佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである   作:鮭愊毘

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第二十四話 復活するゴッド

 加賀城雀はこれまで以上に困惑していた。

 花壇の雑草を抜いたり、学校に迷い込んだ猫を捜索したりする勇者たちの姿を今、目に焼き付けているからだ。

 

 あれ?勇者って普通の人?

 

 彼女はようやく分かり始めた。ここに来る前、仲間から『勇者は普通の人。ただサプリメントと煮干しが好きすぎるだけ』と聞いていたがそれは三好夏澟のこと。ほかの勇者の事は知らなかった。

 でも、夏澟が普通なだけで他は普通ではないのでは?

 こう思うとキリがない。

 

 と、次の瞬間、

 

「あんた」

 

「!!」

 

 ツインテールの少女に肩をたたかれる。夏澟だ。

 

「私たちのことつけ回してるけど、どういうつもり?」

 

 彼女の単刀直入な問いに雀は

 

「あ、え、……」

 

 言葉が思うように出ない。

 

「何?もっとはっきり言って頂戴」

 

 今すぐ反転して逃げたい。でも体が言うことを聞かない。

 雀を問いただしている夏澟の後頭部に風がチョップを入れる。

 

「痛っ!」

 

「こらこら、人を脅さない」

 

 

 雀は風と夏澟に部室へと連行された。

 そこにはすでに活動を終えた友奈、美森、銀、樹、園子が戻ってきており、二人の連れてきた雀を見て不思議そうな顔をしていた。

 

 部室に入って早々、彼女は勇者の前で正座をする。椅子を用意されたにも関わらず。

 

「あの、ここは和室ではないのですが……」

 

「お、お構いなく!」

 

「それこっちのセリフ」

 

 雀は目だけ動かして部屋を見回す。血生臭さもしなかったし、物騒なものも置いてはいなかった。

 

 そして彼女は勇者部に自分の事を防人のこと以外包み隠さず言った。

 

「愛媛から来たのね。ご苦労様」

 

 先ほどとは違って優しい声をする夏澟に目を丸くする雀。

 

「む~」

 

「な、何よ」

 

 友奈が夏澟に向かって頬を膨らませた表情をする。

 

「にぼっしーちゃんって何で私たちには冷たいの?」

 

「えっ!?それは……」

 

 現在、夏澟は勇者部には監視という名目で所属している。その上、訓練をしていない友奈をちんちくりん呼ばわりしたこともあった。

 

「……悪かったわね。ちんちくりん呼ばわりなんかして。それと、にぼっしーちゃんってやめてくれる?」

 

「じゃあ夏澟ちゃん!」

 

「それでいいわよ」

 

「これからは私もそう呼びますね」

 

「好きにして」

 

「夏澟ちゃ~ん、アタシもこう呼んでいいかし―――」

 

「あー煮干し無くなりそうだなー買ってこなきゃなー」

 

 風を受け流す夏澟。

 

「ほら、樹も」

 

「先輩だよ……?」

 

 姉に促され、夏澟をちゃん付けしようとする樹。

 

 

「かり……ん、ちゃ……」

 

 

「樹」

 

「は、はいぃ!」

 

「よかったらうちの妹にならない?」

 

「ええっ!?」

 

「樹ぃぃぃぃ!!行っちゃダメぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

「それよりも、まずは加賀城さんの依頼を聞きましょうか」

 

 美森が話を戻す。

 依頼なんてない雀は困惑した。そのため、即席で考えた事を話してみることに。

 

「私……昔からずっと臆病で!す、少しでいいから勇気のある人間になりたいんです!」

 

「よし、わかった!」

 

 風が黒板に、

『加賀城さんが勇気を持てるようにする』

 と書く。勇者部の新たな活動が始まった。

 

「まずは煮干しを食べなさい」

 

 煮干しには不安感をやわらげたり気分を高揚させる成分が入っていると言って自らの煮干しを差し出す。

 

 その後に園子と友奈に連れられて屋上に行くことに。

 

 

「人目を気にせずぼーっとするんよ~」

 

「ぼーっと?」

 

「……」

 

 雀が隣の園子の方をみると、彼女は既に熟睡していた。

 そんな園子を見て過剰に緊張している自分が馬鹿馬鹿しくなってきた。

 

「猫も気持ちよさそうですね」

 

「え、猫?」

 

 雀が柵の外にいる猫を指さす。

 

「あ!お手柄だよ雀ちゃん!」

 

「え……?」

 

 友奈は猫を捕まえようと柵を乗り越える。

 それを雀は不安そうに眺めていた。

 

 と、次の瞬間、突風が吹き、彼女の不安が現実のものとなってしまった。

 

 

「なあ」

 

「ん?」

 

「あれ」

 

 運動場を慣らしていた戦兎と龍我は校舎の屋上の柵の外にいる友奈を発見する。

 

