佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである   作:鮭愊毘

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第二十五話 幻夢のオピニオン

「檀黎斗神だと?ふざけたことを……」

 

「君に言われたくないな」

 

〔MIGHTY ACTION X!〕

 

「グレード0、変身」

 

 黎斗は自らが開発したガジェットであるプロトマイティアクションXガシャットオリジンをゲーマドライバーのスロットに挿入。さらにレバーを開く。

 

〔GASHAT!〕

CLICK TO OPEN(ガッチャーン)! LEVEL UP!〕

〔MIGHTY JUMP! MIGHTY KICK! MIGHTY ACTION……X!〕

 

 黒地に紫の色が入り、ゲームキャラを等身大にしたような姿。

 300年前、勇者とともにバーテックスに戦いを挑んだ戦士……

 仮面ライダーゲンム レベル0が姿を現す。

 

 幻徳もナイトローグに変身し、発砲する。

 武器も何も持たない黎斗はそれを避けようともせず、正面から銃撃を食らってしまう。

 ゲンムの胸部にはライダーゲージと呼ばれるゲージが存在し、それが少し減る。

 

 ライダーゲージの残量と変身者のバグスターウイルスの抗体は比例しており、ゲージがなくなるとバグスターウイルスに体を蝕まれ、死に至る。

 

「所詮は旧式中の旧式のライダーシステム。現代の技術に勝てるわけがない」

 

 トランスチームガンを投げ捨て、スチームブレードでの接近戦に切り替える幻徳。

 

 武器が設定されているはずなのにそれを使おうとしない黎斗。

 そんな彼は幻徳の左腕を拘束し、勝ち誇ったかのように笑い出す。

 

「ハハハハハ!!取ったァ!」

 

「何……?」

 

 その時、幻徳の体に異常が発生する。体が重い。

 

「レベル0は無の力……。私に触れられた者は徐々にハザードレベルが下がる!」

 

「貴様の時代ではハザードレベルという概念は……!」

 

「私が対策をしていないとでも思ったかァ!!」

 

 しびれを切らした幻徳は自由な右腕で黎斗の腹にパンチを入れ離脱。トランスチームガンを拾い、

 

〔STEAM BREAK! BAT!〕

 

「グァァアアアアア!!」

 

 至近距離で放たれた強力な銃撃により黎斗はおろか自分も反動により吹き飛ぶ。

 幻徳は勝利を確信した。

 

 黎斗はライダーゲージが0になった事を視認した直後、変身が解除され、身体がバグスターウイルスによって消滅する。

 

〔GAME OVER……〕

 

「……無様な最期だったな」

 

 部下とともにこの施設を放棄することを決めた幻徳。

 

 

「フハハハハ!ハーッハッハッハァァ!!」

 

 

 先ほど聞いたような笑い声を耳にする幻徳。彼が声のした方向を見ると、そこには紫色の土管が立っており、土管から黎斗が復活した。

 

「残りライフ98……」

 

 だが、彼が復活を果たしたころには既に幻徳の姿は消えていた。

 

「待て!まだゲームは終わってないぞ!」

 

 怒号を発するが何も返ってはこなかった。

 

 

「お前さ」

 

「いきなりどうした?」

 

 暇そうに椅子に逆向きで座る龍我。

 

「あいつらの事何て呼んでる?」

 

「勇者部の事か?基本ちゃん付―――」

 

「そこ。あのさ、何か出来上がると『ヒャホホホヒャッホイ』とか奇声上げたり振り回したりする奴がちゃん付けとか完全に通報案件だからやめとけ」

 

「そこまで、そこまで言うか!?……わかった」

 

「あと一つ聞くけどよ、お前、何のために戦ってんだよ」

 

「そりゃもちろん、Love & Peaceのためよ」

 

「よくそんな恥ずかしいこと言えるよな……」

 

「まぁこれは置いといて……ん?」

 

 戦兎の端末がスマッシュの反応を示す。

 

 

 二人が現場に着くと、そこには黒の身体に橙色の頭部、青と紫の身体に白の頭部をした怪人、バグスターとネビュラバグスターが出現していた。

 

「俺が先陣を切る。お前は遠くの奴を頼む!」

 

「狙撃しろってか。いいよ」

 

〔WAKE UP!〕

〔CROSS-Z DRAGON!〕

 

〔TAKA!〕

〔RIFLE!〕

 

〔〔Are you ready?〕〕

 

「変身ッ!」

「変身!」

 

〔GET CROSS-Z DRAGON!YEAH!〕

 

 龍我はクローズへ、戦兎はビルドのTFに変身。使ったボトルはタカとライフル。即席で作り上げた後方支援専用のフォーム。

 

