佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである   作:鮭愊毘

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第三十七話 漆黒のコントロールファイター

「まさか、その姿は……」

 

 余剰エネルギーの放出を兼ね、黒煙を出すクローズを見て戦士は多少狼狽えた。

 ハザードトリガーはビルド専用のアイテム。同じドライバーを使っているとはいえ、ありえないと。

 

「行くぞォォォォ!!」

 

 城壁のような盾を構えるキャッスルハザードスマッシュに右拳を叩きつける。

 

 拳が盾に触れた瞬間、ドラゴンのボトルとスクラッシュゼリーの成分を溶かし込んだビートクローザーですら傷一つつけられなかった盾に亀裂が走り、何とか形を保っていられるまでになった。

 

〔READY GO!〕

〔DRAGONIC ATTACK!〕

 

 そこへドラゴンフルボトルとハザードトリガーの力を集中させた蹴りを食らわせる。

 

 スマッシュの盾を貫通し、胴体に大きな穴を開ける。

 と同時にスマッシュが爆散し、nascitaの壁も大きな風穴があいた。

 

 

「あぁ……!!俺の店が!」

 

 戦士と交戦中の惣一が車一台は平気で入れるような穴の開いた店に落胆する。

 

「悪い。またやっちまった」

 

「またぁ!?」

 

「っ……」

 

 

「あれを使える者がいたとは……」

 

 戦士はネビュラスチームガンを足元に連射。発生した煙に身を隠し、撤退した。

 

「おい待てよ!……くそっ」

 

 龍我は戦士を逃がしたことを悔やみながらドライバーからクローズドラゴンとハザードトリガーを外し、変身を解除する。

 

「いいじゃないか。パンドラボックスは守れたし、お前も自我を失うことなく戦えた。そういう意味では俺たちの勝ちだ。

 

 どうだ?それの使い心地は」

 

「あー……」

 

「ん?」

 

 龍我の足から力が抜けていくように見える。

 

「なんかだるいわ……」

 

「万丈?万丈?」

 

 倒れた龍我を惣一は店内に運び、この戦いは終わった。

 

 

「何故避難など無駄な事をした」

 

 ファウストの残党、正確には、首領と幹部のアジトでは、幹部である男に首領の氷室幻徳が苛立ちを見せていた。

 

「無駄ではありません。若者に死なれては計画に支障がでる恐れがあります。

 貴方様の計画が無事遂行されたとしても、若者がいなければ全てが無駄になる」

 

「大赦を潰し、今までの世界をリセット、新たに作り替えることが我々の―――」

 

「我々の目的。神樹の加護を当然だと思っているこの世を正し、神樹が死してなお人間が生存できる世界を構築する……しかし、これを達成するために殺生は不要です」

 

「……そうか。そう、だったな。期待しているぞ」

 

 男がこの場を去った後、幻徳はスクラッシュドライバーと紫色のフルボトル、そして握りしめているスチームブレードに視線を落とす。

 

「殺生は不要、か。だが私には……この力が必要なんだぁぁああアアアアアア!!!」

 

〔DEVIL STEAM!〕

 

 

(まさか最後までエスコートしてもらうとは……)

(情けない……)

(流石先代勇者……やるわね)

(あ、風いたんだ)

(先輩髪長いっすね)

 

「……」

 

 夕方、戦兎はベンチに座り、落ち込んでいた。

『デートしたい』と園子を誘ってみたはいいものの、その先を考えていなかった。

 結局、園子にエスコートされる形になった。彼が出来たことは、精々買い物の支払いと荷物持ちだろうか。

 

「そんなに落ち込まなくても~」

 

「いや、男として、何か……ね」

 

 

 

 

「放せクソ仮面共が!俺は潰さなきゃいけない奴を見つけちまったんだよ!!」

〔SCLAAASH DRIVER!〕

 

 

 

 

「私はとてもいい機会だったと思うよ~。さっとんの慌て方かわいかったから~」

 

「か、可愛い?」

 

「うん、とってもと~っても良かったよ~!」

 

 

 

 

「変身!!」

〔ROBOT IN GREASE! ブルァァァァアア!!〕

 

 

 

 

「そ、そっかぁ。楽しめたんだな。よかった」

 

「そう言うさっとんは?」

 

「楽しかったよ。…………ただ」

 

「?」

 

 戦兎は先ほどから視界に移っている黄色いものを指さす。

 

「あれ、何?」

 

「なんだろう~」

 

 

(!?)

(ほら、やっぱり気づかれた!あんたの髪が長いからよ!)

(……)

(ああっ!?先輩が気絶してる!)

 

 

 黄色いものの正体が気になるものの、日が沈みかけていたので帰ることに。

 

 

「明日が楽しみですね~」

 

 

「「……え?」」

 

 

「園子ー、帰るぞー」

 

「は~い!」

 

 

 

 

 

「どこだ!出てこい!俺が心火を燃やして……燃やして…………」

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

 戦兎がnascitaに帰ってきた。

 

「おっ、どうだった?N.Sとの付き合いは」

 

「N.S?……あー、Nogi Sonokoね……」

 

「猿渡に絶対このこと話すんじゃないぞ。面倒なことになりそうだから」

 

「あぁ……

 ところで、万丈は?」

 

「ハザードトリガーの使用で、疲れちまったんだ。今寝てる」

 

「万丈が……あれを?」

 

「自我を失うことも暴走もなかった。安心しろよ」

 

「……」

 

「だが、あれの力を最大限に発揮できるのは戦兎、お前しかいない。

 お前の今のハザードレベルは4.9。決して弱くはないが、決め手に欠けている状態だ。

 その上、ハザードトリガーの制御プログラムは5.0以上でないと動かない。

 

 ハザードトリガーは変身者のハザードレベルを上げつつ、より強靭な装甲を創り出す機能をドライバーに与えている。変身者のレベルが低いと、レベルを上げる機能が過剰に働いて、組み込んだ制御プログラムが機能しなくなる」

 

「だったら、上げればいい話―――」

 

「――と、思いたいよな。ハザードレベルってのは、RPGのそれと同じなんだよ。だんだん上がりにくくなる。

 万丈は格闘家として戦う事に慣れていた大人。猿渡も大体そんな感じ。

 お前は、勇者として戦っていたとはいえ子供だった。だから、お前だけ成長が遅い」

 

「……」

 

「明日、大赦に来い。俺が鍛えてやるよ。じゃ、お休み」

 

「お休み」

 

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