佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである   作:鮭愊毘

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第九話 戦慄のニューイヤー

「新年、あけましておめでとう。これからもスマッシュ退治に……」

 

「「あぁ~、最悪だ」」

 

「退治に……」

 

「「……」」

 

「退治……」

 

「あ?るせぇな黙ってろよ」

 

「新年からあのまずいコーヒー飲みたくねぇんだよ」

 

「ど、どうしたんだ二人とも?」

 

「……299年に見た最後の顔がスタークだったなんて」

 

「あのコブラ野郎……」

 

「まぁそうイライラすんなよ。ほら、お年玉替わりのプレゼントだ。戦兎にはこれを」

 

こう言ってマスターは俺の目の前に赤い鳥とロボットのデザインが入ったボトル二本を置き、

 

「万丈にはこれを」

 

万丈にはある紙を渡した。

 

「何、これ」

 

「フェニックスとロボットだ。手に入れるの大変だったんだぞ~?」

 

「で、この"スクラッシュ"ってのは?」

 

「そのうちわかるさ」

 

「はぁ?」

 

「じゃ、俺バイト行ってくるから。出かける時は鍵してくれよ!」

 

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、正直、最近のマスター怪しくね?」

 

「どこが」

 

「ボトル持ってたとこだよ。ファウストもボトル使ってただろ?つまり……」

 

「マスターが?ないない」

 

「……考えすぎで済んでほしいけど」

 

俺はこう言い残して職場へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「桐生戦兎さんですか?」

 

「はい」

 

職場につくと、普段話しかけてこない同僚が話しかけてきた。

 

「とても申しづらいのですが…………

研究所がファウストの襲撃を受けたと報告が」

 

「えっ?!」

 

あそこにはパンドラボックスが保管されている。

 

「すぐに行きます!」

 

「危険です!」

 

「大丈夫!友人でそういうの慣れてるやついるんで」

 

 

――――――――――――

 

 

「万丈!万丈!」

 

『うるせぇな聞こえてるよ』

 

「研究所の制服、どこにあるかわかるか?」

 

『ああ、お前が着る予定だったやつだろ?』

 

「そう!それ着て俺の指定する場所に来い!」

 

『は?』

 

「研究所がファウストの襲撃を受けた!」

 

『……そういうことか。任せろ』

 

通話で今の状況を伝える。

 

 

「桐生さん、本当にいくつもりですか?」

 

「ああ」

 

「……そうですか。行かせませんよ」

 

「何だって?」

 

すると、その同僚は手に持ったボトルの成分を自分にふりかけ、スマッシュへと変貌する。

 

「くそっ!」

 

 

〔TAKA!〕

〔GATLING!〕

〔BESTMATCH!〕

 

「変身!」

 

〔ホークガトリング!Yeah!〕

 

飛行するスマッシュを追跡する。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「お疲れ様でーす」

 

一方、龍我は研究所へ到着。

研究員の格好をし潜入を試みていた。

 

「すいません。危険ですので……」

 

「あの、忘れ物しちゃって……」

 

「危険です」

 

「じゃあ、ちょっとこっちに来てくれませんか?ホント五分でいいんで。はい」

 

警備員を人気のない場所へ誘い、その服をはぎ取る。

 

「よし」

 

 

――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

〔FIFTY!〕

 

「新年早々こんな破目に陥るなんてな!」

 

空中戦闘が不慣れなせいでとても戦える状況ではない。

 

しかし、地上に広い空き地があったことを見逃さなかった。

 

〔READY GO!〕

〔VOLTEC FINISH!YEAH!〕

 

「―――!」

 

スマッシュをキックでそこへ落とし、地上で決着をつける。

 

 

 

 

 

「さあ、実験を始めようか」

 

〔LION!〕

〔SOJIKI!〕

〔BESTMATCH!〕

 

〔Are you ready?〕

 

「ビルドアップ!」

 

 

