佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである   作:鮭愊毘

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第三十話 正義のファイター

「来いよ」

 

「……どうなっても知らねぇぞ!」

 

 龍我が戦兎を殴る。

 だが腕への殴打は流し、頭部への殴打は防御もせず食らう戦兎。

 

「俺はッ……理性を失いかけてた……!」

 

 信じられるのは自分だけ。拳に力を入れ思い切り突き出す。

 

「……」

 

 防御も何もしていない戦兎。

 ビルド 海賊ガトリングフォームは装甲を軟化・振動させて敵の攻撃を受け流すハーフボディと足と拳に火薬が仕込まれ、文字通り爆発的な力を出せるハーフボディの組み合わせ。

 トライアルフォームはこういったベストマッチでは発揮できない力を出すことができる。その組み合わせは現在、143通り(ドラゴンフルボトルを含む)。

 

 ひたすら殴ることしか考えていない龍我の拳を受け止め、突き放す。

 

「本気出せよ!」

 

「……」

 

 ボルテックレバーを回す龍我。

 

〔READY GO!〕

〔DRAGONIC FINISH!〕

 

 青い炎をまとった拳を戦兎の装甲の厚い箇所にぶつける。

 

「んぐっ…………はぁ」

 

 流石にこれは受け流せず、変身が解除され、応急処置されたドライバーは再び破損した。

 

「俺はもう、スマッシュみたいなもんなんだ。最初からな。だから冤罪に遭ったんだ」

 

 龍我はこう言い残し去っていった。

 

◇

 

「う~っす、遊びに来たぞー」

 

 nascitaに一海が入店する。

 

「悪いが、店主は留守だ」

 

「そうか……。悪い知らせだ。氷室幻徳が新しい仮面ライダーを―――」

 

『速報です!ファウストが声明を発表しました!』

 

「あーあ」

 

『皆さん、ファウスト最高責任者の氷室幻徳です。我々は以前、仮面ライダーを軍事兵器にするとお伝えしました。

 今回は、それの完成を発表します。

 

 

 "ローグ"。これが、新しい仮面ライダーにして最強の兵器……

 これを使い、我々は腐った世の中をリセットする。この言葉が何を意味しているかは、あなたの解釈次第―――――』

 

「仮面ライダーローグ……」

 

「ナイトローグの改良型か」

 

◇

 

「……はぁ」

 

 龍我は町のあたりが見回せる草むらでため息をついていた。

 

「最悪だ。俺はこれからどう生きてけばいいんだよ……」

 

 彼はまぶたを閉じるが、人の気配がしたためすぐに開けた。

 

「何やってるんですか?」

 

「それはこっちのセリフだ。友奈」

 

「悩み事でも―――」

 

「―――関係ない。帰れ」

 

「と言われても……用事がありますから」

 

「……部活か?」

 

「はい!猫ちゃん探してるんですよ!」

 

 友奈は猫の絵が描かれた紙を見せる……が、絵が独特すぎた。

 

「…………新手のスマッシュ?」

 

「なっ……失礼なー!」

 

「冗談だよ。それとさ」

 

「?」

 

「猫がこんなところに来ると思うか?」

 

「…………はい」

 

「さては、迷子だな?」

 

「うぅ……そ、そんなことより、悩んだら相談ですよ!万丈さん!」

 

「何それ」

 

「勇者部7か条の一つです!」

 

「……俺は勇者部員でも勇者でもねぇよ」

 

 龍我は立ち上がり、帰る支度をする。

 

「そんなことないですよ」

 

「……どうしてそう言い切れる」

 

「だって佐藤さん言ってましたよ?『万丈はバカでアホで義務教育やり直して来いってぐらいの馬鹿だけどすごく良い奴だ。主役の座を取られちまうほどの、正義のヒーローだ』って!それに、今まで人のために戦ってきたんですよね?立派な勇者ですよ!」

 

「それ慰めになってねぇし。でも、ありがとな」

 

 友奈の頭をなでようとした龍我だったが、それは直前で止められた。

 

「?」

 

「俺はまだ死にたくねぇ。狙撃なんてごめんだよ……」

 

「?」

 

◇

 

「スクラッシュドライバーにはスクラッシュドライバーしかない。でもお前は―――」

 

「――ある」

 

「え?」

 

「対抗策はある」

 

 戦兎はプロジェクトビルドのデータを一海に見せる。

 

「プロジェクトビルドにはまだ、続きがある」

 

 戦兎はパソコンに葛城からもらったUSBメモリを刺す。

 すると、『PROJECT BUILD UNFINISHED DATA』という言葉とともにあるデータが表示される。

 

「これは―――」

 

◇

 

「何だよこれ……」

 

 友奈と別れた後、龍我は目撃してしまっていた。ガーディアンとスマッシュが群れを成している光景を。

 

「止めるしかねぇ……。変身ッ!」

 

〔GET CROSS-Z DRAGON!〕

 

「逃げろ!早く逃げろォ!!」

 

 近くにいた民間人にこう呼びかけながら戦う。

 しかし、ビートクローザーは破損しており、召喚は不可能。

 

〔DRAGON!〕

〔SHOUBOUSHA!〕

 

〔Are you ready?〕

 

「ビルドアップ!」

 

