佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである   作:鮭愊毘

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第二十話 スナイパーの隠し事

 nascitaから石動惣一が消えた。

 

 この次の日からnascitaでは三つの出来事があった。

 一つ、

 

Bom dia(ボン・ヂア)(ポルトガル語で"おはよう")!どうよ!俺の豆・収・穫 !」

 

「あーはいはいよくできましたね」

 

 龍我が二代目店主となり近所の承諾を得、コーヒー豆栽培を始めたこと。

 

 二つ、ここが完全に勇者部だけの憩いの場として定着してしまったこと。最初から店と言っていいのかわからなかったが、これでもう店と言い張ることは不可能になった。

 

 三つ、

 

「店主、コーヒー何とかできない?」

 

「うるせぇな。タダで淹れてやってんだから我慢しろ」

 

 仮面ライダーグリスこと猿渡一海が当店に入り浸っていること。

 

 以上の三つ。

 ちなみに、生活費等は以前ラビットタンクスパークリング制作中に噴き出したダイヤモンドを売却した金でやりくりしている。

 

 そしてこの一か月、バーテックスとファウストに動きはなかった

 

 

 世界が樹海と化した。

 

 勇者の目の前にはカプリコーン・バーテックスが一体。

 

「銀……」

 

 美森が不安そうな顔をして声をかける。

 

「どうした?あいつなら一度戦ったことあるじゃん」

 

「それよ。大赦から『「バーテックスは十二体』と言われているけど、実際は十二種類。散華の事も知らされていない。この事をどう説明すれば……」

 

「確かに…………あれっ?」

 

「どうかした?」

 

 銀が自分の近くを浮遊している精霊を見て驚く。

 

「義輝……じゃない!?」

 

「今更?」

 

 

「相変わらずの方向音痴か。猿渡」

 

 バーテックスと勇者から遠く離れた地点で二人の男が対峙していた。

 ファウストの長とスパイである。

 

「葛城と連絡が取れなくなった。お前の仕業か」

 

「ご名答。葛城は死んだ」

 

「そうか。でもこれでお前の嫉妬先が消えた。これで満足だろ」

 

〔BAT〕

 

「蒸血」

 

〔MIST……MATCH! BAT! BA BA BAT……! FIRE!〕

 

「今のお前は勇者にも勝ってこないぞ」

 

〔ROBOT JELLY!〕

 

「変身」

 

〔ツブレル!ナガレル!アフレデル! ROBOT IN GREASE! ブルァァァァ!!〕

 

 一海が仮面ライダーグリスへ、幻徳がナイトローグへ姿を変え、得物を構える。

 

「"大赦製のボトル"は我々が回収する」

 

「いや、俺たちだ」

 

 

 バーテックスが美森の狙撃銃の射程内に入る。

 引き金に指をかけ、タイミングを窺っていると、次の瞬間、バーテックスを中心に衝撃波が発生する。

 

 バーテックスが姿勢を崩す。つまり、今の衝撃波は第三者は発生させたものと推測する戦兎。

 美森が今の事を探るためスコープを覗く。するとそこには小振りの刀を二本持ち、左腰に大振りの刀を携えた少女を視認する。

 

「あれって……三好さん?」

 

 

「封印開始!」

 

 

 少女が着地し単独で封印の儀を開始した。これにより御霊が出現。しかしその御霊は紫色のガスを噴射して抵抗を始める。

 視界を奪われた少女だが、彼女は手持ちの刀を放り投げ、左腰の刀を抜く。そして御霊を見事両断。

 

 

「何かどっかで会ったような、会わなかったような……」

 

「あの声、やっぱり……」

 

「え?あの子知り合い?」

 

「戦兎、話についていけない」

 

「俺も」

 

 変身しただけで何もできなかったじゃねぇかと愚痴をこぼしながら変身を解除する戦兎と龍我。

 

 そんな彼らの元に少女が近づいてくる。

 