 

「何やってんだあいつ!」

 

「落ち着け万丈!」

 

 せっかく慣らした運動場に足跡を残しながら友奈の下まで駆ける。

 

「クッションとかないか?」

 

「あったとしてもこの高さだ。複雑骨折は免れない……あ、そうだ」

 

 戦兎はビルドドライバーを装着し、忍者とコミックのフルボトルを装填する。

 

「変身!」

 

〔忍びのエンターテイナー!ニンニンコミック!Yeah!〕

 

 ビルド ニンニンコミックフォームに姿を変え、4コマ忍法刀を召喚。

 この武器の先端はGペンの形状をしており、刺突ができるほか、空中に絵を描くことが可能。さらにこの絵は描いた者のイメージ通りの効果や能力を発揮する。

 

 戦兎はこれで大きなトランポリンを描く。

 その直後に突風が吹き、友奈と先ほど見かけた少女が落下する。

 

 4コマ忍法刀で描いたトランポリンはしっかりとその役目を果たし、二人を受け止める。

 

「よっしゃぁ!」

 

 龍我が自分のやったことのように声を上げる。

 

「さっすが俺の発明品!最高だ……!」

 

 

 その後帰宅した戦兎は難波重工の土地に埋まっていた大きなアタッシュケースの中のトランスチームガンを取り出す。

 

 ゲーマドライバーとガシャット二本は未だに見つかっていない。

 しかし、それの使用条件はハザードレベル4.5以上。

 3以上がただでさえレアなのにそれを超える人材などいるはずがない。

 

 こう信じてトランスチームガンの解析に移る。

 引き金を引いたら爆発する、といったプログラムも見つからない。

 

「ん?」

 

 戦兎はとあるプログラムを発見する。

 それは勇者の武器に関するものだった。

 

 彼が佐藤太郎だった頃の武器は刀。しかしこのプログラムには武器が鎌と設定されていた。

 仮面ライダーとしての力を手にした今、勇者のような姿になっても意味がないのでは?

 こう自問してみた。

 

 数分後に『仮面ライダーに変身できない時に使えるかも』という答えを出す。

 

 今ネビュラガスを投与される直前の状態に戻っても弱いだけ。このプログラムはこう考えた葛城が内蔵したものだと確信した。

 

 

 戦兎は立ち上がり、トランスチームガンに勇者フルボトルを装填し、引き金を引く。

 

〔MIST……MATCH……!〕

 

 

「これは……使える……!」

 

 

 

 

「猿渡さん!こちらへ!」

 

 大赦では人が今まで以上に慌てふためいていた。

 それも当然。

 

「……クソッ!遅かったか……」

 

 技術開発部が荒らされ、機材や人――――だったものが散乱していたからだ。

 一海が駆けつけたものの、時すでに遅し。

 

「生存者は!」

 

「……いません」

 

 大赦所属の白いガーディアンが出動する事態になった。

 ガーディアンが開発部室内に突入。しかし犯人はすでに逃亡していた。

 

「一海!一海ぃぃぃ!!」

 

 そこへ一海の同僚が息を切らしながら到着する。

 

「落ち着け。何があった」

 

「はぁ……はぁ……!

 

 

 ぼ、ボトルとアレの設計図が盗まれた!」

 

「何だって!?」

 

 

「大赦から追放されたか」

 

「……」

 

「いずれこうなることはわかっていた」

 

 幻徳の前で跪く男女のうち一人が口を開く。

 

「……ナイトローグ様。こちらを」

 

 男が幻徳にUSBメモリとフルボトル数本を差し出す。

 

「よくやった。そんな君達にこれをプレゼントしよう」

 

 幻徳は二つのアタッシュケースを男女に渡す。

 その中には、紫色の拳銃が入っていた。細部こそ違うが、全体はトランスチームガンに酷似している。

 

「近いうちに息子と戦うことになる」

 

 

 

 

「そんなデータを手にして、親子を殺しあおうとさせる……

 

 哀れだな。氷室幻徳氏」

 

 

 

 

 幻徳の背後に先ほどまでいなかった男が現れる。

 それに男女は銃を構える。

 

「そんなおもちゃで私を殺すことはできない」

 

「……ついに蘇ったか。バグスター」

 

「私はただのバグスターではない。人間の遺伝子を持ったバグスターだ」

 

「……成程。しかし、この時代は君の知っている世界ではない」

 

「"神"である私が、そんなことを知らないとでも?」

 

「失せろ!」

 

 男女が発砲する。男はそれを避けることはしなかった。

 銃弾は男の体を通過し、壁に埋まる。

 

「貴様……!何者だ!」

 

 

「私は仮面ライダーゲンム。

 

 

 

 

 

 

 

 

 "檀黎斗神"だ」

 


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