〔たてがみサイクロン!ライオンクリーナー!Yeah!〕

 

 

新しいベストマッチ ライオンクリーナーフォームで近接戦を挑……みたいところだがここはあくまで町の一部。騒ぎを聞きつけられたら厄介だ。

 

〔READY GO!〕

〔VOLTEC FINISH! YEAH!〕

 

左腕の掃除機でスマッシュの動きを抑制し、右手からライオン状のエネルギー弾でとどめを刺す。

 

「うぅ……」

 

「何が目的だ」

 

「これで……私の役目は終わった」

 

「何?」

 

「私の役目は、君を……仮面ライダーを研究所から離すこと!」

 

「おい!」

 

ボトルをもう一本だし、自分に振りかけようとする。

 

「止せ!」

 

「見事引っかかってくれた君に教えてあげよう。葛城巧は、君のそばにいる!」

 

「それはどういう―――」

 

「――――」

 

その男は、そう言い残し消滅した。

 

「葛城さんが……俺の近くに…………?」

 

 

 

―――――――――――――

 

 

 

「お勤めご苦労さんっと」

 

「おい待てよ!」

 

研究所に突入し、ブラッドスタークの元へたどり着いた龍我。

スタークの腕にはパンドラボックスが抱えられていた

 

「? ……脱獄犯が政府以上の権力を持つ組織の施設に乗り込んでくるとは」

 

「そういうお前らこそ、どうしてここを襲撃したんだ!」

 

「ファウストは大赦が作った。それは確かだ。でもな、仲良くしてるとは言ってない。あんな老害と一緒にするなよ」

 

「へっ、そうかよ。じゃあ思い切り暴れられるぜ!」

 

「待て、お前の相手はこいつだ」

 

龍我の前に研究員の一人が立ちふさがり、スタークのデビルスチームでスマッシュに変化する。

 

「一々邪魔すんじゃねェェェ!!」

 

 

 

――――――――――――――

 

 

 

「どうした?ルートが計画と違うじゃないか」

 

「……道に迷ったんだよ」

 

屋上に立っているスタークと幻徳。

 

だが、幻徳の手にはバットフルボトルが握られていた。

 

〔BAT〕

 

「そんなウソが通じると思うなよ。蒸血」

 

〔MIST……MATCH!〕

〔BAT……BA BA BAT! FIRE!〕

 

「ありゃま。ばれちったか。で、逆らったらどうするつもりだ?」

 

「……」

 

ナイトローグがスタークに斬りかかる。

 

「相変わらず暴力的だねぇ……」

 

「貴様……」

 

「おいおい、考えてもみろよ。俺は会社でいう派遣社員みたいなもんだ。それにこんな重役を任せるほうがどうかしてるんじゃないか?」

 

〔ICE STEAM!〕

 

「……聞く耳持てよ」

 

戦闘を続ける二人。

そこに一人の男がぼろぼろの状態で現れる。

 

「間に合った」

 

万丈龍我だ。

 

「スマッシュはどうした!」

 

「ぶっ倒した!成分は抜き取ってねぇけどな!」

 

「バカな……、生身でスマッシュを……?」

 

「ハハハハ!大した男だ!」

 

「さあ、第二ラウンド、始めようかァ!」

 

 

 

 

 

「そんなダメージで俺に勝つ気か?」

 

「かはっ……! まだまだ、これから―――」

 

と、その時、空から銃弾が降り注ぎ、スタークが後退する。

 

「クライマックスには間に合ったようだな!」

 

「遅ぇんだよ!」

 

「贅沢言うな! ほら、立てよ」

 

「……」

 

「あとは任せ―――」

 

「なんて、言わせるかよ」

 

「勝手にしろ」

 

 

 

 

 

 

 

〔HARINEZUMI!〕

〔SYOUBOUSYA!〕

〔BESTMATCH!〕

 

〔Are you ready?〕

 

〔ファイアーヘッジホッグ!Yeah!〕

 

