路傍の石のような   作:破図弄

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曹操の下に使えることになった磊。

すでに真名を呼ぶことを許されている。

そんな彼は、戦乱を乗り切るのか。


第四話 転がる石

今日も穏やかな天気だ。

 

荒れた田畑を耕している。

掘り返すと土の香りがする。

 

懐かしい香りだった。

両親と過ごした日々。

当然のように空腹で、虫とか食べて紛らしていた。

時々特別なことがあったら、その日の晩だけは腹が満たされた。

それが何だったか、覚えていない。

そもそも理解していなかった。

 

「なんだったんだろうな」

≪おーい、(ライ)ー、飯にしようや≫

「はーい」

班長に呼ばれる。

楽しみの時間到来。

粟を炒り、挽いて、お湯を注いで粥にする。

炊くこともできるけど、男所帯じゃ手間のかからない方を選んでしまう。

炊くとしたら前の日から水につけておかないと味がガッカリになるからだ。

 

「これだけが楽しみだな」

班長がガハハと笑う。

もういくつもの村を開拓(ひら)いてきた人だ。

兵士としても何回か討伐隊に参加しているらしい。

 

ほかのみんなも班長とはともに行動してきたそうだ。

 

この班は、他の班に先行して耕す者のいなくなった荒れた田畑を先行して耕し、周囲の状況を把握するのが仕事だった。

整地がひと段落して、安全が確認されると本隊が常駐するようになる。

やがて農民が移住し、村をつくることになる。

 

卓は、この班で村づくりの基礎を学ぶのが仕事だった。

 

腹が減ってはいくさはできぬ。

全員で粟粥をかき込んでいく。

「おっと、そうだ、そうだ。

 磊、脚毟るの手伝え」

先輩の一人が思い出したように卓に何かを頼む。

「いいか、逃がすんじゃねえぞ」

「は、はい」

先輩は腰に手を回した後、何かを握り、卓に向かって拳を差し出す。

卓は先輩から何かを受け取る。

両手の平で玉を作るとその中でぴょこぴょこ動く。

「やったー、おかずができましたね」

卓は手の中のぴょこぴょこを握り、確認する。

予想通り蝗(種類はバッタ)だった。

脚と翅を毟って、たき火の灰に放り込む。

気が付いた仲間が同じように手伝い始めた。

 

灰に放り込むと焦げずに炙られる。

火が通ると尻尾がヒュルヒュルと伸びていく。

 

「そろそろだな」

毟っては食べ毟っては食べを各々繰り返す。

塩は貴重なのでほとんど使わずに食事は作られる。

蝗は薄味だが塩気を感じ、歯ごたえもあり、良いおかずになった。

 

「あれ?」

「どうした?」

卓が何かに気が付いた。

先輩が何気なく聞く。

 

「こいつら、色黒くないですか?」

「そう言われてみれば・・・・そういう種類だろ」

 

卓は親方から聞いた話を思い出した。

<蝗が黒くなると蝗害が起きる>

親方が訪れたとある村の古老が話をしてくれたそうだ。

その後、意識して過去に蝗害に見舞われた村で聞いてみると共通していた。

 

<いいか、開、蝗は追い払ってもダメだ。

 根絶やしにしないといけない>

「根絶やしか」

「どうした、磊。

 お前にしたら、何やら物騒だな」

箸の止まった卓に班長が気が付いていた。

「班長、おれ、行商の親方から聞いた話なんですが・・・・」

卓は、蝗害の予兆について、聞かされたことを話した。

 

「うーん、かといって、俺の判断じゃ、それに仕事を遅らせるわけにもなぁ」

班長は悩んだ。

開拓を任されているとはいえ、下級兵士でしかない。

曹操軍においては、何の権限も持たない階級であり、命令に無いことはできない。

かといって、蝗害は国を基盤を揺るがす大災害。

未然に防げるなら、しない手はなかった。

 

≪卓ー、キリキリ働いてるかー≫

声のする方向には、見知った3人とその護衛のたちが馬に乗ってやってくる姿が見えた。




蝗害、たびたび王朝を滅亡に導く大災害。

その予兆。
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