起床。朝食を食べ、歯を磨き、小さい服を無理矢理着る。
いつもと同じ時間。いつもと同じ場所。だけど違うものがある。
それは俺。それはあいつ。それは人。
急に俺に変化が起こった。体が大きくなり、鬣が生えた。
食事も肉に偏った。立派に獣になってしまった。
気まぐれでニュースを見てみる。国内の人工の8割が多種類の動物に変わってしまった。
混乱により死傷者が多数出ているらしい。ためしに外に出てみた。冷たい空気が鬣を通って
伝わってくる。寒いのですぐに家に帰ることにした。
あれから一週間がたった。混乱こそなくなったものの新しい問題が生じた。
肉食動物になった者が草食動物になった者を襲い始めたのだ。
...俺もその一人である。止めようと頭の中で思っていても自制が利かないのだ。
人だったものを食うたびに激しい罪悪感と自己嫌悪に苛まれた。
...が、いつしかそれも消えた。生きるために仕方ないのだと言い聞かせるうちに、
抵抗が無くなり。喰らうたびに自分の強さを実感出来て、嬉しく思い始めた。
一匹の狐を捕らえた。
「最後に言いたいことはあるか?」
「私は神の使いよ。私を殺したとき、あなたには天罰が下るわ」
呆れた。まるで虎の威を借る狐だ。そのような見栄据えた嘘に引っ掛かる奴は獣未満だ。
そう思いながら首もとに食らいつく。自称神の使いは小さな悲鳴をあげて絶命した。
未だに天罰は実感していない。
また捕まえた。また狐である。
「私は神の使いよ、私を殺したとき、あにたに天罰が下るわ。」
同じ口調で、同じスピードで、一言一句違えずに命乞いをしてきた。
多少不気味に思いつつも殺して、食った。
そんなことを永い時間繰り返した。
「私は神の使いよ。私を殺したとき、あなたに天罰が下るわ。」
また同じ文言である。もはや何も感じなくなった。また同じように首もとに食らいつこうとしたとき
「何かがおかしいことに気づいたかい?」
今回の狐は違う口調で違う言葉を発して来た。
「おかしい?何が?」
「なんだ、気づかないのかい。さっきから同じ狐が、同じように君に殺されにいってることにだよ。まるで、ずっとその時間を繰り返してるように、ね」
「っ!?」
急に狐が不気味に思えてきた。もう声も聞きたくない。さっさと殺そうとしたとき
「殺してもまた永遠に繰り返すよ?」
釘を刺される。もうすでに狐のペースである
「...何でそんなことがわかる?」
「今までの狐もすべて私だからさ。そしてこれからも私」
「これが天罰ってことか...?」
「そうだよ」
逃げ出したくても体は恐怖で動かなくなっていた。
「どうすれば、どうすれば許してくれるんだ?」
「無理だよ。私を殺した地点で、逃げられないんだ」
「頼む。...お願いしますっ!!」
今にも泣き出しそうな目をしながら土下座をする。絶対に勝てないものにあってしまい、
プライドもなにもなくなってしまった。
「仕方ないなぁ、じゃあこの先ずっと私に服従し続けてくれたら、ゆるしてあげるよ」
狐がする提案に、易いものだとさえ思えた。
「ありがとうございます!!喜んでお受けします!」
「よし、決まりだね。じゃあこれからもよろしくね」
「はい!!」
安堵からか、狐の
「案外チョロいね」
という独り言は獣の耳には届かなかったのである。