万丈はスターク、俺はローグを攻める。

右腕の針を飛ばし、壁際まで追い込み。

さらに左腕のラダーを伸ばし完全に動きを止め、

必殺技を放とうとするが、

 

 

「覚醒したとはいえ、生身であることに変わりはない!」

 

万丈がスタークに押されている。

 

「万丈!」

 

ラダーをローグから離し、スタークへの火炎放射で万丈から遠ざける。

 

その隙にローグが接近戦を仕掛けてくる。

 

 

〔STEAM SHOT! COBRA!〕

 

 

「ぐあぁ!」

 

スタークがローグごと俺をふきとばし、変身が解除されてしまった。

 

「じゃあな!ボックスはもらってくぜ」

 

「スターク……!」

 

飛び降りるスタークを眺めながら苛立ちを隠せずにいるローグ。

しかしそいつはすぐに別の場所に視線を向ける。

変身解除の衝撃で飛び散った俺のボトルだ。

 

「させるか!」

 

奪わせるかとローグにしがみつくが、すぐに払われてしまう。

生身では無理があった。

 

 

「ボトルは全て回収させてもらう」

 

忍者、コミック、ハリネズミ……

次々と盗られていくが、俺には何も出来ない。

 

 

 

 

「……くそっ」

 

戦兎のボトルが奪われていく。

俺もあいつもボロボロ。

何もすることが出来ない自分を恨みたい。

 

こんな時でも、お前はあんなこと思ってるのか?

 

 

 

 

 

 

 

『どうだ、万丈。そのドラゴンとの仲は』

 

『良くはないな』

 

『そっか。そいつはな、戦兎がお前のために作ったものなんだぞ?』

 

『監視役って言ってたな』

 

『そんな事言ってたのかあいつは……。間違ってはないけどさ。

本当は、「万丈が正しい道へ進めるように」って思いで作ったんだよ』

 

『え?』

 

『「俺がしなきゃいけないことは、万丈の冤罪を晴らすことだけじゃない。あいつを正しい道に進ませてやらないと」だってさ』

 

『何だよ……それ』

 

『それが、香澄さんを死なせてしまった自分の贖罪だって』

 

『……』

 

 

 

 

 

 

あいつだって……被害者じゃねぇか……!

あいつだって、モルモットにされて……かつての仲間と別れさせられて……!

 

「ふざけんな……」

 

クローズドラゴンが寄ってくる。

相変わらずうるさい鳴き声だが、『ボトルをよこせ』って言ってるのか?

 

「これを……頼む!」

 

ドラゴンボトルを落とす。

ドラゴンはそれを銜え、自分の背中に挿す。

 

 

〔CROSS-Z FLAME!〕

 

 

 

 

 

 

 

クローズドラゴンが青い炎を身にまとい、ローグに体当たりする。

そして、背中から二本のボトルを射出する。

ドラゴンとロックボトルだ。

 

「後は任せた!」

 

そういうことか。

だったら、ここでくたばってちゃいられない!

 

 

〔DRAGON!〕

〔LOCK!〕

〔BESTMATCH!〕

 

〔Are you ready?〕

 

「変身!」

 

 

〔封印のファンタジスタ!キードラゴン!Yeah!〕

 

 

右上半身と左足がネイビーブルー、左上半身と右足がシャンパンゴールドになり、

左腕には鍵を模した武装がついている。

 

「勝利の法則は、決まった!」

 

右拳に力を入れ、思い切りローグを殴る。

攻撃が当たる直前に拳に青い炎が纏われる。

 

「何だこの力は……!」

 

「あいつに託されちまったからには、負けるわけにはいかねぇんだよ!」

 

〔READY GO!〕

 

左腕の武装からチェーンを発射し、ローグを拘束、

 

〔VOLTEC FINISH! YEAH!〕

 

さらに右手から火球を発生させ、放つ。

 

「この借りは必ず返す……!」

 

