キノの旅 ―the Infinite World―   作:ウレリックス

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今回はおまけとして、後書きに今回出したキャラのキャラ紹介をデンドロのネット版にあるキャラクター紹介風に書いてみました。
今後もオリジナルマスターが何度か出るでしょうから、特に後でまた出そうかな?と思う時は書いていくかもしれません。


第9話 爆発する話 ―Caution―

キノはレジェンダリアにある、草木の少ない山地を歩いていた。

通常、外を移動する場合にはヘルメスに乗って移動するのだが、今回は徒歩である。

もちろん、それには理由があった。

 

「あとどれくらいになりますか、レッドさん」

「うーん、もう少し先ですねー。せっかくキノさんがいるので、少し奥まで行こうと思うのです」

 

今回、キノには同行者がいた。

名をレッド・ウィザードという<マスター>であり、ジョブは【紅蓮術士】。

見た目は十代の少女であり、幼い印象を与える顔つきだ。

魔術師系統のジョブである彼女だが、一方では生産職もとっている。【花火師】のスキルなど何に使うのだろう、キノはそう思ったが詳しくは聞いていない。

 

キノ達が山道を歩いているのは、とある鉱物の獲得が目的だ。

【サラマンドル鉱石】と呼ばれるその鉱物は火属性に親和の高い金属を作り出すことができる。

レッドのジョブを聞いていたキノは装備を作るのにでも使うのだろう、と思っていた。

 

「《クリムゾン・スフィア》!」

 

新たに現れたモンスターに向かって、レッドが【紅蓮術士】のスキルを放つ。《クリムゾン・スフィア》は火力の高いスキルとして有名なものの一つだ。

しかし……だからこそ、疑問はある。

 

「これ、ボク必要でしたか?」

 

キノがレッドと同行しているのは、パーティー募集をしていた彼女から誘われたからだ。

彼女が言うには、採取の協力をして欲しい、と。

当初キノは生産職によくある、戦闘力がない故の護衛依頼と思っていた。

しかし……【紅蓮術士】のレッドの力を見て、本当に自分は必要だったのか、そう思わずにはいられないのだ。

 

「いえいえ、必要ですとも! 私はスピードのある人の協力がどうしても必要でして……」

「スピード、ですか」

 

なるほど、確かにそれなら納得がいく。

今は出していないが、レッドに声をかけられた時にはヘルメスがいたし、AGI型の戦闘スタイルであることも伝えている。

彼女が求めた力がスピードならばキノに当てはまるし、魔法職のレッドに足りないものでもある。

 

「とは言え、説明も必要ですね。まず、鉱石集めが目的とは言いましたが、それは通常の採取によるものではありません。フィールドボスクラスのモンスターのドロップです」

 

一般的にボスモンスターというと、デンドロでは<UBM>のことを指しがちだが、ボスモンスターと呼べるモンスターは他にも数多く存在する。

<UBM>はあくまで、ボスモンスターの中でも一体しかいない上に倒すと討伐MVPが特典武具を得るものを指すにすぎない。

 

「名を【サラマンドル・ヒュージゴーレム】。サラマンドル鉱石でできたゴーレムで……その、とにかくデカいのです」

「大きい……それが、スピードとどのような関係が?」

 

ゴーレムならスピードのある敵とは思えない。

しかし、レッドが必要としたのはスピードだ。当然、そこには理由があるはずである。

 

「それを説明するには、私の戦闘スタイルの話をする必要がありますね」

「戦闘スタイル……それは、今までのようなものではなく?」

「はい。つまり、私は、【紅蓮術士】ではありますが魔法使いではない、ということです」

 

話しながら歩いていたその先で、地面がぼこり、と割れ下からモンスターが沸く。

出てきたのは地竜種のモンスターであり、頑丈なモンスターだ。

 

「これは今までのようにはいきませんね……。ちょうどいいです、私の真の力を見せて差し上げましょう! キノさん、牽制して近寄らせないでください!」

 

テンションの上がりだしたレッドは、手術前の外科医のように両手を目の前に上げる。

その手につけられた右手に白、左手に黒の手袋……これが彼女のエンブリオ、【二物一体 ジキル・ハイド】。

 

「まずは左手に、【レッド爆弾・レベル2】!」

 

アイテムボックスから取り出したのは、彼女が自作した……爆弾。

筒状の爆弾を左手に持ち、続いて右手に視線を向けた。

 

「そして右手に、《クリムゾン・スフィア》!」

 

スキルを宣言したというのに、その手から炎の球は放たれない。

彼女の手のひらの上に停止し、燃えあがっている。

 

