佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである   作:鮭愊毘

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第三十五話 掴み取るビクトリー

「す、すげぇ……」

 

 天神の衝撃波により変身を解除され膝をついた戦兎が龍我の姿を見て目を丸くする。

 流星を模した装甲は黄金の輝きを有しており、これを目の当たりにしてる天神は驚きながらも怒りを見せていた。

 

≪ウアアアアアアア!!≫

 

 天神の頭部を目指し高く飛んだ龍我を、天神は左腕の剣を突く。

 彼の身体に剣先が触れようとした瞬間、彼の体が天神の背後まで移動した。

 

「これがムテキの力…………がはっ!!」

 

 自分の意思とは関係なく発動した力に困惑する。その隙をつかれ、龍のような腕によって叩き落される。

 

 ムテキゲーマーはありとあらゆる攻撃を無効化する。だが、それは表面だけ。攻撃されれば衝撃が伝わり、疲労もたまる。

 

「はあっ!」

 

 再び高く飛び、天神の右腕を切断しながら頭部へガシャコンキースラッシャーを振るう。

 天神が姿勢を崩す。しかし、これを利用して下半身の大剣を隙だらけの龍我にぶつける。

 

「……くっ…………」

 

 咄嗟に得物を構えるが、空中で碌に力を入れられず、再び地面に落下。

 

≪勝負あったな≫

 

 右腕を再生させた天神が倒れた龍我の胸部に下半身の大剣の先を突きつける。

 

「……終わりだ、クソが」

 

≪終わるのは貴様の方だ。ゴッドである私に歯向かわなければこんなことにはならなかったものを……≫

 

〔キメワザ!〕

 

「うるせぇんだよ!ゴッドはゴッドでもてめぇは厄病神だろうが!」

 

≪何だと……?≫

 

「子供が勇者になって戦う羽目になったのも全て、てめぇが原因だろうが!!」

 

 龍我が剣先を殴り、立ち上がる。

 そして、得物を振るいながら天神を見下ろす位置まで上昇。

 

≪人間ごときが……!≫

 

「一生わからねぇだろうな!人間の、力ってもんを!!」

 

 

 〔HYPER CRITICAL SPARKING!!!〕

 

 

 金色に輝いた戦士が天神にキックをぶつける。

 最初は右足、反動を利用して左足でもう一度。これを何度も繰り返した後、胴体を貫いて着地する。

 

≪――――ハッハッハッ!!所詮、人間の力など……≫

 

 風穴の空いた胴体はすぐさま修復された。先ほどの連続キックも効いていない―――

 

 ―――かに思えた。

 

≪―――――バカな!≫

 

 天神の装飾の勾玉に亀裂が走る。先ほどのキックの攻撃判定が今になって発動したのだ。

 ムテキゲーマーは攻撃をものともしない他に、自分の与えた攻撃の判定を任意で操作し、その数も自由。

 つまり、一発でも当てればそれを十倍にも百倍にもできる。

 300年前も同じ事を行ったが、その時の相手はゲムデウス。これを天神は見ていたものの、詳細までは知らなかった。

 

≪ゴッドで……ある…………こ、の……≫

 

 修復しようとした箇所から攻撃判定が発動し、実質修復能力が無力化された。

 

≪……我…………が……っ……≫

 

 一つ、また一つと遅延性の毒のように攻撃判定が発動する。

 そしてついに、

 

≪グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!≫

 

 天神の乗っ取ったゲムデウスの体が天神ごと消滅。

 

〔究極の一発ゥ!〕

完全勝利!!

