初から?」

「正確には色々問い掛けられた辺りからだな」

「……何でですか?」

 

分からない、何故その様な事を?

 

ローウェンは、楽し気に笑みを浮かべ。

 

「面白そうだったし!!」

「そんな理由?!」

 

それだけ、其れだけなのかと困惑を通り越して混乱するレフィーヤに。さらに笑みを深める。

 

「いや、だってな? お前は訳も分からず、訳も分からない状況に陥っている! そしてそれを解き明かすと決めただろう? だというのに興味を持たなかったら冒険者として間違っているだろう。ぜひとも関わりたいとな!!」

「そ、れは」 

 

「まぁ、正直言っていい加減仲間でも作らないと厳しくなってきたからというのもあるんだがな。主に金銭面で」

 

大抵の事は出来るんだがなぁ、金さえあればと呟く姿に。その瞬間彼女は思う。だから世知辛い話は止めてくれと!! しかし、言った事に嘘はないだろう。面白そうだからと助けて、その上で仲間に誘ったというのは。

 

「と言う訳でぜひとも俺の仲間に成って欲しい。そして冒険を、謎解きを楽しもうじゃないか。そう存分にな!!」

 

言って手を差し伸べる。これは、其の積りが在るならば取れ。そう言う事なのだろう。

 

「……もし、嫌だと拒否したらどうしますか?」

 

ふと浮かんだ疑問を口にする。

 

「ん? あー、それはそれで構わんぞ?選ぶのは自由だしな。尤も、ギルド長に頼まれたからな、最低限の面倒は見るが」

 

何でも無いかのように口にする。選ぶ権利を与えられたレフィーヤは。

 

「まぁ拒否されたら宿代とか治療費だとかを請求するがな……利子込々で」

「よろしくお願いします!!!」

「よろしくぅッ!!!」

 

パァン、っと景気よく音が響く程勢いよく彼の手を取ったレフィーヤ。別に脅しの様な言葉に屈した訳では無い。断じてない。ただちょっと、金銭が絡んだ瞬間のローウェンの目が怖いと思っただけだった。 

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