巨神とトンチキ   作:トトン

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一応述べておきますが、主人公はヴァルゼライドとヘリオスの性質を持った全くの別存在です。その為性格などにも違いが見られます。
なぜこんなのが現れたのかなどは今後明かしていきますが、上記のトンチキどもよりいくらか柔軟な対応が取れる様になっています。ただし、ブレないところは全くブレませんが。


トンチキのその後

随分と長い時間旅を続けていた様に思う。

旅、と言っても目的の無い旅というわけではない。

今から・・・正確にはよくわからないのだが、1万と数千年前に打ち払ったあの白い巨神の残骸。それを探し、見つけては破壊しを繰り返している。

 

因みにだが、己が人間でありながら、人間ならざる者と認識した。理由はいくつかあるが、代表的なものを挙げるなら寿命。間違いなく万を超えた年月を経ているのだが、この身は土に還るどころか老化すらしていない。

そして己の強大過ぎる力と、時折指令を飛ばしてくる何者かの意思だ。

巨神を打ち倒してからというもの、頭の中に直接声を掛けてくるそれは強力な強制力を持っていた。もっとも、それに従う事がその場の最適解であったという事は何度もあるので特に邪険には扱っていない。

 

話を戻す・・・。

 

巨神は文字通り全身全霊を持って消しとばしたと思っていたのだが、存外に巨神は硬かったらしく、6つの残骸と思われるものが世界中に飛び散っていくのを目撃した。

 

あれ程の力を持った存在の欠片。神にせよ人にせよ、悪しき者の手に渡ればどう利用されるか分かったものではないのだ。なにより、件の何者かが己に対し残骸を見つけ、破壊せよと訴えかけていた。

 

物が大きいので殆どの残骸は発見し、破壊できたものの、頭部のあたりから飛んで行った残骸がどうしても見つからなかったのだ。既に何者かによって持ち去られてしまったのか、それとも既に消滅したのか。

どちらにせよ確証が持てるまで探し続ける必要がある。

 

そうして長い長い時間を掛け、漸く発見したのだ、その残骸を。

 

漸く見つけたのだが・・・問題が発生した。

 

とある砂漠の中心で、とある部族が残骸から赤子を探し当てていた。いやまて、赤子?どういう事なのだこれは。

予想外の展開に思わず固まってしまう。そう、赤子だ。白い髪と褐色の肌に刻まれたあの巨神のものと似た刻印を除けば、見た目は人間の赤子だ。

 

「巨神の子だとでも?生きているならば何故今まで活動していなかった」

 

赤子から感じるのはあの巨神と近しいもの。しかし、アレより驚異となる程のものではない。余りにも弱々しく、脆弱なその気配。

恐らく、力自体人間の赤子と大差ないものだろう。

 

そんな赤子を部族の者達はまるで祭り上げるが如く天に掲げていた。

 

それを見つめ、胸中に湧き上がったのはあの激情。あの赤子も、遠い未来であの巨神の様に災厄を振りまく存在と化すと確信して。

抜刀し、赤子に向かい突貫しようとした瞬間、俺の身体は硬直した。

 

「なに!?」

 

同時に頭に響いたのは、普段の意思の持ち主と“別の存在の意思”だった。

 

———待て、まだ早い。

———今アレを砕いては人理が乱れかねない。

———来たる時まで己を偽り耐えるのだ。

———時が来しだい、砕くのだ。

 

命令する様な、懇願する様な意思。

普段のものと別の存在である事は確信出来たが、その意思の強制力は全く同一。燃え盛る激情は冷め、剣を納刀した。

 

「くっ、やむを得ん。なんだったのだ今のは」

 

いくら問い掛けても返答はない。このまま終わらせる訳にもいかず、俺は部族へと歩んでいった。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

その後の出来事?そうだな。端的に述べればその後部族、フン族と接触。務めて友好的に接した甲斐あってから、部族に迎え入れられ、幾つかの条件の下赤子を監視する立場に付くことが出来た。

まだ赤子ならば育て方によっては巨神とは別の善良な存在に矯正できるのではないかと考えた訳である。

 

しかし、部族の者達は赤子を軍神の子であると称し、強大な戦士として育てようとしていた。それだけならばともかく、赤子は巨神と深い縁があるのは間違いない。戦う術など覚えたら将来どうなるかわからないのだ。

故、俺は警戒されるのを承知で教育係の任を申し出た。

 