 

 

「はぁ、やった……か」

 

 龍我はドライバーからガシャットを抜き、変身を解除する。

 そこへ、戦兎らが駆けつける。

 

「やったな、筋肉バカ!」

 

「ああ、やったぞ。ムッツリバカ」

 

「誰がムッツリだこの野郎!」

 

「バカには突っ込まないんだな」

 

 

「……勝利を喜ぶのはいいが、一つ忘れてないか?」

 

 スタークが彼らに接近する。

 

「スターク!?」

 

「あ、そうだったな」

 

 戦兎はスタークに耳打ちをし、スタークはそれを若干嫌がりながら承諾する。

 

 スタークは友奈の前で頭を下げた。―――正確には、戦兎が彼の角を掴み、強引に下げさせている。

 

「すいませんでしたぁ!」

 

 声を元に戻してスタークが謝罪する。

 

「えっと…………私に……ですか?」

 

 内容は、彼、石動惣一がかつて作ったコーヒーを飲みほした事についてである。

 

「私、全然気にしてませんから!」

 

「あ、そう?」

 

 惣一が顔を上げる。が、戦兎にまた下げられる。

 

「戦兎、もうよくないか?それ折れそうだし」

 

「……そうだな」

 

 惣一は変身を解除し、戦兎のほうを向く。

 

「色々、悪かった」

 

「……」

 

「俺とお前らはやり方が違っただけで、志は同じであることをわかってほしい」

 

「……」

 

 二人の間に不穏な空気が流れる中、風が口を開いた。

 

「石動さん……だったんですね」

 

「ん?」

 

「この前、轢かれそうになった時……」

 

「え?」

 

「助けてくれましたよね。改めてお礼をさせてください」

 

「……待って。え、何?お前ら轢かれそうになったの!?」

 

「ブラッドスタークって、あなたですよね?」

 

「まあ、そうだけど……」

 

 

「なぁ戦兎、お前コブラのボトル持ってたよな。何でマスターがスタークになってるんだよ」

 

「新しく作ったんでしょ」

 

 

「そいつ、何か言ってなかったか?」

 

「愛と平和のためとか何とか……」

 

 風のこの言葉を聞いた龍我が戦兎を見つめる。

 

「愛と平和……ラブアンドピース。なーんかどっかの誰かさんが言ってたんだよなぁー」

 

「なーんの事でしょうねーーー」

 

 戦兎は、樹海化が解除されるまでずっと龍我の視線から逃げていた。

 

 

「というわけで、俺、石動惣一はnascitaに戻りまーす!」

 

 後日、惣一は何事もなかったかのように店に戻って来た。

 

「戻りますじゃねぇよ。色々問題があるだろうが!」

 

「ファウストのことか?確かめてみたが、見事に壊滅したぞ?」

 

「あのなぁ……」

 

「それよりも!」

 

 惣一はファウストから奪って来たボトルを見せる。

 

「……赤いパネルなんてあるのか」

 

「大赦にあるやつは青いぞ」

 

「へー」

 

「おい戦兎!」

 

「あ?」

 

「マスターはどうするんだよ!今まで散々やらされただろ!」

 

「あぁ、それは、友奈に謝罪したこと、そして今までの行いを洗いざらい猿渡や大赦に吐いてもらって判断した結果……許すことにした」

 

 このことを聞いた龍我が苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「マジかよ!人が良すぎるだろ!」

 

「世の中こうじゃないと生きてけないんだよ。な、マスター」

 

「俺は誰も殺してねぇ!」

 

「わかってる」

 

「……そのセリフ、どっかで聞いたことあるな……」

 

 

 その夜、彼はパソコンを開いていた。

 あることを調べるためだ。ムテキについてではない。あの戦いの後、ゲーマドライバーとガシャットが消えた。神出鬼没なあの人物が持って行ったのだろう。

 

「……あった」

 

 彼は目的のデータを発見した。ハザードトリガーの書きかけのデータである。

 

「死ぬよりももっとタチの悪い代償……か」

 

 パソコンを閉じ、眠りにつく。

 

 

 

 

 残り11%

 

 

 




『……とんでもないもん作ってくれたな』
『そいつを使うのは止せ!』
『N.S!N.S!N.S!エブリバディセイ!』
『お前には護ると誓った女がいるんだろ!』
『もっと強くなるんだ……!』
『何で止めねぇんだよ!』

『俺は……俺は……』

次回 ~漆黒のドラゴンファイター~

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