路傍の石のような   作:破図弄

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第六話 ひもじい石

「この件、あなたの考え通りにやってみせなさい。

 失敗した時は、わたしが処罰するから」

「お嬢さまぁ、いきなり打ち叩きの刑は」

「あら、あなた、覚悟もなしに献策しようと思ったのかしら?」

「それでしたら、お嬢さまが話を聞きたいとおっしゃっただけで、俺は」

「春蘭、開の頸を刎ねなさい」

「は、はい」

やりとりを眺めていた春蘭は驚いたが華琳に逆らわなかった。

 

「ちょ、華琳様、なんでいきなり処刑されるんですか!?

 そんな無茶、おじさんが許しませんよ」

「プっ、冗談よ。

 春蘭もごめんなさい。

 開の打ち首は冗談よ」

華琳は上機嫌になっていた。

 

「開、処罰はしないから、考えを聞きたいわ」

 

 = = = = =

 

≪キャッ、キャッ≫

男の子たちが、バッタを追いかけはしゃいでいた。

それを眺める華琳と卓。

 

「これで、蝗害は回避できるの?」

「正直に言えば、わかりません」

華琳は大鎌の刃を卓の頸に掛けた。

 

「あら、わたしがなにもしないと思っているのかしら」

落ち着き払っている卓に華琳は話しかけた。

 

「いえ、お嬢さまの近くに居て良いのは有能でなければいけません。

 俺は、いつでも死ぬつもり。

 操お嬢さまの鎌の汚れになれるなら、かなりいい人生だったと思っています」

卓ははしゃぐ男の子たちを眺めながら言った。

 

「春蘭!」

「はっ」

華琳は控えていた春蘭に声を掛けた。

 

「春蘭、今から、この男をボコボコにしなさい!」

「へっ? あのー、華琳様、開は何かしましたか?」

春蘭は華琳が不機嫌になったことが理解できないでいた。

 

 = = = = =

 

男の子を協力を得て、数日でバッタを捕獲できた。

華琳が領内に子供だけでバッタ捕獲の触れを出した。

報酬はバッタと粟。

子供は労働力してはまだ使えない。

安全に収入を得られるとなるとほぼ領民全員が参加させた。

 

城内から出発し、各邑から合流するとかなりの子供が集まった。

ただし、バッタ集めということで女の子の参加はかなり少なかった。

華琳はそれを見越していた。

 

女の子には勉学の場を設けた。

英傑はほとんど女であるこの世界。

華琳の人材コレクションの青田刈りの条件は整った。

 

捕獲の対象地域は卓のいたところだけに限らなかった。

領内全域を検分し、黒くなりかけたバッタのいる地域が選ばれた。

 

捕獲されたバッタは三日三晩かかって炒られ、食料となった。

 

成果は予想以上だった。

子供にとって、作業自体が遊びのようなものだった。

それだから、しっかり遊んで、きちんと食事ができて、褒められる。

成果が上がらないわけがなかった。

 

人材発掘のほうも上々だった。

十数人ほど書生として華琳に仕えないかと親に相談をした。

華琳が他の土地を治めることになれば、それに同行することになるため、強制はしなかった。

華琳は母親を大切にすることを隠さなかった。

肉親の絆は彼女にとって生きる意味の一つだったから。

 

 = = = = =

 

「開、希望する報酬を言いなさい」

「はい?

 報酬って、報酬のことですよね」

「あなた、わたしを揶揄うなら、頸を刎ねるわよ」

今一つ意味が判らない卓に冗談半分に怖いことをいう華琳だった。

 

「有望な人材が集まったから」

「それって、俺の働きじゃないです。

 華琳様ご自身の」

「きっかけはあなたの献策よ」

「それは蝗害の予防だったわけでして、成果は解りませんし」

華琳は会話を楽しみながら続けるも卓は頑なに否定した。

 

「わかったわ。

 開、身の回りの世話をして欲しい女を言いなさい」

「ちょ、なんですかそれ。

 俺、一言も言ってませんよね」

「男の考えなんかそれくらいじゃないこと」

「まあ、否定しきれませんけど。

 でも、俺は身近にいて欲しい(ひと)はひとりくらいなので」

「あら、その幸せを約束されたような幸運の持ち主は誰なのかしら」

卓は華琳の冷え切った視線に曝されていることを実感した。

 

「その方に俺なんかが想いを寄せること自体、既に処罰ものです。

 お似合いの素敵な男性が将来、いえ既にいらっしゃると思います」

「開、あなたはその相手を見たことあるのかしら?」

「いえ、ございません。

 しばらくはお屋敷を離れておりますので」

「だったら、どうしてその結論になったのかしら?」

「なぜでしょうか。

 その方はいつの間にか母のような優しさまでお持ちになっていて。

 うまく言葉にできません」

卓は、言葉に悩んでいた。

憶えている限り初恋であり、身分の違いを克服できようもなかったからだった。

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