佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである   作:鮭愊毘

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第十八話 金色のソルジャー

「お~、ここが樹海か!」

 

 男性はあたりを見回す。そこは一面植物のようなものが広がり、平らな地面がほとんど見当たらない。

 

「これからどーすっかな……」

 

 ファウストが佐藤太郎の両親をスパイとして大赦に送り込んだのと同じように、大赦もファウストにスパイを送っていた。

 それが彼、猿渡一海(さわたり・かずみ)である。

 大赦の命でファウストに仮配属した彼は目的を達成した。そして最後に彼らを一蹴しようとした時に世界が樹海と化した。そして今に至る。

 

 

「ここ……どこ?」

 

 突然の出来事に戸惑う友奈。

 端末を見てもアプリがほとんどロックされている。そんな中、彼女の後ろから何者かが近づく音がする。

 

「友奈!」

 

「友奈ちゃん!」

 

「友奈さん!」

 

「ああ良かった。そこにいたんだな」

 

 風、美森、樹、銀が駆けつける。

 この状況に混乱する友奈に落ち着くよう促す風。

 

「友奈、樹、落ち着いて聞いて。ここは神樹様が作った結界よ」

 

「神樹様が?」

 

「でも、何で私たちだけなんですか?それに結界って……」

 

「あれ、見える?」

 

 風が遠くに指をさす。そこには異形の存在であるバーテックスがゆっくりとこちらに向かって来ている様子が見えた。

 

「大きい……」

 

「あれから神樹様を守る。それが私たち勇者の役目」

 

 

「戦兎!ここどこだよ!」

 

「詳しいことは後だ!」

 

 一方、戦兎らは風達を視認しそこへ向かう。一度来たことのある場所のためすいすい進む戦兎と慣れない場所のため体の色々な場所をぶつけながら進む龍我。

 

「あー!最悪だ!あのドライバー置いてきちまった!」

 

「はぁ!?」

 

 風達のもとに到着した戦兎ら。

 そこには変身を終えた風と美森、銀と混乱している友奈と樹の姿があった。

 

「佐藤!」

 

「万丈さんまで!?」

 

 勇者とその素質を持つ者ではない二人を見て驚く一同。

 

「ライダーシステムは元々、ファウストやスマッシュと戦うものじゃない。本命はあいつらだ」

 

〔TAKA!〕

〔GATLING!〕

〔BESTMATCH!〕

 

「なんだかよくわかんねぇけど……」

 

〔WAKE UP!〕

〔CROSS-Z DRAGON!〕

 

 

〔〔Are you ready?〕〕

 

 

「変身!」

「変身ッ!」

 

 

〔天空の暴れん坊!ホークガトリング!Yeah!〕

〔WAKE UP BURNING! GET CROSS-Z DRAGON!YEAH!〕

 

 

「それじゃあ、あの子たちは任せる!」

 

「おい!…………俺にも羽付けてくれよ……」

 

 変身し、バーテックスの元へ飛翔する戦兎。それを見送り勇者へ視線を移す龍我。

 

「おぉ……」

 

「仮面ライダーって二人目いたんだ……」

 

「な、何だよ。今はそれどころじゃねぇだろ」

 

「そうですね。東郷はここで援護、銀はアタシと行くわよ!」

 

「了解!」

 

 凄まじい跳躍力でバーテックスへ接近する風と銀。美森は狙撃銃を構えて待機している。

 

「友奈ちゃん、樹ちゃん」

 

「東郷さん……?」

 

「これは国の運命を左右する戦い。無理しなくてもいいのよ」

 

「でも……」

 

「……戦います」

 

「私も、ただ見てるだけなんてできない!」

 

 陰に隠れていた樹と友奈が陰から体を出し、勇者へと姿を変える。今の彼女たちの顔に恐怖の表情はなかった。

 

「二人とも……」

 

 美森は二人を止めなかった。満開を使わなければ安全だから。どうかこの先使わないでほしい。こう願いながら。

 

「お姉ちゃんを置いてはいけません!」

 

「讃州中学勇者部 結城友奈!行きます!」

 

 友奈は思い切り地面を蹴りバーテックスに接近しようとするが、そこに白い小型のバーテックスである星屑が出現。

 

 〔ヒッパレェー!ヒッパレェー!〕

 

 龍我はビートクローザーのグリップエンドを二回引っ張り広範囲攻撃の待機状態に入る。

 

 〔MILLION HIT!〕

 

 クローザーを横に薙ぎ払い、視界内の星屑を殲滅し活路を開く。

 

「気持ち悪ぃ!まだいんのかよ!」

 

 樹が武器であるワイヤーで星屑を刺すように攻撃し、それの漏らしを美森が打ち抜く。

 

 

〔COMIC!〕

 

「ビルドアップ!」

 

 戦兎はガトリングボトルをコミックに入れ替え、タカコミックフォームになる。

 

〔火遁の術!〕

〔火炎斬り!〕

 

 左手に装備した4コマ忍法刀でバーテックスの足にあたる部分を斬る。

その直後、風と銀、友奈は封印の儀を行う。これはこの時代の勇者から実装された機能で、心臓部の御霊を引きずり出すことができる。

 

「私が行きます!」

 

 友奈が御霊に拳を叩き付ける。ヒビが少し入ったものの、破壊には至らず。

 どうしようと焦る彼女だったが、

 

 

 

 

 

「退け!お嬢ちゃん!」

 

 

 

 

 

「えっ?」

 

 突如彼女の頭上から男の声が聞こえる。戦兎や龍我のものではない。友奈はとっさに御霊から離れる。

 

〔SINGLE BREAK!〕

 

「おらぁ!」

 

 すると、金色の閃光とともに御霊が真っ二つに割れる。

 

「もう倒したのか!やるじゃねぇか戦兎!」

 

 星屑を殲滅した龍我、美森、樹が合流する。

 

「いや、俺じゃない」

 

「え?じゃあ……」

 

 龍我はきょとんとしている友奈を指さす。

 

「私じゃないです」

 

「――――何だ、もう終わりか」

 

 真っ二つになり消滅する御霊の真下から人影が見える。

 龍我は友奈の前に立ち武器を構える。

 

「その武器を下ろせ」

 

「てめぇ、誰だ!」

 

 金色の装甲を身にまとった男が龍我に向かって戦う意思がないことを示しながら近づく。

 そして龍我を指さし

 

「お前が……仮面ライダークローズ?」

 

「それがどうした」

 

 次に戦兎を指さし

 

「お前がビルド?」

 

「ああ」

 

「成程……」

 

「さっきから何なんだよ!てめぇはよ!ファウストの刺客か!」

 

「万丈!」

 

 高圧的な龍我を抑えようとする戦兎。

 

「もし俺がファウストだったら、さっき御霊の上にいたお嬢ちゃんに退けなんて言わなかったぞ?」

 

「じゃあ何だよ」

 

「俺は大赦から派遣された"仮面ライダーグリス"。これからもちょくちょく顔出すから」

 

 こう言うとグリスは立ち去った。

 

 ◇

 

「佐藤さん、さっきの人って知り合いかなんかですか?」

 

「……いや、初対面だ」

 

 三人目の仮面ライダーの存在、それと誰も自分の事を桐生戦兎と呼んでくれないことに悩み悲しみながらグリスの立ち去った方向を見つめていた戦兎。

その直後、樹海化が解除された。

 

 


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