佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである   作:鮭愊毘

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第七話 メモリーの謎

「あー腹減った」

 

「お前人の家入って一言目がそれなの?」

 

スタークを退けた後、俺たちは葛城さんの母の家にお邪魔している。今日はここで夜をしのぐ。

 

「……あなたたちはあの事件の真相を求めてここへやってきたのね?」

 

「はい。葛城さんの日誌から、『全てを母に託す』という文章が見つかりました。何か心当たりは」

 

「…………もしかして」

 

「! 何かあるんですか?」

 

「ええ。ある時、突然巧がここに帰ってきた。やけに大きいアタッシュケースを持って。

そして、USBメモリとそのケースを渡された」

 

「どこにあるんですか?」

 

「……難波重工総合科学研究所」

 

「でもそこはもう……」

 

「廃墟と化している。そのどこか」

 

「わかりました。……おい万丈、さっきから何腹抱えてんだよ。トイレ?」

 

「ちげぇよ。腹減ってんだよ」

 

「おなか、すいてるの?」

 

「ああ」

 

こう言って葛城さんの母は卵焼きを出してきた。

 

「いっただき~!

 

甘!甘すぎだろこれ」

 

「バカ!お前にはデリカシーってもんがねぇのか!……いただきます」

 

卵焼きを口に入れる。

確かに甘い。でもそれ以上に……

 

「旨……!」

 

「無理しなくていいのよ?」

 

おふくろの味……というものだろうか。

懐かしい。美味しい。この甘さが好きだったんだ

 

もう一口。

やっぱりだ。俺はこれを以前にも食ったことがある。

 

懐かしいなぁ……

 

「な、何泣いてんだよ気持ち悪い」

 

「え?」

 

俺は知らないうちに涙を流していたようだ

 

 

―――――――――――

 

 

「ほんとにこんなんで大丈夫なのか―――

 

甘い!お前のゲップ甘い!」

 

翌日、俺たちは葛城さんの母の車で香川へ戻ることに。

所持金が尽きたこと、バイクだとガソリンが足りても万丈が万丈だとばれてしまう事が理由に挙げられる。

 

「……あれ?止まった?」

 

「赤信号なんじゃないの?」

 

「……いや違う!これは――――」

 

 

「キャアアアァァァァ!!」

 

 

「葛城さん!」

 

「くそっ!開かねぇ!」

 

「こうなったら……」

 

「おい!何か腹に当たってる!何だこれ!?」

 

「それ俺のドライバーのレバー。回すからスペース開けて」

 

「おいおいおいまさか……!」

 

「変身!」

 

 

〔ぶっ飛びモノトーン!ロケットパンダ!Yeah!〕

 

ロケットパンダフォームで強引に外に出ることに成功。

 

「……いない」

 

「チッ!」

 

 

 

――――――――――――――

 

 

「ここは……?」

 

「お気づきになりましたか。私は氷室幻徳。葛城君の上司に当たっていた者です」

 

「……」

 

「ここは、ファウストのアジトです。単刀直入に言いましょう。息子さんの研究データをこちらに渡していただきたい。渡していただけたら……この手紙を差し上げましょう」

 

「…………3405。コインロッカー」

 

「わかりました。どうぞ」

 

「……何よこれ、白紙じゃない!」

 

「息子さんが、母に感謝する人間だとお思いで?

彼は残忍で、冷酷で、屑だ」

 

「巧はそんな子じゃな―――」

 

「話は終わりだ。ネビュラガスを投与してお帰り頂こう」

 

「――――嫌!離して!!」

 

 

―――――――――――――――

 

 

何とかnascitaに戻ることができた。しかし葛城さんがまだ……

 

「……」

 

「何を考えても無駄だ戦兎。……何だよそのボトル」

 

俺がいじっていた薄紫のボトルを万丈が指摘する。

 

「勇者だよ」

 

「?」

 

「ドラゴンボトルが出来た後、俺ちょっと出かけただろ」

 

「ああ。女がどうこう……」

 

「え?何?お前勇者といえば……お役目がどうこうとかいう女の子か!

お前勇者と付き合ってんのか?!やるぅー!」

 

「……もはや生贄だよ」

 

「え?」

 

「でも、それも終わる」

 

そして、ボトルの浄化も終わったようだ。

 

「消防車?」

 

ラベルは『H/S』。やっぱりか。

 

「もう出かけるのか?」

 

「ああ」

 

「万丈!忘れ物!」

 

「おお、サンキュー……えぇっ!?」

 

マスターの言う万丈の忘れ物。それは変装用の服だった。

 

 

―――――――――――

 

 

「あー、今日も暑いっすね~!」

 

万丈は工事現場の人の服を着て本職の人に混じっていた

 

「こんなやついたか?」

 

「さぁ……」

 

「!」

 

万丈の目にスマッシュが映る。

 

「逃げろ!」

 

「お前さんは!?」

 

「いいから行け!――――いってぇ……」

 

スマッシュが投げたパイプに頭をぶつける万丈。

 

「あー言わんこっちゃない!」

 

俺はホークガトリンガーでけん制。

 

「……あのスマッシュ前に見たことあるな。俺がやる」

 

確かに、色は違えど以前あったことのあるスマッシュだった。

 

 

〔HARINEZUMI!〕

 

SYOUBOUSYA(消防車)!〕

 

〔BESTMATCH!〕

 

〔Are you ready?〕

 

 