「レッドさん、早く……!」

「ではいきますよ! 《表の姿に裏の顔》!」

 

彼女がスキルを宣言すると、両手にあったものが消え、代わりにジキル・ハイドが輝きを放つ。

そのままレッドは両手を握り合わせた。

 

「キノさん、下がってください!」

 

モンスターを抑えていたキノが後ろに飛んで下がったのを見て、レッドはモンスターに向かって大きく右手を振った。

彼女の右手から放たれたのは、一見ただの《クリムゾン・スフィア》だったが……モンスターの方まで飛んで行った次の瞬間。

それまでとは桁違いの威力で、モンスターたちを巻き込んだ爆発を起こした。

 

大きな音と爆風、そして衝撃がキノ達を襲う。

落ちついたところでキノが目を開くと、そこにはもうモンスターはいなかった。

あるのはただ、焦げた地面といった爆発の跡。

 

「……これは」

 

【紅蓮術士】のスキルだけではない、その火力の大きさに言葉を失うキノ。

これがレッドのいう"本当の戦闘スタイル"か、とレッドの方を振り向こうとして……

 

「あぁ……イイっ! 全てが吹き飛ぶ轟音、ズシンと響くこの衝撃っ! やはり爆発こそ至高、爆発こそ我が道! リアルの気苦労が全部吹き飛ぶようなこの解放感、たまらないっ……」

 

実に晴れ晴れとした笑顔を浮かべるレッドの姿に、キノの表情は硬直した。

固まったキノに気づくことなく、レッドは目を輝かせる。

 

「美しい……芸術は爆発だ、という言葉がありますがきっとそれは半分正しく、半分は間違っている! 芸術は爆発です、しかし、爆発こそ芸術なのです!」

 

ちょっと何を言っているのかわからない。

 

真っ白になったキノの思考が必死に正常に戻ろうとしていたところで、ようやくレッド自身も正気に戻る。

 

「ふわ、ふわああああああああ!? い、今のは忘れてください!」

「ア、ハイ」

 

 

 

 

 

顔を真っ赤にしてMP回復用のポーションを飲むレッドの横で、キノはなんともしがたい表情を浮かべて共に歩き、ついに目的のモンスター、【サラマンドル・ヒュージゴーレム】の元へたどり着く。

 

一端陰に隠れて作戦、そしてレッドの作戦について話を進めていく。

ようやく話ができて確認できたのだが、レッドの戦闘スタイルはやはり「火属性魔法」ではなく「エンブリオを用いた爆発」がメインなのだという。

レッドのエンブリオの固有スキル、《表の姿に裏の顔》は合成のスキル。

右手に持った物、あるいはセットしたスキルをベースとして左手に持った物、またはスキルの能力を合成するものだと言う。

彼女のジキル・ハイドは現在第4形態。当初は物と物、スキルとスキルしか組み合わせることができなかったらしく、せいぜいスキルを組み合わせて少し強くする、程度しか戦闘では利用できなかったらしい。

それが上級エンブリオに進化することで「物とスキル」という異なった性質のものすら組み合わせられるようになり、一気に幅が広がったという。

 

「それで、その。私は名前の通りもとは火属性魔法をメインにしていくつもりだったのですが、エンブリオとのシナジーを探った結果”爆弾”という答えに行き当たりまして……」

 

爆発による爽快感に、すっかりとりこになったという。

もしかしたらリアルでは何かため込んでいるのかもしれない。

 

「と、とにかくですね。先ほどは《クリムゾン・スフィア》の方をベースにしたので爆発力のあるスキル、となったのですが……逆も可能でして」

「つまり、強力な火力のある、爆弾?」

「はい。《魔法威力拡大》や《魔法多重発動》といった魔法拡張スキルを併用した《クリムゾン・スフィア》を私特性の爆弾に合成したものがこちらになります」

 

アイテムボックスから取り出したのは見ただけで何かしら力が込められているのがわかる真っ赤な爆弾。

 

「しかし、これとスピードと何の関係が?」

「そのですね…‥実は一度、私は同様の物を作って試したことがあるのです。スキルベースに爆弾を合成したものや威力の低い爆弾では倒し切れず」

 

彼女もいろいろ試してみたらしい。

しかし、爆弾をそもそも相手に放り投げる前に襲われて自分が死んでしまったり、今回のような強力な爆弾を用いたところ爆発に巻き込まれて自分も死んだり…‥とまあ散々な結果だったらしい。

 

「私の速度ではゴーレムの近くに設置して爆発に巻き込まれないよう逃げる、ということができないのです。あまり離れすぎたところからだと起爆ができませんし……」

 

