佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである 作:鮭愊毘
「邪魔するぞぉ」
nascitaの常連客である一海が地下室に入ってくる。
「そうだ、サル、あんたに聞きたいことがある」
「猿渡な」
「あんた、大赦から派遣されたんだよな?」
「何でそのドライバー持ってるんだよ」
「ぁあ、これか? これはそこの……戦兎が設計データを完成させた夜、ハッキングさせてもらった。お詫びに仮面ライダークローズチャージのデータを入れたけどな」
「おお。わかった」
「と言ってもハッキングしたのは俺じゃない。葛城だ」
「……マスター……相変わらず何を考えてるのかわかんねぇ奴だった」
「それで話を変えるが……、お前ら、フルボトル何本所有してる?」
「ドラゴンにロックに……後何だっけ」
戦兎に助けを求める龍我だったが、先に口を開いたのは一海だった。
「ラビットタンク、ゴリラモンド、ホークガトリング、ニンニンコミック、ロケットパンダ、ライオンクリーナー、ファイアーヘッジホッグ、キードラゴン、海賊レッシャ―、オクトパスライト、フェニックスロボ、ブレイブスナイパー、エグゼイド……
26本か」
「27本だ」
戦兎がコブラフルボトルを見せる。
「ほうほう……香川のボトルは全部揃ってるのか」
「香川?」
「四国の一つの―――」
「そうじゃねぇよ!」
「ラビットタンクからオクトパスライトまでの20本はスマッシュから採取した成分だろ?ブレイブスナイパーは想定外、エグゼイドは想定内だけどナンバリングからは外す。フェニックスロボは大赦製だ」
「大赦までボトル作ってんのか!?」
「スマッシュはパンドラボックス展覧会の行われた香川だけで出現。これで20本、葛城が大赦で作ってた物も同じく20本、そしてファウスト製の20本で計60本存在すると聞いている」
「……何言ってんのかさっぱりわかんねぇ」
一海の言うことが理解できない龍我。
「戦兎、さっきから何やってんだ」
一海が戦兎の作業風景を覗く。
「システムは完成した。元からあったものに重ねる感じで。でも……」
「でも?」
「チャットとインターネットとカメラ使えなくなっ―――」
「はいやり直し」
「うそーん……」
既存のシステムにデータを書き加え、
『攻撃・バリア使用でゲージが溜まり、溜まると半自動的に満開が発動』
から
『満開の使用はできないがゲージは最初から溜まっており、バリアを使うごと減っていく(ゲージが0になっても仰け反りこそ大きくなるもののダメージは避けられる)』
に改変したが、CPUに負荷がかかりすぎる上に排熱が酷い。
その上端末の一部機能の使用不可に陥るなど素人の目から見ても突貫工事の出来だった。
理想は、
・精霊バリアを貫通する存在に対処できるよう、ムテキガシャットのデータ(物理・特殊攻撃の無効化)を組み込む(普段は精霊バリアのみ)
・代償なしの満開
以上の二つ。
戦兎は気晴らしに携帯を触ることに。
「……」
しかし彼は絶句する。何故ならそこに、『私の事嫌いになったの?(意訳)』と書かれたメールが溜まっていたからだ。
色々あって接する時間が少なかったのは確か。でもそれはただの言い訳に過ぎないことも自覚している。
龍我の言った『グッドラック』の意味がようやく分かった
戦兎は陳謝のメールを送った。戦いがこれから激化していく中、約束した通りお前を守ってやると。
「戦兎!触ったら何か全部消えたぞ!」
「……」
そして、葛城の言う通り、未来を考えることも大事だが今を疎かにしてはいけない。こう痛感した戦兎であった―――
「これが戦兎の作ったスクラッシュドライバー…………?」
「どうした?」
「俺のと、重さが違う……」
◇
「猿渡一海が仮面ライダーと接触しています」
「構わない。泳がせておけ」
「しかし……」
「泳がせておけと言ったんだ!佐藤ォ!」
「……」
「例の計画と"カイザーシステム"の開発を急げ!
これで大赦は、世界は…………私のものだ」