ローグが撤退する。

 

が、その時

 

「がぁっ!ぐぅ……!」

 

立ってもいられないほどの圧のようなものがかかる。

とっさにボトルをドライバーから抜き、変身を解除する。

 

「とんでもない力だ……」

 

ロックフルボトルの力でも制御できていなかった。

やっぱりこれは、俺が使うものじゃない

 

……ん?このボトルの『L』ってまさか…………

 

「……行けよ。まだやることがあんだろ。

科学がどうとか、俺にはわからねぇけど!……俺はお前の事なら、信じられる」

 

「…………俺も同じ事思っちまったよ」

 

残っているボトルは4本。

どう取り返すか

 

 

 

 

 

「――――――」

 

「ん?」

 

地上に降り、撤退をしようとしたスターク。

しかし、ボロボロになったスマッシュを目にして足を止める。

 

「なぁんだ。まだ生きてたのか」

 

そのスマッシュに銃口を向ける。

 

〔STEAM BREAK! COBRA……!〕

 

スマッシュにとどめを刺し、成分を回収する。

 

「――――か、葛城さん……ですよね」

 

スマッシュになっていた研究員がスタークを呼び止める。

 

「誰が、葛城巧だって?」

 

「あなた……ですよ! あなたは、あんな事件で死ぬような人じゃない!考えがあってそんな姿でいるんですよね?!」

 

「……こいつは厄介だな」

 

「葛城さんなら、今のテクノロジーを駆使して、死体の偽装くらいできるはず!」

 

「…………こんな風にか?」

 

研究員の顔に手をかざすスターク。

すると、手のひらから煙が発生する。

 

 

そこに戦兎が到着する。

 

「これは……!」

 

倒れている研究員が別人の顔になる瞬間を目撃してしまう。

 

「驚いたか?これが、俺の力だ。もっと知りたかったら、お前がもってるデータに俺の名前を打ってみろ」

 

「……あんた、何が目的なんだよ」

 

「目的……? 聞きたいことはそんなことか、天才物理学者。いいだろう

 

俺は、これ以上勇者を増やしたくない。ネビュラガスを打ち込めば、もうその時点で無垢とは遠ざかる身体になる。つまり、勇者にはなれない。

だがそれには欠点があった。子供にガスを注入すると、身体が大きくなっちまうんだよ。お前みたいに。

 

ガキはガキらしく、自由に生きてほしいんだよ。

――――といっても、もう遅いか」

 

「何が言いたいんだよ」

 

「結城友奈、東郷美森、三ノ輪銀、犬吠埼風・樹、三好夏澟が次の勇者だ。ファウストはそいつらを狙ってる」

 

「どうして……」

 

「さぁな。ファウストは何を考えているのか俺にもわからない。精霊がいる以上、殺されることはないはずだ」

 

「……」

 

「長々と話しちまったが、もう一つ言っておこう。奉火祭という行事を知ってるか?

簡単に言うと、バーテックスの親玉に対して『巫女6人あげるから勘弁して』って許しを請うものだ。東郷美森は勇者であると同時に、巫女の素質を備えている。そのうち、これに巻き込まれるかもな」

 

「……」

 

 

 

「話はそこまでだ。スターク」

 

 

戦兎の背後にナイトローグが現れ、トランスチームガンを構える。

 

「残りのボトルも回収させてもらう」

 

ラビット、タンク、ライオンが奪われ、最後の一つである勇者フルボトルに手を出したその時

 

「おい、それは使えない。返してやれ」

 

「何だと?」

 

「いいから返せ。さもないと……パンドラボックスを破壊する」

 

〔COBRA……!〕

 

ボックスを放り投げ、銃口を向けるスターク。

 

「……いいだろう。こいつは取らないでやる」

 

「またな戦兎!」

 

「……」

 

自らの非力さとスタークの読めない考えに頭を支配され、立ちすくむ戦兎だった――

 


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