世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第九十一話

軽く鞄を揺らしながら中身を改めて確認。必要な物は全て揃っていると。まぁ、今更、此処で確認してもしょうがないのだがとレフィーヤは視線を前に、天へと至る為の道を見る。まるで樹海磁軸みたいだなと思いながら、軽く肩を回してからローウェンへと視線を向ける。大丈夫だと知らせる様に。其れを感じてか、彼は軽く見渡してから頷いて。

 

「じゃあ、空の上に向かいますかね」

 

一歩、足を踏み出した。

 

 

 

そこは空に浮かぶ巨大な建造物。現実であるのかを疑う光景の中に彼らは立つ。

 

「本当に飛んでますね、これ」

「何かが支えてるって感じでも無いしな」

「と言うか地味にどうやって此処まであたし達を運んだのか気に成るわね」

「そこはあれだろ、あれ。樹海磁軸とか、そう言ったものと同じじゃ無いか?」

「あぁ、在り得そう」

 

何の、何時もと変わらぬ様子の彼等は流石と言うべきか、否か。ただ、緊張してしまっているよりは良いのかも知れない。油断も慢心もしていないのだから。

 

「あ、あれ。樹海磁軸じゃないですか?」

「あぁー……みたいだな」

「と言う事は戻れるって事だね。いやぁ、良かった」

「本当ですね」

 

若しかしたら帰れないかも知れないと思っていたので、良かったと息を吐くレフィーヤ。冒険者の嗜みとしてアリアドネの糸を複数持っているが、使えないかも知れないと思っていたし。

 

と、其の時だ。

 

『…天の御座、我が居城に訪れたるは何者か?』

 

吹き荒ぶ風の音が鳴り響く中でも聞こえるその言葉は。音では無い何かなのだろうとレフィーヤは思う。声は、なお響く。

 

『此処は天の主。オーバーロードたる我が英知を込めて築いた場所。許可なく立ち入る事は許されぬ』

 

それは拒絶の言葉なのだろうか。しかしそれにしては込められた感情は。

 

視線をローウェンへと向ける。如何するのかと。下手な事を答えたらどうなるのか分からない。若しかしたら今立っている床が抜けて其の儘下へと真っ逆さま、何て事も在り得ない事では無い。と、そんな事を考えているとローウェンは大した事では無いと肩を竦め乍ら言葉にする。

 

「別に許可は必要無いだろう天の支配者」

『……なに?』

 

彼の言葉に天の支配者、オーバーロードは訝し気に声を零す。一体何を言ってるのかと問い掛け掛ける様に。対し彼はそんな事も分からないのかと言いたげな表情を浮かべながら。

 

「あんたの事ぶっ飛ばしに来たんだから」

『―――――――――――――――――――――』

 

沈黙。絶句しているのだろうか?というかそんな事言って良いのかと一瞬思い。其れで良いのかと頷いた。そして何が起こっても対応出来るように身構えながら反応を待ち。声が響く。

 

 

『ハッハハハハハハハハハハハ――――――――――――ッ!!』

 

 

それは笑い声。愉快でならないと、堪え切れないと響き渡らせる。そして、オーバーロードは納得した様子で言葉を響かせる。

 

『成程。汝らは反逆者であるか、挑戦者で在るか!! ならば許可など不要で在ろう! いや、否。許しを乞う等、無粋極まる事であろう!!』

 

笑う、笑う。楽し気に、嬉し気に笑う。何が其処まで気に入ったのだろうか。レフィーヤには分からない、分からないが。取りあえず落とされると言う事はなさそうだ。と、そう思いたい。

 

『であるならば言葉を交わすもまた無粋か。我は唯、座して待つのみ……』

 

そうして声は徐々に薄れ。やがて消える。

 

「あ、ちょっと待った」

『…何だ?』

 

その直前に、待ったを掛けたのはローウェン。其れに少しだけ機嫌を悪くした様子のオーバーロードはしかし、それでも何を言うのかと意識を傾けているのが分かる。

 

「いや、此れが無粋な事であると言うのは分かっている。分かっているが、それでも大いに結構。高々その程度で、とても重要な事を訂正する事が出来るならな」

『ほぉ? 我が、過ちを口にしたと?』

「その通りだ。そして其れは呼び方だ」

 

その言葉に。あぁ、成程と納得し、同時に訂正しなければいけない事でも在ると理解する。例え、無粋と言われようともだ。此ればかりは、何が在っても変える訳にはいかない。間違えられて儘でいる訳には、いかない。

 

「俺、いや俺達はな。反逆者と言うのは正しくない、更に言えば挑戦者と言うのも少し違う。正しくない」

『ならば。汝らは己を何と呼ぶ?』

 

決まっていると、ローウェンは視線を走らせる。それに答える様にレフィーヤは頷いてみせた。コバックもハインリヒも又同じだ。それが、違うなどという事はありはしない。彼は、笑みを浮かべながら、言葉にする。

 

求め。歩み。挑む者達の示す名を告げる。

 

「俺達は……冒険者だッ!」

『そうか…そうか!!ならば来るが良い冒険者よ!!』

 

オーバーロードは声を響かせる。挑発する様に、しかしなにかを期待しているかの様に。

 

『汝らに我の示す道は無く。故に汝らは己で超えよ。我が英知を超えよ。苦難を超えよ。絶望を超えよ。』

 

そして。

 

『我が元へと。天へと至れ。頂へと至れ。果てへと至れ。其処にこそ…汝らの求めるものは在ると知れ』

 

 

 

 

 

「言われるまでも無い!!」

 

そうだ、そうだとも。その通りだとも!!

 

「えぇ、えぇ本当に。貴方の英知も、苦難絶望。そんなもの……全部踏み潰して貴方の所まで行ってあげます」

「あと、言って於くけど。別に求める物が無くたって良いよ、オーバーロード。僕たちは至るべき場所など求めて居ませんし。何より、今最も求めているものは…最高の報酬は、貴方の先に在ると既に知っているからね」

「まぁ、財宝が在るなら在るで貰っていくけどね」

「それな」

 

笑いが零れる。何時も通りの笑いが。

 

「まぁ、と言う事でだ」

 

笑みを浮かべた儘、大胆不敵に宣言する。

 

「行くぞオーバーロード。座してる暇も無い位に直ぐ、辿り着いて……そのまま踏み越えていってやる」

 







何故かは分からない。分からないが……その言葉に、確かに歓喜していた。
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