俺ガイル作品処女作です。

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届かない想い

「ヒッキー、私ヒッキーが好き。比企ヶ谷八幡君が好きです。私と付き合ってくれませんか?」

 

あぁ、卒業式の日に告白なんて、場に流されてるみたいでヒッキーには印象が悪いかな。

ヒッキーが教室から出る後ろ姿が目に入った時、「言わなきゃ」って思えたから後悔はしない。

ふふっ、ヒッキー変な顔。急で驚いたかな。喜んでくれてるかな。そうだと、いいな。

 

「由比ヶ浜、それはお前の」

「勘違い…なんて、言わないでね」

「…⁉︎」

「この気持ちを、馬鹿にする様な事を言うのは、ヒッキーでも許さない」

 

きっとヒッキーならそういうと思ってたから、先に釘を刺す。

やがて、ヒッキーは意を決した様に、閉じていた口を開く。

その目には、いつもの濁りに加え、確かな力が宿っている様に見えた。

少なくとも、私にはそう感じられた。

 

「悪い。由比ヶ浜、俺はお前とは、付き合えない」

 

ふぅ、と風が吹いた気がした。

 

「どうしてか、聞いても…良い?」

 

ちゃんと最後まで話せるだろうか。声が上ずらないようにそう問いかける。

 

「あぁ。俺、好きな人がいるんだ」

「うん」

「そいつとの、出会いは酷えもんでな。平塚先生に高ニの春に文句は一切受け付けないって言われて、無理矢理放り込まれた部活で出会ったんだけど、第一印象はお互いに最悪って感じだったかな。

だってあいつ俺の友達申請、即答でノーって答えやがったからな?

こんな部活直ぐに辞めてやるなんて思ってた。

その部活での最初の仕事がお前の菓子作りだっけか。

そっから、お前が入部して部員が3人になったんだっけか。そいつが淹れる紅茶は美味かったなぁ」

「ふふ、そうだね。また飲みたいね」

 

そこから、ヒッキーがその人について、語り始める。私はそれに対して、時々相槌を打ちながらしっかりと聞く。

聞かなきゃいけないと思ったから。

 

「何度も仲違いしそうになって、部が崩壊しそうになったりするのを、必死に足掻いて、踠いて、その度に何とかしようって頑張り続けて、気が付けばその空間が惜しくて惜しくて、堪らなくて、ずっとこの場所に居たいって思えた。勿論そこにはお前と俺とそいつの3人でな」

「うん、そうだね」

「だから、そう感じられる様になった、今だから確かに、はっきりと分かる」

「うん」

 

そこで、ヒッキーは一旦言葉を区切り、きちんと私の目を見て答えを出す。

 

「俺は、雪ノ下が好きだ」

「…そっか」

 

きっとどこかで分かっていた。

その目は私には向けられていない事が。

私じゃない子に向けられてるって。

だって私はいつも貴方を見ていたから。

 

「あいつの大人振っていてパンさんとか猫が好きなところも、曲がった事が嫌いで、冗談を言わないところも、もちろん悪いところもあるけれど、それも全部引っ括めて、俺は雪ノ下雪乃が好きだ」

「…うん」

「だから、お前とは付き合えない。ごめん」

「…謝んないでよぉ、バカァ」

「…あぁ、でも、こんな俺を好きになってくれてありがとう。この二年弱の間、奉仕部で居てくれてありがとう。本当に感謝してる」

 

そう言って、ヒッキーは頭を下げた。

 

「ちょちょ!頭上げて!ほら、私もヒッキーとかゆきのんと一緒に部活できて楽しかったし、私の方こそありがとね」

「あぁ」

「もう、行って?ゆきのんはきっとあそこにいるから」

「あぁ、また、後でな」

「うん、また後で」

 

そう言うと、ヒッキーは歩いていく。

角を曲がり、その背中が見えなくなった所で、不意に目に水が溜まるのが分かった。

「やだ…ヒッキー、行かないで、待って」

 

拭いても、拭いても溢れてくるそれは一向に止まる気配はない。

「いやー、お互い振られちゃいましたねー由比ヶ浜先輩」

 

そこにやってきたのは。

 

「いろは…ちゃん?」

「なんて酷い顔してるんですか。そんな顔じゃ後で二人に会う時に見せられないですよ」

「だって、だってぇ」

 

止まらない涙を拭う。どれだけ泣いても今はこの涙が止まる気がしなかった。

だって私はあの捻くれた考えを持つヒッキーの事が-

「好きだったんだもん!大好きだったんだもん!こんなに人を好きになった事なんて、無くて、振られるのがこんなに悲しいなら、告白なんて!」

「それ以上はやめてください」

「でも!…‼︎」

 

顔を上げると、そこには確かな怒気を含んだ目でこちらを見据えているいろはちゃんの顔。

 

「私は、振られたけれど告白した事を後悔なんてしません。泣くな、とは言いません。私もたっぷりと泣いてきましたから」

「いろはちゃんが…?」

「えぇ、それはまぁわんわんと」

 

そう言ったいろはちゃんの目元は確かに腫れていた。

 

「振られたことによって、告白した事を後悔するのは、私は先輩への侮辱だと思います」

「…‼︎」

「私たちが、本気で先輩にした告白に真摯に向き合ってくれて、はぐらかさずにちゃんと断ってくれた。あの先輩にそこまでされるなんて、もう負けを認めるしかないじゃないですかぁ」

 

そう言って、いろはちゃんは目元を拭う。

そして、ニカッと笑顔を見せる。

誰が見ても無理をしていると分かる様な笑顔。

 

「だから、二人を祝おうって、きっとあの二人は後で私たちに報告しに来るから、その時に盛大に茶化してやろうって。

それが、こんな可愛い後輩を振った先輩への仕返しです」

「そっか、強いんだね。いろはちゃんは」

「だから由比ヶ浜先輩も笑ってください。

一緒におちょくり倒してやりましょう」

「うん、そうだね」

 

ゴシゴシと、袖で雑に目元を拭ってニコリと笑顔を作る。

 

「じゃあ、行きましょうか」

「そうだね!あ、みんなで写真撮ろうよ。桜も咲いてる事だし」

「良いですね!みんなで撮りましょう!」

 

そう言って、いろはちゃんと肩を並べてグラウンドの方へと歩いていく。

きっとあの二人は後で、はにかんだ笑顔で付き合った事を報告してくるだろう。

そこで、盛大に祝おう。涙はもう止まった。大丈夫。

さよなら、大好きな人。

私のこの想い、ゆきのんに預けよう

この想いだけは、"本物"だったと胸を張って言えるから。

 

だから、この届かない想いにさよならを。

 

 

 

 

 


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