見事、強大なモンスターである猛牛。後に名をジャガーノートと言う事を知る事に成ったそれ撃破したギルド・フロンティア一行は、愚痴の様なものを呟いていた。
「あぁー……強かった、其れ以上に面倒だったけど。お陰で割と疲れた」
「わり…と? あたし、結構疲れたわよ?」
「それはあんなことすれば疲れるでしょう普通。其れこそ立てない位に……なのに結構程度なんですね疲れたの。私は凄く疲れましたよ」
「何ていうわりには、何時も通り走ってたよね君」
「其の位の余裕は在りましたからね」
「詰り全く問題ないと言う事だな」
「そうですね」
そう、頷くレフィーヤ。だが別に疲れたと言う言葉は嘘では無い。ただ、それでも走れた。と言う唯それだけの事なのだから。
「で、ここ。多分そうですよね」
「まぁ、多分……と言うには少し、分かり易過ぎるけどな」
彼等が居るのは、二十五階。今まで潜り抜けてきたものとは違う扉の前で、少しの休憩をしていた。扉の向こう側。圧倒的な存在感を感じながら、それでも力を抜きリラックスしていた。
「でも、警戒しなくていいんですか? 全員休んだらモンスターとかの対処が大変じゃないですか」
「まぁ、大変だろうな。襲って来たなら」
「詰り、来ないと?」
「実際、来てないだろう? 今までなら容赦なく途切れなく襲い掛かって来てたモンスター達が」
「……そう言えばそうですね」
言われて、気配を探ってみるが一切感じられない。辺りにモンスターが居ないのだろう。だが、それは何故?
「ま、万全の状態…と言うのは無理でもちゃんとした状態での俺達と戦いたいんだろうな」
「……オーバーロードが、ですか?」
「あぁ、何故かは知らんがな。酷く、俺達との戦いを渇望している様だ。若しかしたら此処で帰っても許容するかもしれないぞ? 俺達が準備の為に戻ったのだと理解をしめすだろうな」
まぁ、しないけどと言いながらハインリヒの用意したお茶を飲むローウェン。レフィーヤは視線を扉へと向け、其の先にいるだろう天の支配者たるオーバーロードが何を思うのかを少しだけ考える。相対していないから、本当に想像でしかないが、しかし語りかけてきた彼の言葉は。歓喜に満ちていた様に思えた。今から倒しに行くと言ったにも関わらずだ。まるで倒される事を望んでいるかの様に。
「うーん?」
と、そんな二人に近づいて来るのはコバック。彼は何故か首を傾げて何かを考えている様子。当然、気に成る。
「如何したんですか?」
「えぇ、ちょっとねぇ。何故か扉がうんともすんとも言わないのよ」
「……お前先に行こうとしたのか?」
「そんな事しないわよ! ただ、今までのと違って豪華だなと思って少し近づいたら、なんか今までのと違って光って無かったのよ。だから何か変だと思って近づいてみたら」
「反応しなかったと?」
「そう、今までは近づいただけで開いてたのにね」
それは本当の事なのかと立ち上がり扉へと近づく。しかし、コバックの言う通り反応を示さない。手で触れたとしてもだ。まるで来ることを拒んでいるかの様に。
「……戦いたいのか、そうじゃ無いのか。どっちなんですかね?」
「ちゃんと休むまで来るなって事なのか…或は」
「或は?」
「単純に、来るのを望んでいるのは俺達だけじゃないとか……かね?」
「は? それって……あ、いえ成程」
どういう事なのかと問い掛けようとして止める。気が付いたから。恐らく、と言うか確実にコバックも、ハインリヒも気が付いて居る。自分達の居る場所へと向かって来て居る気配がある事に。
「敵意は感じないからモンスターでは無いね」
「そうですね。其れなりの速さで移動してるから……走ってるんでしょうか?」
「それで数が…五、位かしらね?」
「まぁ、大体の正体と言うかは分かるな」
その言葉にふむと考えるレフィーヤ。自分達、と言うよりはこの城の城主たるオーバーロードの元へと向かう、五つほどの敵意の無い気配。それで分かると言う事は、レフィーヤ自身、知っているもののなかのどれか、或は誰かと言う事に成るのではと考えて。成程と頷いてから、気配の向かって来る方向へと視線を向けて。現れたそれ、彼等を見る。
「うぉ?! 本当に居た!!」
「やっぱりお前達か、調査隊」
そんな驚きの声を上げるフラヴィオと、同じ様な表情を浮かべている調査隊の面々。自分達が居る事がおかしいのだろうかと一瞬思いつつも。しかしそれ以上に気に成る事が在ったので言葉にする。
「此処まで来るの凄く早かったですね。モンスターとかトラップとか、あんなに沢山だったのに」
「いや、ここに来るまでの道中そんなの無かったぞ?」
「え?」
「モンスターの死体とかぶっ壊されたトラップの残骸なら沢山、其れこそ厭きる程見てきたけどな」
「……あぁ」
詰り、一切障害に成る様な物と鉢合わせる事無く走り続けていたから。同じく走っていたとはいえモンスターと戦い、トラップを破壊しながら進んだ自分達に追いついたのかと理解する。いや、だとしても十分早いのだが。
「あ、あの!! 貴方達はオーバーロード様にどの様なご用件が在るのですか?!」
と、レフィーヤが如何でも良い事を考えているとアリアンナが声を響かせて問い掛ける。
「どの様なって……ぶっ飛ばしに来たんだけど」
「ぶっ飛ばし?! あの、聖杯だっけを求めてじゃ無くてか?」
「聖杯?……あぁ、大臣やら公女が言ってたやつだな。それはぶっ飛ばした後でも良いんじゃないか?」
「いやいやいや、其れは駄目だろ!」
「私達は、オーバーロード様のお力を借りる為に此処まで来たのです。その、倒されてしまいますと」
「そう言われても」
普通に困る。確かに彼等には彼等の事情があるのだろうが、別に自分達が気にしなくちゃいけないなんて事は無いのだから。
「ふーん…なら話すだけでも先にするか?」
「宜しいのですか?!」
「え、良いんですか?」
「今すぐぶっ飛ばすか、ちょっと後にぶっ飛ばすかの違いでしか無いからな」
「……確かに」
言われてみればその通りだ。調査隊の彼等の事情が如何にかなるなら、其れをしてからの方が良いだろう。別に倒す順番なんて気にしてないし。先に踏破されるのは嫌だけれども。
「まぁ、俺達も一緒に向かいはするけどな」
「え?帰らないんですか?」
「向こうが招いてるみたいだしな」
言って、指差すローウェン。視線を向けると、先程まで無かった光が扉に灯っていた。
「天の支配者は、調査隊と一緒に来いと言っている様だ」
「……みたいですね」
「と言う事で、其れでも構わないなら良いが・・・如何する?」
「それは」
「はい!ぜひよろしくお願いします」
何かを言おうとした少年に被せるように声を響かせるアリアンナ。直ぐにハッとした様子で謝罪していた。
その様子に笑みを浮かべながら。
「じゃあそう言う事で…休憩してから入るか?」
「いや、大丈夫だ」
「そうかい、なら」
言って、扉へと近づくローウェン。
「ご対面といこうじゃ無いか」
何たる事か。求めしものが二つも現れようとは。
此れならば、何方にせよ我が願いは成就する。
ふ、ふははははは。
さぁ、来るが良い。