佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである 作:鮭愊毘
これは無限の可能性を秘めている。
嗚呼 君子Bは杖を撃て
葛城巧
三人の勇者とコンタクトをとってから数日後、家に"安芸"と名乗る人物から俺宛に電話があった。内容は、
・勇者四人をまとめるリーダーが園子になったこと
・三人の武器が弓(後方)、斧(近接)、槍(近・中)であること
・彼女たちが命知らずな戦法を取ること、連携がなってないこと、俺との接点が無さすぎることを理由に後日合宿を行うこと
だった。確かにこれはいい機会だ。……ただし問題が一つ。
―――――――――――――――――
~大赦 技術開発部~
「三人の武器が弓、斧、槍だってよ。近接俺とかぶってるじゃん。それに斧の方が一発一発の攻撃強いし……」
「「うん知ってた」」
父親に相談したはいいものの、一蹴されてしまった。……ん?
「初めまして。君が太郎君かな?」
「はい……」
さっき父さんに混じって一蹴してた人だ。
「俺は"葛城巧"。開発部部長だ」
「よ、よろしくお願いします」
「お父さんにはお世話になってるよ」
「この人は家の事情で中々顔を出してくれなかったんだ。いい機会だ。話でも聞いてみたらどうだ」
すると葛城さんは俺をパソコンのところへ誘導する。
「君はネビュラガスというものを知っているかい?」
「あー……確か、数年前……」
「正確には十年前。ある洞窟で発見された黄色いガスのことだ」
「……」
「俺はこれを使ったプロジェクトを始めていてね、君の勇者システムはそれの試作品と言っていい。……おっと!もうこんな時間か」
「もうそんな時間ですか?」
「ああ。太郎君の事、頼んだよ。次期部長」
「はい!」
「じゃあね太郎君。お役目はこれからも過酷になっていく。でも諦めちゃだめだよ。世界のため以前に自分を弱くしてしまうからね。ではこれで。See you!」
「ハザードレベル2.4……もう少しってとこか」
~合宿当日~
「遅い……」
目的地へはバスで向かう。俺、須美、園子は既に乗車済みだが、銀はまだ来ていない。
「あ、悪い悪い!遅くなった!」
「10分遅刻!……もしかして、今日も?」
「実はそうなんだよねー。今日も銀さんは困っている人のため張り切っちゃうよー!って」
「?」
「あっごめんなさい。銀はこう見えて問題に巻き込まれやすくて……」
「!?」
俺は思わず立ち上がって叫んでしまった。
「も、問題って言ってもお年寄りの荷物をもってあげたり泣いてる子を慰めたりすることですから……」
「そ、そうか……」
「何々~?もしかして心配してくれてんの?」
「いざという時何かあったら困るだろう……」
過剰に反応した自分が恥ずかしい。
「お役目が本格的に始まったことにより、大赦は全面的にあなたたち勇者をバックアップします」
目的地に到着後、すぐに訓練は始まった。勇者服に身を包み、武器を手に取る。俺の武器は剣……ではなくて刀というものらしい。大昔日本にいた人たちが持ってたものと親から聞いている。それと俺はネイビーブルーの勇者服なのだが、本来あるはずのモチーフとなった花が無い。男に花は似合わないということなのか、葛城さんのプロジェクトの試作品だからなのか……
「今から行う訓練は精霊が実装される前にバーテックスの襲撃があったとき専用のものです」
「はいはーい!」
銀が手を上げる。
「三ノ輪さん、何かわからないことでもありましたか?」
「精霊ってなんですか?」
「……佐藤さん」
安芸先生がこちらを見つめている。……俺が言えってか
「精霊ってのは勇者のサポートを行う……何か」
「何かってなんなのさ」
「致命的なダメージを完全無効化するバリアを張る……何か」
「バリア……障壁ですか?そんなことが……」
「いやだから何かってなんなのさ」
「……神樹様がくれたペット…………みたいな?」
「「……」」
「ペットか~ 可愛いのかな~?」
「た、多分」
「勇者をサポートするペット的な何か……?私には知らされてない……」
俺は安芸先生の今の言葉を聞き逃さなかった。
「え?何だって?……まさか先生、知らないから俺に説明を擦り付けて……」
「ルールは簡単。目の前にある装置からボールが飛んでくるので、三ノ輪さんをここから上の道のバスまでボールから守るだけ。鷲尾さんはその位置で固定。佐藤さんは三ノ輪さんの前、乃木さんは後方を」
図星か。にしても俺が前とは予想外だった。
「頼むぞ!佐藤!園子!」
「任せて~!」
「……了解」
要するに眼中のボール斬って進めばいいだろう
こう思っていた自分がバカだった……