佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである   作:鮭愊毘

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第三十八話 ハザードレベルを上げる新たなベストマッチ(前編)

「んっ……あー」

 

 戦兎が起床した。

 今日は日曜日。この時ぐらいはだらしなくていいだろうと一階に向かう。

 

「あれ、マスター?」

 

「マスターなら出かけたぞ」

 

 カップラーメンをすする龍我が答える。そして、出入り口のドアには、手紙が貼ってあった。

 

 

『俺は先に行ってる。好きな時間に来い。

 P.S. 先週の土曜、お前がハザードトリガーをいじっていた時に行われた野球大会で勇者部がチア部の助っ人をしていました。端的に言って、最高だった。写真撮ってお前にも見せたかったけど、会場は撮影禁止でした。ドンマイ☆』

 

 

「…………」

 

 

 大赦本庁に建てられた演習場。

 ここはファウストが表に出た頃に建設され、その強度から避難所としても利用できる。

 

「来たか」

 

「ああ」

 

「お前には所有しているボトルの全てを使って俺と戦ってもらう」

 

〔COBRA!〕

 

 惣一がトランスチームガンにコブラフルボトルを装填し、引き金を引く。

 

「蒸血」

 

〔MIST……MATCH!〕

〔CO COBRA……COBRA……FIRE!〕

 

 惣一はブラッドスタークへと姿を変える。

 

「ボトルの開発をした俺なら、どのボトルがどのような力を持っているかを即座に判断できる。お前は把握できてるか?」

 

「ここ数か月全く使ってないのもあるからな――――」

 

「もう一度言うがこれは訓練だ。ボトルの出力を抑えるため、振るのは一瞬にしてくれ」

 

〔RABBIT!〕

〔TANK!〕

〔BESTMATCH!〕

 

〔Are you ready?〕

 

「変身!」

 

 〔鋼のムーンサルト!ラビットタンク!Yeah!〕

 

 戦兎はビルドを象徴する形態、ラビットタンクフォームに変身し、左足のバネで惣一との距離を詰める。

 

「ラビットタンク。最初に発見されたベストマッチ。攻防ともに安定しているが―――」

 

 惣一の話を聞かずに戦兎はドライバーに装填されたボトルを交換する。

 

〔GORILLA!〕

〔DIAMOND!〕

〔BESTMATCH!〕

 

〔輝きのデストロイヤー!ゴリラモンド!Yeah!〕

 

「――って話聞けよ……」

 

 惣一はトランスチームガンを構え、発砲。

 その直後に得物をスチームブレードに変え、地面を蹴るが、ダイヤモンドボトルの力で銃弾がダイヤに変換され、地面にばらまかれる。

 

「小さなダイヤをばらまいて相手を転倒させる……やるじゃない。

 

 ってか、お前が金持ちなのこれ売りさばいたせいだろ!!」

 

「人の通帳勝手に見るんじゃないよ!」

 

〔TAKA!〕

〔GATLING!〕

〔BESTMATCH!〕

 

〔天空の暴れん坊!ホークガトリング! Yeah!〕

 

 背中の翼を展開し、ホークガトリンガーを乱射。

 

 惣一はそれに対抗して腕に付けられた管を伸ばし、鞭のように振り回す。

 

「うぉお!?」

 

 管が翼に絡まり戦兎は落下。

 

「空中は地上より隙が生まれやすい」

 

「だったら―――」

 

〔COMIC!〕

 

 続けてタカと忍者のボトルを交換しようとした時、惣一が得物を突き刺す。

 

「その交換の仕方は的になりやすい!」

 

「っ……ビルドアップ!」

 

 左手で得物を掴み、右手でボルテックレバーを回し、タカとコミックのトライアルフォームに変身。召喚された4コマ忍法刀を構える。

 

「トライアルフォームはベストマッチでは出来ない戦法を編み出せる。二つのボトルを使うビルドならではだな」

 

〔風遁の術!〕

〔竜巻斬り!〕

 

 戦兎は4コマ忍法刀から竜巻を発生させ、惣一の動きを止める。

 トライアルフォームで行うこの技は、ベストマッチのそれより弱体化している。

 

〔TEN!〕

〔TWENTY!〕

 

 これを利用し、左手のホークガトリンガーを20連射。

 銃弾は竜巻を貫通し、惣一の装甲に命中する。

 

「ぉお……先にタカではなくガトリングを交換したのはこのためか……!」

 

〔NINJA!〕

〔BESTMATCH!〕

 

〔忍びのエンターテイナー!ニンニンコミック!Yeah!〕

 

 紫のスカーフと忍装束をモチーフにした脚部が特徴的なハーフボディが装着され、ベストマッチフォームが完成。

 

「どうだ、こいつは使いやすいだろう」

 

 得物同士が弾き合う金属音をBGMに惣一が語る。

 

〔分身の術!〕

 

