佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである   作:鮭愊毘

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第二十三話 ミスアンダースタンドが加速する

「一海、お前あの話聞いたか?」

 

「あの話?」

 

「"国防仮面"だよ!突如として現れた軍服の戦士!」

 

 仮面ライダーグリスであり、大赦に所属している猿渡一海は同僚から噂話を聞かされていた。

 

 国防仮面。

 西暦の初代勇者より前に存在していた軍人と類似した装束を身にまとい、ひったくりの確保から歯医者に行きたがらない子供の説得、荷物持ちなどを行う人物。

 

 町の人々からは『仮面ライダーが町を守り、国防仮面が身近を守る』とかなり敬われている。

 

「変わった格好する子もいるもんだねぇ……」

 

「あ?カッコいいだろ!……それで―――」

 

「正体を暴いてほしい。こうだろ」

 

「……自分から言っておいて何だけど悪いな。ドライバーの発信機にも気づけなくて」

 

「犯人は見当がついている。後はこっちで何とかする」

 

 一海のスクラッシュドライバーに仕込まれていたデータ発信機。送信先はファウスト。

 ビルドらと接触した彼をファウストが泳がせていたのは、このドライバーの戦闘データを盗るためだった。

 

「それより」

 

「!」

 

「"アレ"の開発はどうなってる」

 

「……あの設計図は虫食いだらけだ。データが足りない。でも、それが解決すれば開発は可能だ。半年あれば」

 

「わかった。こっちに天神と真正面から殴り合える(ムテキ)があるとはいえ、あの炎には勝てない……」

 

「壁の外は……異常なしみたいだ」

 

 同僚がパソコンに送られた文章を確認する。

 

「防人……ろくに加護を受けてないのに死傷者0。できれば俺も行きたいんだけどなぁ」

 

「この年の女の子口説くとか警察沙汰だぞ」

 

 防人(さきもり)とは、勇者に選ばれなかった勇者候補生たちが壁の外の調査を行うため変身する、いわば量産型勇者である。

 勇者に比べて耐熱性に優れており、壁の外の溶岩の上を歩行できる。

 本来これは秋に実装される予定だったが、ファウストやスマッシュなどの想定外の事態を重く見た大赦によって実装が早まった。

 

 彼女たちは雑草だ。一人一人の力は弱い。

 

 だからこそ、大勢で力を合わせて戦う。武装は盾と銃剣の二種だけだが人によって扱い方が違う。

 この十人十色な武器の扱いの短所を補い合い、生きる。勝つことよりもみんなで欠けずに生きて帰る。

 

 隊長の楠芽吹はこれをモットーに今日も戦場に駆けている。

 

「あ、また来た」

 

「スパムか?消しとけ消しとけ」

 

「いや……ゴールドタワーの改装中だって」

 

「それはもう終わっただろ」

 

「二回目だって。……へー。飛ばすんだー」

 

「はぁ?飛ばす!?タワーを?!宇宙開発でもする気か!?」

 

「天神用の迎撃ミサイルとして使うみたい」

 

「…………とても効くとは思えない」

 

 

「須美ー」

 

「……」

 

「東郷先輩?」

 

「……」

 

「わっしー、起きて~」

 

「……」

 

「結城友奈、ただいま到着しましたー!」

 

「はっ!?」

 

「どうしたのよ東郷。疲れてるの?」

 

「いえ……」

 

「最近、日本史の時も静かだよな。いつもは『お前が教えろよ』って言われるぐらいはしゃいでるのに」

 

「き、気を付けるわ……」

 

 最近、睡眠不足が続く美森。

 

「先輩、依頼ですよ」

 

「んー何々?『国防仮面の調査をお願いします』」

 

「……」

 

 S.Kという人物から送られたメール。それには動画のURLが張られており、これを検索すると国防仮面の姿を映した動画が再生された。

 

「「……」」

 

 動画を最後まで見終わった彼女らは国防仮面の手がかりを探すべく行動を始めようとしたが、銀と夏澟は動画をもう一度再生し、絶句する。

 

「この髪型って……」

 

「……ええ」

 

「このリボンって……」

 

「……ええ」

 

 

「須美じゃん……」

「東郷……」

 

 国防仮面の正体を誰よりも早く突き止め、そのリボンが大切なものなのはわかるけど正体隠したかったら仕舞えと思いながらみんなにはまだ内緒にしておくことにした二人。

 

 

「あああ、あの……犬吠埼風様がどこにいらっしゃるか……ご存知でしょうか……?

 そ、それか、結城友奈様、東郷美森様、犬吠埼樹様、三好夏澟様、三ノ輪銀様、乃木園子様でも……」

 

 讃州中学の校門では、一人の少女が生徒に話しかけていた。

 名は加賀城雀。防人の一人だ。

 

 勇者がこの学校にいると聞いた彼女は午後の鍛錬をサボり、わざわざここまでやって来た。

 

「それって勇者部の事だよね?」

 

「え……?」

 

 雀はこの生徒を恐れた。

 何故この人は勇者様を友達感覚で呼んでいるのか?何故恐れないのか?

 

―――彼女は勇者の事を戦闘民族と解釈してしまっている。

 

 そのため、先ほどから顔を白くして震えているのだ。

 

「依頼持って来たの?風ー!勇者部あてのお客だよー」

 

「はいはーい!」

 

「ほら、この人が部長の……ってあれ?」

 

 遠方で風の姿を見かけた生徒は大声で彼女を呼ぶ。

 しかし、風が来た頃には雀はどこかに消えていた。

 

 

(これは罠だ!油断させといて背後から……)

 

 雀は学校への侵入に成功。そして考えを膨らませる。

 勇者様は表ではただの部活として動いているが裏では何か恐ろしい事を……

 

 

「国防仮面?」

 

「今さっとんとジョーさんと同じくらい噂になってる人だよ~」

 

「マジか!……でもよ、俺たちがここにいていいのかよ」

 

「大丈夫。俺たちは今『人手不足で雇われた運動場の慣らし係』だから」

 

「そうには見えねぇけどな―――――ん?」

 

 龍我が一定の方向を見つめる。

 

「あれ……他所の学校のやつみたいだな」

 

 本人は忍んでいるつもりだが、どう見ても忍んでいない。目立っている。

 

「ちょっくら行ってくるわ」

 

「え?」

 

 ◇

 

「そこのお前!」

 

「ヒィ!」

 

 龍我が雀を制止させる。

 

「どこから来た!ファウストのスパイか!」

 

「ちちちち、違います!」

 

「じゃあ何だ!」

 

「そ、それは――――」

 

 

「バカバカバカバカ!何やってんだお前は!」

 

 そこに戦兎と園子が駆けつける。

 

「仮にこの子がスパイだったとしても、『スパイですか』って聞いても『はいそうです』って答えるわけないだろ!」

 

「……あ、そっか」

 

「驚かしちゃってごめんね~」

 

「の、乃木園子様……」

 

「様?」

 

「い……」

 

「「「い?」」」

 

「命だけは勘弁してくださいー!」

 

 勇者の一人である園子を見て逃げ出した雀。しかしスパイでも何でもなかったため放っておくことにした。

 

 

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