眼前に光が揺蕩っていた。
はて、此処は何処だろうかと疑問に思い、あぁ夢かと納得して頷いた。何故急に夢だと分かったのか少しだけ疑問に思うが、其処まで深く考える事でも無い。
辺りを見渡す。何処まで続くのではと思う程広大な草原に、沢山の光が在った。不思議な事にその光は、酷く懐かしいものに思えて。何処かで見たのか、或は。ふむと首を傾げながら考えていると、光が慌ただしく動き始める。危険を知らせるかのように激しく点滅しながら。なにか在ったのだろう。若しかしたら天敵と言えるモンスターでも現れたのかも知れないと思うレフィーヤ。
強烈な悪寒に襲われる。
瞬間理解する。如何しようもない何かが現れようとしていると。所詮は夢の中の出来事、等と楽観視する事は出来ない。此れから起こる出来事は、現実に影響を及ぼしかねないものだと、レフィーヤは理解した。
同時に、既に遅いと言う事も。
影が覆う。それが何であるのかを見てはいけない。そう思いながらしかし、レフィーヤは反射的に空へと視線を走らせて。
激痛と共に意識が覚醒する。
「エボルシャ?!」
「うぉ!なんだ行き成り?!」
「起きたか」
「なんでそんなに平然としてんだよ!!」
視界に入り込んできたのは驚いているフラヴィオと何時も通りのローウェン。彼の言葉から考えるに、目が覚めたのだろう。余り実感がもてないが。
「……あぁ」
「随分調子が悪そうだな。大丈夫か?」
「後頭部ぶん殴った本人が何言ってるんだよ」
「ちょっと大丈夫じゃないです。酷い夢を見たせいで気分が悪いです」
「夢?」
「夢ですね」
「気絶しても夢って見るもんなのか?」
「……さぁ? でも実際見ましたし」
「それもそうか」
「なぁおっさん、俺が可笑しいのか?」
「可笑しくないから自信持て」
軽く頭を振り、差し出された水を飲む。幾らかマシになったが、それでも不快感がへばり付いている。何かしら気分転換に、そう具体的に栗鼠の喫茶店で火鍋でも食べなければ拭えないものだろう。
「どの位気絶してましたか?」
「十数秒」
「戦闘中なら死んでますね」
「一人ならな」
「それはそうですけどね。改良しないといけませんね。と言うか体痛い!!」
「床に思いっきり倒れ込んでたからな」
「それだけじゃ無くて死なない程度の電流で無理やり意識覚醒させたので其れの所為も在って相当痛いです」
「お前そんなの使ってるのかよ」
言いながら呆れた様子のローウェン。まぁ、実際今回が初めての使用なのでこれが如何しようも無い欠陥術で在る事がここで分かったのだ。ある意味、ぶっつけ本番での使用に成らなくてよかったと思うべきだろう。下手すれば、此れの所為で自分に止めを刺してしまいそうだ。他の方法を考えなければ。
「あぁ……えっと、大丈夫か?」
「え、あぁはい。大丈夫ですよ。ほら、死んでないでしょう?」
「そこ?!」
「何処? まぁ、良いですけど。それにしても何で申し訳無さそうにしてるんですか?」
「あ、いや、それはその。なんか俺が言った言葉の所為で思いっきり殴られる事に成ったから、その…申し訳ないと言うか」
「…あぁ、その事ですか」
一瞬、そんな事かとレフィーヤは思った。大した事では無いと。
「完全に私が悪いんですから気にしなくてもいいですよ」
「え、いやだけど」
「貴方の言葉に過剰に反応して、勝手に暴走したのが私です。だから私加害者、貴方被害者。其れで良いんですよ」
冷静になって考えれば、辛ければいい手もんじゃ無いと。そう言ったからと言って自分と同じとは限らないと言う当然の事に行き付いたレフィーヤ。そう思って、言葉にしただけなのだろう。だから、自分が悪いのだが。其れでも納得できていない様子のフラヴィオにベルトランが肩に手を置きながら言葉にする。
「気にするなって言ってんだから、そうすりゃ良いんだよ。寧ろ、気にしすぎたらそっちの方が悪いぞ」
「そう、なのか?」
「そんなもんだ」
「…そうか」
そう言ってフラヴィオは肩から力を抜いた。本当に気にし過ぎでは無いだろうかと思うのは、自分が可笑しいからなのだろうか。そんな事を真剣に悩み、数秒後にまぁ切り替えが速いのはいい事かと思う事にしたレフィーヤだった。と言う事で気に成っていた事を問い掛けようとローウェンに視線を向ける。
「で、ラガード公宮に行くって言ってたローウェンは何で居るんですか?」
「忘れ物取りに来ただけだよ」
「凄い単純な理由だったんですね」
「そうだぞ、数分在れば済む用事だったのにアホが馬鹿みたいに絡んでるから時間食ってるけどな」
「すみませんでした!!」
キレの良い謝罪。なんだか随分と頭を下げ慣れてしまったなと頭の片隅で思うレフィーヤだった。
「まぁ、俺は其れで良いとして。二人に関してはちゃんとしろよ?」
「それは勿論」
「いやいや、大丈夫だぞ」
「は?」
「何せもう、朝食をおごってもらう約束をしているもんでね」
「そうなのか?」
そう言えばそうだったと、ついさっきの事なのに忘れていたレフィーヤ。
「…あんたたちは其れで良いのか?」
「おう、其れで良い。だよなフラヴィオ?」
「え、あ、あぁ俺も其れで良い」
「と言う事で此れでしまいだ。と言うか寧ろ謝るべきは俺達じゃ無くて女将さんにじゃ無いか?」
「確かに」
「あぁー……ちゃんと謝らないと」
可成り騒いでしまったし。迷惑かけたのは間違いない。朝食を奢ったら謝りに行こうと思って、不意に頭を過った事が気に成り、ローウェンに問い掛ける。
「ローウェンさん、ちょっと良いですか?気に成る事が在るんですけど」
「なんだ気に成る事って」
「いえ、さっき見た夢の事なんですけど」
「夢の事訊かれても困るんだが」
「それはそうでしょうけど、気に成る単語…と言うか言葉と言うか、名前? が在ったんですよ。若しかしたら知ってるんじゃないかなぁって思って」
「知らん」
「せめて聞いて下さいよ」
「じゃあ、何だ?言ってみろ」
「えっとですね」
言いながら、思い返す。既に朧げに成った其れを。結局、夢で見る事の出来なかった影の正体。強大であり邪悪であると言う事以外に、一つだけ。多く揺蕩う光が声でない言葉が告げていた在る言葉。其れを口にする。
「星を喰らうものって…知ってます?」
「知らん」
「ばっさりですね」