「ッしゃあ!行くぜェ!」

 

 龍我がバグスターの群れに突撃する。戦兎はタカの力で高所に移動し、ライフルボトルの力で召喚された狙撃銃を構える。この得物は美森の使うそれと形状は全く同じである。

 

〔MILLION HIT!〕

 

 ビートクローザーで薙ぎ払いをする龍我。これを行った直後、土煙が発生する。

 戦兎も群れに中心に突撃した龍我の後方のバグスターを射る。

 

 しかし、

 

「万丈!後ろだ!」

 

「あぁ?」

 

 龍我が後ろを振り向くと戦兎に任せたはずのバグスターが健在でこちらに槍で襲い掛かってくる。その遠くには一瞬ではあったが、後ろの敵によって高所から落下する戦兎の姿が映った。

 

「戦兎!」

 

「かはっ……効いてないっぽいぞこれ!」

 

「じゃあどうすんだよ!」

 

 戦兎ははっと思い出す。葛城のデータで調べ物をしていた際、目の前の怪人についての情報を流し見したことがあると。

 ちゃんと見なかった自分を悔やみながら彼は二つのボトルを取り出す。

 

〔DOCTOR!〕

〔GAME!〕

〔BESTMATCH!〕

 

〔Are you ready?〕

 

「ビルドアップ」

 

〔EX-AID!〕

〔MIGHTY JUMP! MIGHTY KICK! MIGHTY MIGHTY ACTION X!〕

 

「ぉ……おぅ……」

 

 龍我はビルドの新しいフォームを見て言葉を失った。

 その姿はゲームキャラのような頭部や胸部、そして何より、全身がピンク色になっていた。葛城巧のデータにもあった300年前の仮面ライダー。

 その一人であるエグゼイドと腰のドライバー以外全く同じ。

 

 ビルド エグゼイドフォームとなった戦兎はドリルクラッシャーでバグスターに対抗する。

 すると、バグスターがこれまでとは違い怯む。

 

「そんな身なりでよくやるよ」

 

「何だよ、別に奇抜でも何でもないだろ!多分」

 

「鏡持ってこようか?」

 

 バグスターの数が減り劣勢から一気に優勢になる。だが、そこに黒い影が接近しつつあった。

 

 

「ファウストめ、バグスターまで利用するとは……!」

 

 黒い影、ゲンムは接近した自らに歯向かってくるバグスターを見て歯を食いしばり、

 得物であるガシャコンブレイカーを手に視界に移るバグスターを切り捨てる。

 

 レベル0の能力であるアンチバグスターエリアによって弱体化したバグスターにとどめを刺すべく、彼は得物の手前に存在するスロットに白いガシャットを装填する。

 

〔GASHAT!〕

〔キメワザ!〕

 

「消え失せろ」

 

〔DANGEROUS CRITICAL FINISH!〕

 

 白と黒の不気味なエネルギーをまとった刀身を斜めに振り落とし、地面に溝を作りながらバグスターの残党を一掃する。

 

「……」

 

 彼は拳を握り締め静かに怒りを募らせた。

 

『ウイルスは使い方によっては薬にもなる。バグスターウイルスだって同じだ』

 彼は何度も何度もこう提唱してきた一人の戦士を思い出す。

 結果、その夢は幻となった。バーテックスの襲来によって……

 

 そんな存在を仕方がないとはいえ殺めてしまった自分に怒りを募らせ、拳を握り締める。

 

 そんな彼の視線の先に、見慣れた姿の男を発見する。

 

「永夢……?」

 

 

「全部倒した……ぽいな」

 

「そんなことより変身解除しろよ。目立って仕方がねぇ」

 

 ドライバーのボトルを抜こうとした瞬間、男の声が響く。

 

「待て!」

 

「ん?」

 

「え、は?どういう……関係?」

 

 声の主であるゲンムとエグゼイドフォームのビルドを交互に見て何が何だか分からなくなってきた龍我。

 

「永夢、なのか?」

 

「エム?あんたの知り合いか何か?」

 

 自分の知る人物ではない事を確信したゲンムはビルドドライバーの二本のボトルに手をかける。

 

「それを回収させてもらう」

 

「何すんだよ!」

 

 変身が解除された戦兎がボトルを取り返そうとするが、それは叶わなかった。

 

「……いや、これだけ渡しておこう」

 

 ゲンムは二本のうち一本であるゲームフルボトルを戦兎に返す。

 

「バグスターウイルスはバグスターウイルスでしか攻略できない。これを忘れるな」

 

「……」

 

 放心状態の龍我と唖然とする戦兎を尻目にゲンムは姿を消した。

 


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