そこで、速度のあるキノの出番だ。

レッドが気を引いているうちにゴーレムの側に爆弾を置き、起爆してから全力で逃走。これがレッドの考えたプランであった。

 

「起爆は手に持った状態でなければできません。私もいろいろ調整したのですがリモコンのような遠隔起爆だとどうしても威力がガクッと下がりますし、なによりそんな複雑なアイテムとはエンブリオで合成できないんです。なんでもかんでも合成できる、というわけでもないんです……」

 

正確には、MPの消費が莫大なものとなってとても足りないらしい。

レッドは誤爆しないよう、すでにスキルと合成済みの爆弾を一度アイテムボックスにしまうと使い方の説明を始める。

 

「使うときには、手に持って”起動(オン)”と宣言してください。三秒後に爆発するようになってます」

「……わかりました。どうにかやってみます」

「ご武運を」

 

その後。

予定通りレッドがゴーレムに対して遠距離からヘイトをとる程度に攻撃を打ち込んでいる間に、キノがヘルメスを用いて近づいた。

起動(オン)!」と叫んだキノは言うが早いか持っていた爆弾をゴーレムに放り投げると全力でその場から離脱し……

 

三秒後、キノが爆風で体が浮くほどの爆発が【サラマンドル・ヒュージゴーレム】へと炸裂した。

 

 

 

 

 

 

「あー……肝が冷えました」

「ありがとうございました! これで、ようやくトップクラスの【サラマンドル鉱石】が手に入りました……!」

 

危うく爆死するところだった、とキノがぐったりしている横で、レッドは満面の笑みを浮かべていた。

 

「それにしても、すごい火力でしたねあの爆弾……。レッドさんの爆弾って、エンブリオの能力とはいえ相当強力なんですね」

「わかりますか! わかりますか!?」

 

目をキラキラさせて顔を近づけるレッド。

理解してくれるのはとても嬉しいです! とレッドは追加報酬もかねて20個ほどの自作爆弾を取り出してキノへと渡す。もちろん、《クリムゾン・スフィア》と合成済みだ。

ゴーレムに使ったほどの質ではなく、合成されたクリムゾン・スフィアも強化されていない程度のものだが、それでも十分な爆発力はあるだろう。

キノもそのことはわかっていたため、危険物であることはともかく、たくさん渡された強力なアイテムに目を白黒させた。

 

「こんなにたくさん、その、いいんですか?」

「いいんですいいんです。あ、でもアイテムボックスから出していると3分もすれば合成効果が消えてしまうので、アイテムボックスから出すときや使うときは気をつけてくださいね」

「いいものをもらいました……ありがとうございます」

「いーえいえ、なんのなんの!」

 

キノが全てアイテムボックスに入れた横で、自分が作ったものを称賛してもらい有頂天になっているレッドは渡さなかった分の爆弾を持ってキノに伝える。

……すでに教えたことも忘れて、その、使い方を。

 

「使うときは、こうやって手に持って”起動(オン)”、と……」

 

爆弾は所有者の言葉に従い、熱をもって光り始める。

その威力は、近くにいるプレイヤー二人を吹き飛ばすぐらい造作もない。

 

「あ」

「あ」

 

 

 

 

 

 

 

 

【致死ダメージ】

 

【【レッド・ウィザード】が死亡しました】

【【キノ】が死亡しました】

 

【パーティ全滅】

【蘇生可能時間経過】

【デスペナルティ:ログイン制限24h】




今回登場の<マスター>

名前(アバター):レッド・ウィザード
名前(リアル):宮本 恵
年齢:14
メインジョブ:【紅蓮術士】(魔術師系統上級職)
エンブリオ:【二物一体 ジキル・ハイド】
キャラ紹介:
レジェンダリア所属の<マスター>。
もともと火属性魔法の魔法使いを考えていたが、エンブリオとのシナジーを探った結果爆弾による爆発にたどり着いた。
爆発の爽快感のとりこになり、もはや爆発狂として一部では割と有名。
仮定の話ではあるが、もし彼女が<超級>になった場合、”人間爆弾”らと並んで環境担当AIに心労を与えることは必至。
リアルではまじめな学級委員系であり、リアルでのストレスがデンドロにおいて爆発ヒャッハーすることによって解消されている模様。
その二面性が「ジキル博士とハイド氏」をモチーフにしたエンブリオを目覚めさせたのかもしれない。
原作でいうとバババ先輩にかなり似ている。

余談:
クラスにいる引っ込み思案な子が実は後のアルター王国決闘ランキング四位になるプレイヤーなのだが、お互い相手がデンドロをしていることを知らない。



次回予定「お茶会の話」
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