佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである 作:鮭愊毘
戦兎から逃げるように休憩を終えた惣一は、再びブラッドスタークへ変身する。
〔KAIZOKU!〕
〔DENSHA!〕
〔BESTMATCH!〕
〔Are you ready?〕
「変身!」
〔定刻の反逆者!海賊レッシャ―! Yeah!〕
戦兎はドラゴンやタンクとは違う色合いのブルーと、ライムグリーンが目立つ海賊レッシャ―フォームに変身。専用武器のカイゾクハッシャーを召喚する。
得物の姫反に付けられた刃で接近戦を図る。
「海賊レッシャ―は飛び道具の取り回しと命中率、海上航行能力が特徴の形態だ。接近戦ばっかやってないで撃ってみろ!」
惣一は戦兎との距離をとり、コブラを一体召喚。
「さあ、こいつに当ててみろ」
「……よし」
戦兎は得物を左手に持ち替え、右手で得物の矢にあたる部分を手前に引く。
〔各駅電車~〕
コブラは地面、壁を這いながら移動する。
〔急行電車~〕
「……」
だが、コブラもただ撃たれるのを待っているわけではない。時々尾で妨害をしながら移動している。
〔快速電車~〕
ただ追っているだけでは当たらない。あと何秒でどこにいるかを予測する必要があるが、なかなか定まらない。
〔海賊電車〕
カイゾクハッシャーの四段階目の攻撃の準備が整った。
「そこだ!」
右手を得物から放す。
それと同時に電車型の矢が発射され、コブラに命中した。
これに惣一は厳しい感想を述べる。
「あー……それの誘導性能があってこそだったな。隙も大きい。もう一回やるか?」
「でもさ、ビルドってたくさんフォームあるじゃん」
「そこなんだよなぁ……」
ビルドはベストマッチフォームだけでも30もの形態が存在する。
現在は20以下までしか使用できないが、それでも多いことに変わりは無い。
〔OCTOPUS!〕
〔LIGHT!〕
〔BESTMATCH!〕
〔稲妻テクニシャン!オクトパスライト! Yeah~!〕
「うげぇ」
毒々しさを醸し出すピンクと、長時間の直視に嫌気がさすイエローが特徴的な形態、オクトパスライトフォームに変身……と同時に惣一が拒否反応を示す。
「この形態は……あれだよ。タコ足で縛ったりタコ炭かけたり光放って色々できんだよ。自分で言っておいて何だけどさ、もう大赦・ファウスト製ボトルの訓練に移ろ―――」
戦兎は左肩の発光装置から光を出し、惣一の視界を遮る。
隙だらけの惣一を今度は右肩のタコ足を伸ばして彼の身体に巻き付ける。
「ぅおっ!? 放せ!俺タコ嫌いなんだよ!嫌いになったんだよ!」
「持ってるボトル全部使って戦うんだろ?」
「…………こんなの作らなきゃよかった」
◇
「はい次いこうか」
「えっ、もう終わり?」
「だってあの形態、特に言うこと無いし……」
これでスマッシュの成分から制作したボトル(制御が困難なキードラゴンを除く)を使用した訓練は終了した。
今からは大赦・ファウストで作られたものでの訓練を始める。
〔WOLF!〕
〔SMAPHO!〕
〔BESTMATCH!〕
〔繋がる一匹狼!スマホウルフ! YEAH!〕
狼と小型端末の組み合わせ。
右腕には狼の爪を模した武装、左腕にはスマートフォン型の盾が装備されている。
「よそ見すんなよ!」
惣一は腕の管を使った攻撃を仕掛ける。それに対して戦兎は左腕の盾を構え、攻撃を跳ね返した後、駆けながら右腕の爪で管を切断。
しかし惣一は後退しながらスチームライフルで攻撃している。今の戦兎の攻撃手段は爪のみ。リーチが足りなかった。
〔ROSE!〕
「ビルドアップ!」
ウルフをローズと交換し、右腕から植物のような鞭を出現させる。
「一つのベストマッチフォームで何十分も戦ってたら日が暮れちまうぞ!」
惣一に急かされた戦兎はスマホボトルを緑色のボトルに入れ替える。
〔HELICOPTER!〕
〔BESTMATCH!〕
〔情熱の扇風機!ローズコプター! YEAH!〕
「ヘリなのか扇風機なのかハッキリしろ」
「最初に言うことそれぇ!?」
戦兎は背中に装備されたヘリのプロペラを取り外し、薙刀のように持ち、振り回して管を切断する。
「それ、背中に付けたままの状態で空飛べるぞ。はい次!」
〔KUJIRA!〕
〔JET!〕
〔BESTMATCH!〕
〔天翔るビッグウェーブ!クジラジェット! YEAH!〕
◇
「終わった……」
外を見ると、既に日が落ち、夜になっていた。
アドレナリンが出ていたせいだからか、訓練中は空腹や時間経過に気づきにくかったが、今はその反動が来ている。
「じゃ、明日もここ集合で」
「……」
「何だよ、不満か?」
「野球大会……チア部……助っ人……」
「許して」
◇
「マスターも戦兎も帰ってこねぇし……一体どうしちまったんだよ」
苛立ちながらnascitaで龍我は部屋を動き回る。
机を漁ってもやけに軽くなったパンドラボックスや絡まっている配線しか出てこない。
「しょうがねぇ」
龍我は一階へ向かい、そこで寝ることにした。
『鍵を開けろ』と惣一や戦兎がドアを叩いても聞こえるように。
退屈だ。でも、それでいい。
こう思って彼は目を閉じる。
ただ、ボトルが一本装填できそうな創りかけのガジェットに『C-ZD MAX』と書かれた紙が貼ってあった事が気になった。