結果?受け入れられたよ。その前に部族の戦士達全員を纏めて相手取る試験的なものを受けさせられたがね。なに、殺してなどいないし傷付けてもいない。単に全員気絶させただけだ。ただ、その試験があってから部族間で一目置かれる様になったのも事実である。どうもフン族は戦闘民族のきらいがあるらしい。強きものこそが絶対であり、正義であるということか。

 

こうして俺は監視係けん教育係となった訳だ。戦いについては、何故か己によく馴染んでいる剣術を教えることにした。真剣にやらねば部族達に警戒を与えかねんのだ。あの意思の伝えてきた様に、今はまだ己を偽る必要があるようだ。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「・・・“レイジ”、稽古の時間だ」

 

「気が早いぞ“アッティラ”。まだ日も登っていないだろう」

 

アレから15年。無銘だった俺は名を与えられ、赤子・・・アッティラは少女と呼べる背丈まで成長していた。普通なら家事の中心に立ち、早ければ結婚もして居る年頃なのだろうが、アッティラは違った。

教育係として何故か知っていた遊びやら炊事やらの知識も教えていたのだが、彼女はそれらに全く関心を示さなかったのだ。それに対比して稽古には強い関心を示し、3歳の頃には既に剣を持ち始めていた。

 

今もこうして日が上らぬうちから俺の居る小屋に入ってきては、稽古の催促を始める。

 

「稽古に早いも遅いもない。支度は出来ている、行くぞ」

 

「・・・先に行っていろ。直ぐに向かう」

 

無表情にかつ、一方的に彼女は言う。いつものこと故もう慣れたが、これが一日中続く為、将来本当に巨神と同様の存在と化すのではと警戒は深まってしまう。

寝台から身を起こし、2振りの愛剣の片割れを携え小屋を出ると、少し離れた位置でアッティラは真剣を携えていた。

 

「遅い」

 

「稽古に早いも遅いもないと述べたのはお前だアッティラ。ほんの数秒足らず、誤差にもならんだろう」

 

「これは稽古云々ではない。部族の女が言っていた、女を待たせる男は悪いと」

 

「何を吹き込まれたのかはあえて聞かん。しかしだ、この場合相手の都合を考えていないお前に非があると憶えておくことだ」

 

「説教はいい、始めるぞ」

 

言い返す暇もなく彼女は突貫してきた。常人とはかけ離れた速度のそれは、一流の戦士でさえも反応出来ぬものであろう。だが、

 

「遅い、前にも言ったが振りが大き過ぎる。仕留めに来るならば最小限の動きでこなせ」

 

俺にとっては余りにも遅い。大振りの一撃を軽く受け流す。

どういうわけかこと戦闘力において俺は一度も同等の敵に会ったことがない。もっとも、全身全霊で闘った相手があの巨神だった時点で・・・。

 

「まだだ」

 

「ほう?」

 

受け流された刀身を強引に引っ込め、ガラ空きになっていた俺の脇腹に斬りつけてくる。

15歳にしてこの膂力と即決力。戦士の素質がありすぎる。

 

「緩い。意表を突いたものではあったが対処出来ぬものと思い上がったか」

 

左脇腹に迫るアッティラの刀身を左膝で“蹴り上げ”、そのまま空いて居る左手でアッティラの胸倉を掴み投げ飛ばす。

 

「チッ・・・!」

 

「確かに今のお前ならばそこらの戦士など相手にならんだろう。だが、そこまでだ。フン族最強の戦士となるならば、俺にかすり傷の1つでも負わせる様になる事だ。では、今度はこちらからいかせてもらおう」

 

ダンと地を蹴りアッティラへ肉薄する。体勢を整えたばかりで隙の残っていた彼女は一瞬判断が遅れ、俺の一閃を受け吹き飛ぶ。咄嗟に剣を盾にしていたのはやはり素質故なのだろう。

もっとも、こうなるとわかっていた上でのこの一撃だ。この程度でやられているなら、アッティラは既に数百単位で死んでいる。

 

「まだやると。つくづく血の気が多いなお前は・・・」

 

「この程度余興ですらない、次だ」

 

結局、夜明け前から始まった稽古は昼前まで続いた。これもいつもの事なので最早部族では気にするものは1人もいない。

中には俺とアッティラを兄妹の様だと呼ぶ者もいるが、俺はそうは思わない。

彼女は飽くまで白き巨神の残滓であり、俺はそんな彼女をいつか滅ぼすであろう死神でしかないのだから。

虚しくはないのか?否、そんな感情を俺は持ち合わせてはいない。不条理を撒き散らす悪性にかけてやる情など、どうして持てようか。




結構勢いで書いたところもあります。何かしら意見などありましたら参考にさせていただきます
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