「変身!」

 

 

〔レスキュー剣山!ファイアーヘッジホッグ!Yeah!〕

 

 

「万丈!しゃがめ!」

 

左腕の梯子消防車のはしごをモチーフにした放水銃 マルチデリュージガン から水を発射する。

 

「冷たっ!」

 

そして右腕のハリネズミの針を伸ばしてパンチ。

万丈からスマッシュを離すと火炎放射を開始する。

 

「熱っ!?」

 

 

「勝利の法則は決まった!」

 

〔READY GO!〕

〔VOLTEC FINISH!――〕

 

マルチデリュージガンを伸ばしスマッシュに内部から水を飲ませ膨らませる。

そしてスマッシュの真上までジャンプし、真下に落下しながら伸ばした針で刺す。

 

〔――YEAH!〕

 

「……こいつも中々のエグさだな」

 

変身を解除し、スマッシュの成分を回収。

スマッシュにされていたのは葛城さんだった。

 

 

――――――――――――――――

 

 

「コインロッカー3405番……ここか」

 

葛城の母から受け取った情報の元へたどり着いた幻徳。しかし、

 

そこにあったのは、『残念だけど、あなたは信用できない』と書かれた紙一枚だけであった。

 

「まんまとはめられたか」

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

「おい、ここで合ってんのか?」

 

「ああ。ここ掘れワンワン」

 

「犬じゃねぇよ」

 

難波重工へたどり着いた俺たち。

今は万丈にスコップで地面を掘ってほらっている。

葛城さんからは『難波重工にある』しか言われていない。

だけど、俺には正確な位置がわかった気がした。

 

 

「ほんとに大丈夫か?……おっ」

 

スコップから何か固いものに当たった音がする。

 

「これだ!」

 

万丈が掘ってくれた穴から大きいアタッシュケースと小さな箱に入ったUSBメモリを回収する。

 

「それが目的のブツか。早く帰ろうぜ」

 

 

 

 

「そんなところにあったのか。俺……葛城巧の隠しものってのは」

 

 

 

「くそっ!返せこの野郎!」

 

突如現れたスタークにメモリを奪われてしまう。

 

「そのアタッシュケースも頂こうか」

 

 

〔TAKA!〕

〔GATLING!〕

〔BESTMATCH!〕

 

〔Are you ready?〕

 

 

「変身!」

 

 

〔ホークガトリング!Yeah!〕

 

 

「そのメモリを返せ!」

 

スタークに銃口を向ける。

だが、それ以上の殺気を感じ、そちらに銃口を向けなおす

 

「ビルド。お前の相手は私だ」

 

「ナイトローグ……」

 

こちらにはアタッシュケースがある。

長期戦は困難だ

 

 

〔READY GO!〕

 

左足から鷹の爪が展開し、翼も大型化する。

 

〔VOLTEC FINISH! YEAH!〕

 

翼で宙に舞い、左足で切り裂くような蹴りをかます。

 

 

「……やるじゃないか」

 

 

 

 

「オラぁ!」

 

「フハハハハ……!ハザードレベル2.5!生身のくせにやるじゃないか」

 

「舐めんじゃねぇぇぇ!!」

 

「ハザードレベル2.7!」

 

「俺だって……やる時はやるんだよ!」

 

「2.9!」

 

「ぅおりゃァァァァ!!」

 

「んッ!? ハザードレベル3.0!

 

ついに覚醒したか!万丈ォ!!

 

お前の成長を見込んで、こいつはくれてやる。大切にしろよ」

 

ブラッドスタークが龍我に自らが奪ったUSBメモリを指で弾く。

 

「えっ!?」

 

 

「スタークゥゥゥ!!」

 

激昂したナイトローグがスタークに迫る。

 

「おいおいおい!もうお前さんも年なんだからそんなに怒るなって!血管切れるぞ!」

 

 

「ローグとスタークが戦ってる……?よくわからんが、撤退は今しかない!」

 

 

〔ロケットパンダ!Yeah!〕

 

 

「万丈!しっかり捕まってろよ!」

 

「お、おい!俺生身!そういうのは…………ああああ!!」

 

右腕で万丈を捕らえ、急上昇。撤退する。

 

 

 

 

 

 

 

「貴様……どういうつもりだ」

 

ナイトローグがスタークに銃口を向ける。

 

「まぁまぁ、深呼吸でもしろよ。お前がほしいのはアレじゃない。アレに入ってるデータで作ったモノだろ?

桐生戦兎ならそれが作れる。万丈龍我ならそれが使える」

 

「なぜ言い切れる?」

 

「桐生戦兎は俺の……いや、単純に機械いじりが好きそうなヤツだと思ったからだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは、あなたが持ってて」

 

「……いいんですか?」

 

撤退に成功した俺たちは葛城さんとnascitaに帰り、メモリとアタッシュケースを見せる。

 

「あなたなら、それを悪いようには使わないだろうって信じてるから」

 

 

 

――――――――――

 

 

「これで、葛城さんの謎が……」

 

俺は自室に行くとメモリをパソコンに刺そうとする。

 

「いいのか?お前の知りたくないものかもしれねぇぞ」

 

「……俺の記憶の空白は埋まった。恐れるものは何もない」

 

メモリを挿す。

すると、ディスプレイに

 

 

PROJECT BUILD

 

 

REBOOT OF LEGEND KAMENRIDER

 

 

という画面が表示された。

 

 


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