佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである   作:鮭愊毘

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第三十三話 蝙蝠のホークス

『逝っていい……ってさ』

 

『ま、待ってくれ!落ち着け!偉大な私の頭脳を、この世から消してはならない!

 待て!待つんだ!!』

 

『……』

 

『ぐああああああああああ!!!』

 

『さよなら……父さん』

 

 

「やっぱ特撮はこうだよなぁ」

 

 この日、龍我は気晴らしのため借りたDVDを視聴していた。

 正義と悪ではなく、正義と正義がぶつかり合う物語。だが、今のシーンで倒された者は登場人物の目から見ても、第三者(視聴者)の目から見ても極悪人と呼ぶべき存在だった。倒した側の人物もこうする直前に仲間を殺されており、彼の未練を断ち切ることが出来ただろう。ハッピーエンドとは言えないが、彼らが救われたことに変わりはない。

 

 それはそうと、最近戦兎の様子がさらに変わった。

 今まで節約してきた資材を叩いて何やら開発を行っている。彼の机には、以前ラビットタンクスパークリングを開発した時使用した器具を再利用してドラゴンフルボトルとドラゴンスクラッシュゼリーの成分を採取していた。

 さらに、フルボトルを一本装填できるガジェットも置かれていた。

 今龍我の持っているクローズドラゴンはAIと首・尻尾が無い一見作りかけに見えるもの。

 

 そして、ビートクローザーの修理も開始したようだ。

 

「―――ぉ!万丈!いるか!」

 

「噂をすればってやつだな」

 

 汗を掻き慌てている様子の戦兎が帰宅した。

 

「テレビつけろテレビ!」

 

「? あぁ」

 

 入力切替のボタンを押して番組が見れるようにする。

 

「ああ……!最悪だ……」

 

「録画でも忘れ……」

 

 画面を見た龍我が固まる。画面には、『ファウスト掃討作戦』という緊急の生放送が始まっていた。

 

 まず最初に移ったのは、大赦が配備している白いガーディアン。本庁所属のものと違って装甲の面積が増えたタイプだ。

 

 次に移ったのは、氷室幻徳だった。

 

「はあああああああ!?」

 

 今まで散々表舞台に出てるのにどうして大赦側として顔を出せるのか。

 答えはすぐに出た。今までのファウストの声明は、画面にファウストの紋章が移され、ナイトローグの若干加工された声の声明が流されたもの。一般市民は幻徳がファウストであると知る由もなかった。

 

『これよりファウスト掃討作戦を実行する』

 

 幻徳の一声で、ガーディアンと警備兵から構成される特殊部隊がファウストの施設に侵入する。

 

 その数分後、部隊が満身創痍の状態で施設から出てくる。この後ろからナイトローグが出現し、ガーディアンを撃ち抜く。

 

 

「何であいつとローグが一緒にいるんだよ……」

 

「……ハザードトリガーか」

 

 一海はハザードトリガーは二つあり、その一つがファウストにあると言っていた。

 ―――――そして、これがビルドドライバーの強化以外の使い方もできるという事も。

 

 

『私が創ったファウストを、大赦ごときに潰されてたまるか!』

 

 ローグの声は、全くの別人だった。

 

『撃てェェェェェ!!』

 

 幻徳の叫びを打ち消すように、銃声が響く。無論、これがローグに効くはずはなかった。

 

 その時、テレビの映像が途切れる。流れ弾が当たったのだろうか。

 

 数十分後、映像が回復する。

 そこには、ローグが倒れ、変身が解除される様が移されていた。

 

『この私が……』

 

 先ほどまでローグに変身していた者が拘束され、テレビには映らないが、幻徳と目があう。

 

『嘘だ……』

 

 彼の目に映っていたのは、悪魔のような笑みを浮かべた幻徳の姿だった。

 

 こうして、ファウストは壊滅した。

 

 

 

 "表舞台から"の話だが。

 

 

 

 

「幻徳の奴、ついにトチ狂ったか?」

 

 後日、テレビで中継されたファウストのアジトの跡地、ここにブラッドスタークが現れていた。目的はボトルの回収。

 

「おー、あったあった。俺の愛しのボトルちゃん」

 

 赤いパネルにセットしてあるボトルをパネルごと回収する。

 

「―――――こうすればお前が食いつくと思ったぞ。葛城……」

 

 その背後から、銃を構えた幻徳が現れる。

 

「葛城巧は死んだ。俺はただの、喫茶店店主(収入なし)さ」

 

「……そうか。石動、お前はこの世界に失望していたはず」

 

「そーんな時もあったなぁ。でもよ、あいつらと関わって変わったんだよ。世の中にはまだ有望なやつがいる。そいつらの応援をしてやろうって。どうせ死ぬなら、嘆くよりも別の事して死にたいだろ?」

 

 スタークが幻徳に得物を向ける。

 

「残念だ。貴様の力ならこの世界など簡単に真っ新にすることが可能なはずだったのに」

 

「パンドラの箱(ボックス)に必ずしも希望が入っているとは限らない。前代未聞な程大きく、強く、手出しが出来ない絶望が入っているかもしれない。

 それでも開けるか?それとも――――」

 

 風の音が響くこの場所が一瞬で静かになった。

 そして、世界が変わった。

 

「―――天神と一緒に死ぬか?」

 

「天神だと?」

 

 

 戦兎達もまた、樹海に立っていた。ここからは見えないが、勇者達も同じだろう。

 

「さてと、今日もちゃっちゃと終わらせますか!」

 

 強気な龍我の腰には、ビルドドライバーでもスクラッシュドライバーでもなく、これらよりも派手な色をしたゲーマドライバーが装着されていた。

 

「決心がついたようだな」

 

 バグスター特有の身体をデータと化して移動する術を使って来た黎斗が龍我らと並ぶ。

 

「まだてめぇを信用したわけじゃない。でも、俺しかいないってのなら……」

 

 これにそうかと感心する黎斗。この後、戦兎にドクターフルボトルは返せなくなったことを平謝りしたが、戦兎は呆れにも怒りにも見える表情で

 

「あっそ」

 

 と言った。

 

 しかし、長々と話をしている場合ではない。

 結界の外から、二つの巨体が迫ってくる。

 一つは、獅子座(レオ)天秤座(リブラ)牡牛座(タウラス)水瓶座(アクエリアス)と融合したレオ・スタークラスター。

 

 もう一つは、300年前に倒されたはずのバグスター ゲムデウスのデータと星屑を使って誕生したモノ。左腕が剣、装飾として勾玉が点在する。

 

 

「グレードX-0……」

 

 黎斗が黒と白のライダーガシャットを起動する。

 

〔MIGHTY ACTION X!〕

〔DANGEROUS ZOMBIE!〕

 

 龍我が黎斗のものの二倍の大きさのライダーガシャットを起動。

 

〔MAXIMUM MIGHTY X!〕

 

 戦兎がレリーフだけ色の施されたフルボトルをドライバーに装填する。

 

〔PHOENIX!〕

〔ROBOT!〕

〔BESTMATCH!〕

 

 

Are you ready?

 

 

「変身」

「変身ッ!」

「変身!」

 




Hoax:ホークス(デマ、でっちあげ)

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