佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである   作:鮭愊毘

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第二十九話 怒り狂うドラゴン

「ヘッ」

 

 身体を酷使したせいか先ほどまで笑っていた顔が引きつる戦兎。

 今の彼の右の手の甲には勇者でいう満開ゲージ、左には制限時間を占めるゲージが存在。どちらも五節に分かれている棒状のゲージだ。

 

 この姿を長くは維持できない。維持できたとしても、供物としてささげた場所の大半が機能していないため生活に支障が出るだろう。

 

 その時、バーテックスが体を動かし彼を振り払おうとする。

 自分のことに集中していた彼は姿勢を崩し落下。この衝撃で追加武装である黒い巨大な腕が配線を剝き出しにして崩壊。追加武装が無くなっても、彼自身がまだオーバーフロー(疑似満開)を発動した状態だった。

 

「さっとん!」

 

 園子が駆け寄る。

 

「ぁあ……最悪だ―――」

 

 体から力が抜け、元の姿に戻り気を失う。

 

 

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

「そうだ!それこそが、兵器としてあるべき姿だ!!」

 

 正常な思考が失われ、幻徳を殴り続ける龍我。

 

「どっちだ!香澄や大勢の人を殺す機械を動かした腕は……どっちだァァァァ!!」

 

「貴様に俺は殺せない」

 

 幻徳が龍我の左拳を止め、それを握りつぶすように力を入れる。

 

「そうかよ。だったら」

 

〔TWIN BREAKER!〕

〔ATTACK MODE!〕

 

 ツインブレイカーを召喚し、レイジングパイルを幻徳の左腕に突き刺す。

 

「龍我!それ以上はよせ!そいつの目的はスクラッシュドライバーを使ったデータの―――」

 

「――――黙れよ」

 

 龍我は地面に刺さったツインブレイカーを手放し、ドライバーのレバーを倒す。

 ドラゴンスクラッシュゼリーの成分がさらに絞り出され、そのエネルギーが右足に集中する。

 

「テメェは引っ込んでろォオオオオオオオオオ!!!!」

 

〔SCRAP BREAK!〕

 

 一海も黙っているはずがなかった。

 自身のツインブレイカーにガトリングフルボトルと樹海化する前に回収したウルフフルボトルを装填。

 

〔TWIN BREAK!〕

 

「ウオォォォォオオオオ!!」

「うらぁぁぁ!!」

 

 ツインブレイカーのパイルとクローズチャージの脚部が激突する。

 

「ウワアァァアアアア!!」

「がはっ……」

 

 双方が吹き飛ばされ、変身が解除される。

 その後、バーテックスが全て倒され樹海化が解除された。

 

 

「早く倒さないと被害が反映されるだろ?だから――」

 

「言い訳はいいから」

 

 勇者とともに祠に戻され、先ほどについての説明を七人から求められた戦兎。

 

 先ほど彼が使っていたのは葛城巧の研究データと共に回収したトランスチームシステムと、二年前の乃木園子から回収したモノを基にした勇者フルボトル。

 

 一部が改変されているが、一定時間だけ勇者の姿に戻ることができる。そして色々なものが不安定になる。

 このシステムが何のためにあるものなのか。これはわからない。

 彼がドライバーを喪失した際の保険なのか、それとも―――

 

「バーテックスに、ファウストに対抗するにはこれしかないんだよ」

 

「……」

 

「これしか―――」

 

「――ふざけないでよ。自分のことを守れない人がそんなこと出来るわけ無いでしょ!」

 

「でも俺は戦わなくちゃいけねぇんだよ!万丈の冤罪を晴らすため、ファウストの被害に遭った人のため、今生きている人のため!」

 

 戦兎の顔には焦りにも似た何かが浮かんでいた。

 後遺症が無いとはいえ変身している間、ネビュラガスに体を侵されるクローズチャージのシステムを龍我に渡した事、葛城巧が死んだ事、自分が桐生戦兎となって園子と再会した時、まともに謝罪ができなかった事。全てを抱え込んでいる。

 

 そんな彼を園子はそっと抱きしめる。

 

「もう一人で抱え込まなくてもいいんだよ。私がついてるから」

 

「園子……ごめん」

 

 すると、彼女は小指をフック状に曲げて戦兎の前に出す。

 

「指切り?」

 

「うん」

 

 戦兎も小指を出し、園子の指と絡ませる。

 

「「ゆーび切り拳万 嘘ついたら針千本飲ーます、指切った―――」」

「―――死んだら御免」

 

「!?」

 

 指切りの『指切った』には続きがある。

 これが今園子が言った『死んだら御免』である。

 これには『死んで約束が守れなかったらごめんね』以外にも『(嘘ついたら)死んで詫びろ』という解釈がある。

 園子はどちらの意味で言ったのか。それはわからないが、お互いが無茶をしないことを約束したことに変わりはない。

 

「えへへ~。これからもよろしくね! さっとん♪」

 

「よろしくな、園子」

 

 

「え、何?この二人どういう関係?」

 

「あわわわわ……」

 

「Oh……乃木さんちの園子って意外と大胆……」

 

「どっかの誰かさんがうるさくなるからやめとけって言おうとしたのに……」

 

「なにおぅ!?」

 

「『風』とは言ってないでしょうが!」

 

 

「……」

 

 nascitaの地下室。龍我はそこにいた。

 近くの机には首と尻尾のないクローズドラゴン、そしてパーツが散乱している分解途中のビルドドライバーがあった。

 

『怒り、憎しみ、悲しみ……全てをぶつけろ!』

『人でなしは―――』

 

『君たちも同じだろう?』

 

 

「チッ!」

 

 あの時の自分はまるでスマッシュだった。理性がほとんどなく、ただひたすら視界に移った動くものを殴る。

 それに幻徳をあそこで殺せていたとしても、誰も返ってはこない。

 

「……」

 

「万丈」

 

 戦兎が帰ってきた。彼は部品の散乱したドライバーを組み直し、

 AIと自立稼働をオミットしたクローズドラゴンを龍我に渡す。

 

「俺と戦え」

 

 

 壁の外。神樹の結果外を指すここに一人の戦士が立っていた。

 仮面ライダーゲンム。

 彼は星座の名を冠したバーテックスが組みあがっていく光景とともに、あるものを目撃していた。

 

「バカな!あり得ない……」

 

 この光景を認めたくない彼は結界の内側に戻る。

 

 彼は一つの結論を見出す。ネビュラバグスター、もといバグスターの復活はファウストの仕業ではない。

 

「ゲムデウス……データが残留していたとは……」

 

 

「こんなことをして解決するとは思っていない」

 

「……」

 

「でも、お前には迷いがある。それを今直してやるよ」

 

 戦兎が先ほど修理したドライバーを装着する。

 修理したといっても完全には至っていないため変身は一回だけ。その上、必殺技発動には耐えられないだろう。

 

〔KAIZOKU!〕

〔GATLING!〕

 

〔Are you ready?〕

 

「変身」

 

 戦兎はビルド 海賊ガトリングフォームに変身。

 

〔WAKE UP!〕

 

 ただのガジェットと化したクローズドラゴンにドラゴンフルボトルを装填。

 

〔CROSS-Z DRAGON!〕

 

〔Are you ready?〕

 

「……」

 

〔WAKE UP BURNING! GET CROSS-Z DRAGON!〕

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