 戦兎が4コマ忍法刀を振るうと、煙と共に3体の分身が出現。惣一を囲むと同時に踏むと通電するまきびしをばらまく。

 

「4対1か……」

 

 惣一は周りのビルドを見回し、スチームブレードの柄と刀身を分割。これを挟むようにトランスチームガンに接続。

 

〔RIFLE MODE!〕

 

 合体武器のスチームライフルに消しゴムフルボトルを装填し、分身に向かって放つ。

 

〔FULLBOTTLE!〕

〔STEAM ATTACK!〕

 

 垂直にジャンプ、さらに回転しながら放たれたその銃弾は一つでは無い。

 ビルドの分身たちは回避を試みたが、先ほどばらまいたまきびしが仇となって次々と消滅。消しゴムの力もあってすぐに3体とも消されてしまった。

 

「さて、本体はどこだぁ?」

 

〔READY GO!〕

 

「ん?」

 

〔VOLTEC FINISH! YEAH!〕

 

「はぁああああ!!」

 

 いつの間にか上空に姿を現した戦兎がGペンのように尖った右爪先を突き刺すように迫る。

 だが、これらの特性を知り尽くしている彼には通用しなかった。

 

「なっ!?」

 

 右足を掴まれ、放り投げられる。

 

「詰めが甘かったな。ここはキックじゃなくて刀使ったほうが良い」

 

「な、なるほど」

 

「次だ」

 

〔PANDA!〕

〔LOCKET!〕

〔BESTMATCH!〕

 

〔ぶっ飛びモノトーン!ロケットパンダ!Yeaaah!〕

 

「その形態は左右のバランスが崩れやすい―――」

 

 フォームチェンジした戦兎は左腕のロケットを使って急加速。

 惣一にひらりとかわされてしまう。

 

「どうしたぁ?お前らしくない」

 

 すると戦兎は左腕のロケット型装甲をロケットとして連結。地面に発射。

 衝撃と爆風で惣一は彼を見失ってしまった。

 

 

〔レスキュー剣山!ファイアーヘッジホッグ! Yeah!〕

 

 

 そこへ、梯子が伸びて惣一の得物を弾き飛ばす。

 

「成程。そういう使い方もあるのか。…………でもさ、せっかく作ったんだからもうちょっと活躍させてくれない?」

 

 ロケットパンダの使い方にぐだぐだ言う惣一をよそに、戦兎は左腕のラダーから水を放射しながら惣一との距離を詰め始める。

 

 スチームライフルを拾う暇が無いと悟った惣一は両腕から管を伸ばす。

 

 戦兎はラダーを伸ばし、棒高跳びのように飛び上がる。

 

「空中は隙が生まれやすいと言ったはずだ!」

 

〔LION!〕

 

 戦兎は空中でハリネズミボトルをライオンボトルと交換。

 

〔READY GO!〕

〔VOLTEC ATTACK!〕

 

 自由落下しながら右拳を地面にぶつけ、衝撃波を発生させる。

 

「エネルギーを一点に集中した衝撃波か……だが、それは全身各部からエネルギーを吸収する必要がある!」

 

 衝撃波で引き離された距離を詰め直す惣一。

 

〔SOUJIKI!〕

〔BESTMATCH!〕

 

 〔たてがみサイクロン!ライオンクリーナー! Yeah!〕

 

 即座にライオン消防車からライオンクリーナーへ形態を変更。

 ベストマッチの補正によって強化された掃除機の逆噴射による風で体力回復の時間を稼ぐ。

 

〔STEAM SHOT! COBRA!〕

 

 風を突き抜けて銃弾が迫る。

 

「ッ!―――――ぐぁあ!」

 

 膝をついていた彼に回避行動は難しく、直撃は避けれたものの肩に少し当たってしまった。

 

「実戦だったら今、お前の肩は機能しなくなった。疲労した状態でも回避行動がとれるようにしなくちゃな―――」

 

 惣一は腰や背中を叩きながらこう付け足す。

 

「腰が……年だな。お前も気をつけろよ?」

 

 変身を解除して地面に座り込む。

 

「しばらく休憩だ。昨日店壊されたストレスで眠れなくて疲れが溜まって……」

 

「は、はぁ……あ、手紙のことなんだけどさ」

 

「どっ、どうしたん?」

 

「どうして俺を呼ばなかった」

 

「せっせせせせせ戦兎の邪魔しちゃいけないかなーって」

 

「……」

 

「よ、よぉし!休憩終わり!今から海賊レッシャーとオクトパスライトの後に大赦・ファウスト製のボトルを使っていくぞ!」

 

「逃げたな」

 




『俺タコ嫌いなんだよ!』

『ヘリなのか扇風機なのかハッキリしろ』

次回~ハザードレベルを上げる新たなベストマッチ(後編)~


次回予告はこれ以降、前編後編に分ける話のみにしていきます。

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