 ドライバーのクローズドラゴンを外し、ドラゴンと消防車のボトルに入れ替える。

 遠距離の敵には火炎放射・放水、近距離は格闘と、今の状況ではクローズより有効な組み合わせだが

 

『全てをぶつけろ!』

『貴様の女を殺した人間がここにいるぞ!!』

『殺人?人でなし?結構!でも、人でなしは―――

 

 

 

 

 君たちも同じだろう?』

 

「ウアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 幻徳の言葉を思い出し、苦しむ龍我。

 

「俺は人間だ!人でなしなんかじゃない!俺は約束したんだ……香澄に、冤罪を晴らすって!晴らしてお前の分まで生きるって!!」

 

 その時、堅い拳を持ったスマッシュの一撃が脇腹に直撃する。

 

「俺は人として生きる!生きたいんだァァァァァァアアアアアアアア!!!!」

 

◇

 

「万丈……さん?」

 

 龍我と会った場所からそう遠くに離れていなかった友奈。彼女は龍我の悲鳴のような叫びを耳にしていた。

 

「でも、どうしたら……」

 

 

「やれやれ。スクラッシュドライバーには後遺症はない。伝えるべきだったかなぁ……」

 

 呆れにも焦りにも見える表情をして戦兎が歩いてくる。

 

「こっからは俺の出番だ」

 

◇

 

「ガァァァアアア!! ゥウ……」

 

 変身が解除された龍我は地に伏してしまった。その周りをガーディアンやスマッシュが取り囲む。

 

「生キルンダ……生きるんだ!」

 

 と、その時、一つの大きなモノが炎を纏いスマッシュやガーディアンの群れを崩壊させた。

 

 

〔不死身の兵器! フェニックスロボ! YEAH……〕

 

 

「全く、なーにやってんだか」

 

「戦兎……」

 

「立てよ」

 

「……俺は―――」

 

「―――スマッシュみたいなもん、まだこんなこと言ってんのか?」

 

「……」

 

「『人のために力を使うやつは意味わかんないけど、無駄じゃないってことはわかる』

 こう言ったのはどこのどいつだっけ?」

 

「……」

 

「そのベルトを着けて、変身して、なんだかんだ言って人のために戦ってる……

 正義のヒーロー!

 それができるのは、人でなしでもスマッシュでもない……

 

 万丈龍我だけだろうが!!」

 

「!」

 

「お前もバカで仮面ライダーなんだろ?立てよ」

 

「も?お前、やっと自覚したのか!」

 

 友達を見つけたかのように龍我の顔に笑顔が戻る。

 

「うるせぇな!現実を見るようになったって言えよ!」

 

 龍我が戦兎の肩を借りて立ち上がり、クローズドラゴンをドライバーに装填する。

 

〔CROSS-Z DRAGON!〕

 

〔Are you ready?〕

 

 

「変身ッ!」

 

 

〔WAKE UP BURNING! GET CROSS-Z DRAGON! YEAH!〕

 

 

「今の俺は……負ける気がしねぇ!」

 

「勝利の法則は決まった!」

 

 戦兎が最初に駆け出し、ビルド フェニックスロボフォームの左腕でスマッシュをつかみ、龍我に投げる。

 

「ッしゃあ!」

 

 飛んできたスマッシュに膝蹴りをかまし、自分とガーディアンの間にスマッシュが到達したするとき、

 

〔DRAGONIC FINISH!〕

 

「うぉおりゃあああああ!!」

 

 ガーディアンをスマッシュごと葬り去る。

 

 

〔オクトパスライト! Yeah~!〕

 

 戦兎は形態を変え、右肩のタコの足を使いスマッシュを誘導する。

 

 その時、バキッという音がドライバーから鳴る。

 

「あっ」

 

 一瞬怯んだものの、彼はトランスチームガンと一本のボトルを取り出す。

 

〔MIST……MATCH!〕

 

 体が蒸気に包まれる。そこへガーディアンが戦兎の頭の位置に銃剣を突き刺す。

 

「戦兎!」

 

 銃剣が掴まれる。

 蒸気が晴れ、あの時と同じように勇者の姿になった戦兎が姿を表す。

 

「さあ来いよ!」

 

 

〔SCLAAASH DRIVER!〕

 

 龍我はドライバーを交換し、クローズチャージへ変身。

 

〔DRAGON IN CROSS-S CHARGE! ブルァアアア!!〕

 

 ツインブレイカーにクローズドラゴンを装填する。

 

〔READY GO!〕

 

 

「万丈ォォ!!これでフィニッシュだ!」

 

 戦兎が鎌でスマッシュを龍我の前に吹き飛ばす。

 

〔LET'S BREAK!!〕

 

「うぉぉおおおらぁぁぁ!!」

 

 パイルが思い切り突き刺さり、爆散する。

 

◇

 

 帰還した二人。龍我は寝ころび、戦兎はパソコンを操作する。

 

「まーたドライバー壊れちまったのかよ。資材ないんだろ?」

 

「ぐうの音も出ない……」

 

 でも、こいつを使いこなすいい機会だと、トランスチームガンを持つ戦兎。

 

「それより問題なのは……」

 

「パンドラボックス……ぶっ壊せばいいんじゃね」

 

「……それだ」

 

「そうだよな、流石にぶっ壊すのはよくな――――えぇ?」

 

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