「揃いも揃ってぼーっとした顔してんのね。こんなのが勇者…………」

 

 友奈たちを見回しながらこう言う少女だったが、美森と銀の顔を見てしばらく硬直した後、こう言いだす。

 

「あんたってもしかして……」

 

「あ!思い出した!久しぶり!にぼしさん!」

 

 銀が笑顔を見せる。

 

「三好よ!み・よ・し !」

 

「ああ、やっぱり貴女だったんですね。三好さ……にぼしさん」

 

「言い直さなくていいから!三好で合ってるから!」

 

「冗談ですよ」

 

 

「随分仲いいわね……」

 

「お友達なのかな?」

 

 

「そ、それよりあんた達!」

 

 少女、三好夏澟が友奈たちに指をさす。

 

「精霊がついているからってこの戦いを甘く見ないことね。バーテックスは無限に――」

 

 美森と銀が夏澟の口を塞ぐ。

 

「無限?」

 

「そそそそ、そうなのよ友奈ちゃん!バーテックスって御霊壊さないとすぐに傷が治っちゃうのよ!そう言いたかったんですよね三好さん!」

 

「~!」

 

 口を塞いでいる手を退けろと抵抗する夏澟。

 

「でもそれだと『無限に』に繋がらないと思うんだけど……」

 

「『無限に傷が治る』!こうすれば、ね?」

 

「なるほど~!」

 

 友奈の疑問が解けたところで二人は手を退ける。

 

「ぷはぁ!な、何すんのよいきなり……まぁ精霊がいるから死ぬことは―――」

 

 再び口を塞ぐ二人。

 

「確かに、攻撃防いでくれるもんね!」

 

「流石ね友奈ちゃん!もうそこまで覚えたのね!」

 

「えへへ~、この一か月で予習したんだー」

 

「偉いわね友奈ちゃん!この調子で勉強も頑張りましょう!」

 

「……東郷さん、何か隠そうとしてない?」

 

 友奈のこの言葉に美森と銀の肩が跳ねる。

 

「そんなことないよ!なぁ須美!」

 

「え、ええ。私、こう見えて隠し事すると顔に出やすいの!してないのわかるでしょう?」

 

「絶対してる」

 

 風が言い切る。

 

「……わ、私と一緒に戦ったことのあるあなたならわかるでしょう!?佐藤さん!」

 

「俺?」

 

 嫌な汗をダラダラ流しながらこちらを見つける美森に何て対応すればいいかわからない戦兎。

 すると、ようやく拘束から逃れた夏澟が叫ぶ。

 

「あんたら……いい加減にしなさいよぉぉ!!」

 

 

「すみません……」

 

 その後、放課後に他の面子より早めに部室に来て風の前で正座する美森。

 

「どうしたのよ。今日様子変よ?」

 

「わ、私だって……はっちゃけたい時もあるんです」

 

「何かを隠そうとしてたけど」

 

「……」

 

「図星か」

 

 

「うわ……何だこれ」

 

 nascitaに帰ってきた龍我。彼の前には『完全無敵』と書かれた紙が壁に貼ってあり、戦兎がその近くでパソコンを操作していた。

 

「満開の力を低下させずに散華を発動させない、さらに精霊バリアなしでもダメージを無効化できる完全無敵の勇者システムを作る」

 

「はぁ?」

 

 パソコンには二つの機器が接続されており、一つは惣一が託した園子の端末、もう一つは修理しただけで天神の逆鱗に触れた代物"ハイパームテキガシャット"である。

 

 神の力を借りずともバーテックスに対抗できるシステム。

これを実現する事が、葛城の遺志を継いだ彼の新たな使命。

 

「まぁ……頑張れよ」

 

 龍我はさっきからメール着信音がうるさい戦兎の携帯を少しいじってみる。

 そこには何十通ものメールが溜まっていた。送り主は乃木園子。

 

「…………グッドラック」

 

 恋の経験者である彼はこれから戦兎に起こる事態を察し、幸運を祈った。

 

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