世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第九十九話

フロースの宿、その一室にて。レフィーヤはベットで寝転がりながら地図を眺めて居た。一階層から五階層まで、しっかりと埋まった地図二十五枚をぼんやりと眺め。

 

「…んふッ」

 

優越感に浸る。辛味を口にした時以外に此処まで気分が良くなる事はそうそうありはしない。其れを超えるのものが在るとするなら、其れこそ迷宮を踏破した時くらいだろう。それ程に気分が良い。やはり、五階層を色々言って、寄り道だと分かりながらも走り回り埋めたかいが在ったと言うものだ。

 

そして其れをしていなければ、調査隊が到着する前にオーバーロードへとギルド・フロンティア一行だけで挑まなければいけない事に成っていたかも知れない、全く世の中どんな行動がいい方向に向かわせるのか分からないものだ。

 

何て思いながら、もしもを考えてげんなりとする。あのオーバーロードに四人で挑むとか悲劇でしかないだろう。まぁ、オーバーロードは調査隊と共に挑まれる事を望んで居た様だし、何方にせよ変わらないかと思い直す。精々、休憩時間が伸びるかどうか程度の違いだろう。

 

と、ドアを叩く音が響く。誰が来たのだろうかと、軽く片付けてからドアを開ける。訪ねてきたのはローウェンだった。挨拶代わりか、片手を上げて見せた彼に何か用なのかと良い掛けるように口にすれば。

 

「いや、暇だったからだが?」

 

言いながら椅子に座るローウェン。そんな理由で来たのかと少しだけ呆れ。まぁ、別に良いけどと再びベットに転がる。

 

「……地図見てたのか?」

 

彼の視線が綺麗に重ねられた地図に向いて居る。一瞬で何をしていたのか把握するとは、流石人外と思いつつ。まぁ、机の上に置いて在れば気が付くだろうし否定する事でも無いので頷く。

 

「其れを見ながら優越感に浸ってました」

「なんで優越感なんだよ」

「それは、ほら。こんなに複雑で難しい迷宮なのに踏破したんだなって思うと…嬉しくありません?」

「まぁ、嬉しいが地図見ながら笑いはしないな流石に」

「何故笑っていた事を知っているのですか?!」

「完成した地図見る時、お前何時も笑ってるぞ…結構あれな感じで」

 

その言葉に、頭を抱えてしまうレフィーヤ。そして。

 

「いや、そこまで気にする事でも無いですね」

「あぁ、まぁ極端な話笑ってるだけだしな」

「別に誰かに迷惑かけてる訳でも無いですしね」

「笑ってるだけだからな」

 

ならば何も問題は無いと頷く。其れをローウェンは呆れた様子で見ていた。其れで良いのかと言いたげに。いや、此れで良いのだと、敢えて口に出さず心の中だけに留める。

 

話を変えるように、気に成っていた事を口に出す。

 

「そう言えば良かったんですか?」

「何が?」

「オーバーロードとの戦いの後の話です」

「素材の話か?」

「はい、あっさり渡してましたけど。あ、いやまぁ別に不満が在ったとか無いんですけど……売ったらお金になっただろうにって思いまして」

「なら別に良いだろ。誰も欲しがってなかったんなら別に渡したって」

「それはそうですけど」

「それに調査隊が居たから勝てたって感じの所は在ったしな。ちゃんとお礼しておかないと。尤も、気にしなくていいなんて言われたがな」

「言ってましたね……ところでローウェンさん」

「なんだ?」

 

寝転がった儘、視線をローウェンに向けた問い掛ける。

 

「貴方、オーバーロードに突き刺さってた剣を利用しましたけど……剣、如何為ったんですか?」

「気にしなくて良いって言ったんだから気にしなくていいんだよ」

 

言いながらも視線を一切レフィーヤに向けようとしないローウェン。其れを見て理解する。

 

詰り、あの時素材を譲ったのは、剣を利用した結果どっかに言っちゃったけど素材上げるから許してくれ…と言う事だったのだろう。まぁ、確かにオーバーロードの素材を売った金額よりも剣を弁償する方が高くなりそうだし、そう考えると彼の行動も納得だ。あと、思う事といえば、気にしなくて良いと言うのはそういう意味でった訳じゃ無いと思うという事だけだ。

 

そして、調査隊が気にする事でレフィーヤが気にする事では無いと言うのは紛れも無い事実である。

 

と言う事で、気にしない事にしたレフィーヤは起き上がり再び眺めようと地図へと手を伸ばし。

 

「おーい。居るかーい?」

 

と言う声と同時にドアを叩く音が響く。声から判断するにハインリヒだろう。一体何の様なんだとドアへと向かい開ける。

 

「何ですか?」

「ローウェンは居るかい?」

 

どうやら彼はローウェンに用が在った様だ。きっと、部屋を訪ねても居なかったから来たのだろう。

 

「なんだ?」

 

ハインリヒの言葉に、椅子に座ったままローウェンが問い掛ける。彼の姿を見て、ハインリヒは鞄に手を入れて。

 

「パン貰ったんだけど食べるかい?」

「貰う」

「あ、私も貰っていいですか?」

「良いとも」

 

差し出されたパンはほんのりと温かく柔らかい。これは美味しそうだなと思いながら、ふと頭に過る。これ、コバックも来るのではないだろうかと。

 

「あら、みんなお揃いね」

 

案の定である。扉を閉めようとしたらひょっこりと現れて、部屋の中を覗き見ながらそう言った。

 

「コバックさんも何か用ですか?」

「俺にか?」

「それとも僕に?」

「しいて言えば皆にかしらね」

「と言いますと?」

 

「調査隊、出発したらしいわよ」

「ほぉ?」

 

楽し気に、ローウェンは問い掛ける。

 

「何処に?」

「聞いた話ではギンヌンガ方面らしいわよ」

「ほほぉ、ギンヌンガねぇ。あの、世界を滅ぼしかねない禍が居るとか言ってたギンヌンガにか」

 

成程成程と頷いてから、彼は三人に視線を向ける。

 

「さて、如何しようか?」

「訊く必要在りますかそれ?」

「言葉にするまでも無いよね、それ」

「其の積りが無ければ聞いてこないし言いもしないわよ」

「だよなぁ!!」

 

ローウェンは勢いよく立ち上がり、そして言葉にする。

 

「それじぁ迷宮へ挑みに行くとするかね」

 











永劫を断ち、滅びを鎮めた……あと、一つ。

残るは、因果のみ
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