佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである   作:鮭愊毘

53 / 75
第四十五話 決まらないプリンシプル

「最悪だ……」

 

「おいおい、どうしたんだよ。頭抱えて」

 

「どうしたもこうしたもねぇよ。今日って9月1日だろ?」

 

「そうだな」

 

「……過ぎちまった」

 

 大抵の人がうんざりするであろうこの日、戦兎は朝から落ち込んでいた。

 最愛の人の誕生日が過ぎてしまったからだ。

 今日は9月1日。園子の誕生日は8月30日。

 

 祝福のメールは一応送ったけど、顔を合わせて言いたかった。

 後悔する戦兎。

 

 代表戦が29日で、その翌日は乃木家に行っていたため時間が無かったのだ。

 

「とりあえず行動してみるしかないか」

 

「えっ、今から?」

 

「多分始業式だけだし大丈夫でしょ」

 

 戦兎が外出する。

 

「……あの事は言わない方がいい……かな」

 

 時間は先日まで遡る。

 

『返ってこない……サンゲ……どういうこと……?』

 

 風の言葉に樹や友奈も同情の意志を示す。

 同時に、園子、美森、銀、夏凜の表情が暗くなる。

 

『散華。満開を使うたびに発動する代償だ』

 

『でも……私たちは……』

 

『満開したにも関わらず散華はなかった。そうだろ?』

 

『はい……』

 

 この後も惣一は、元々勇者の満開には散華が無かった事。散華を発動させる代わりに出力が上がった事を話した。

 

 その他にも、パンドラボックスに触れスマッシュを生み出し、ネビュラガスの実験の為、龍我を冤罪で捕まえ人体実験をしたのも全て、氷室幻徳という人物が招いたことである事も話した。

 

『でも、誰が散華を……』

 

『……』

 

 園子の呟きに惣一が黙り込む。

 だが、何も知らない自分が一番怖いと言った彼女には言ったほうがいいのかもしれない。

 

『…………あいつの両親だ』

 

『え……?』

 

『あり得ない……』

 

 園子と、一度彼らと対面したことのある美森が動揺する。

 

『だけど、止められなかった俺にも責任はある』

 

 

 

「マスター、一海知らねぇか?」

 

「え? ……あ、さっきまで寝てた猿渡がいない」

 

 二人が外に出る。

 すると、遠くでこちらを見ている女が一人。

 

「あいつは……! 万丈、追いかけるぞ!」

 

「えっ?」

 

 

「よぉ、久しぶり」

 

 讃州中学へ行く途中、戦兎はある人物に止められた。

 かつての自分のような目付きをした男。

 

「……」

 

「早速だが、ボトルをこちらへ渡してもらいたい」

 

「……渡すと思うか?」

 

「だよな。偽物のドライバー掴ませるぐらいだからな」

 

〔GEAR ENGINE!〕

 

「潤動」

 

〔FUNKY!〕

〔ENGINE RUNNING GEAR!!〕

 

 ライトカイザーを前に、戦兎も変身をする。

 

〔YUUSHA!〕

〔RIFLE!〕

〔BESTMATCH!〕

 

〔Are you ready?〕

 

「変身」

 

〔BREAK DOWN DESTINY! BUILD IN BRAVESNIPER! YEAHH!!〕

 

「運命を壊す……か。お前にそれが出来るかどうか」

 

 ◇

 

「待てよ!」

 

「あぁ……! この年でダッシュはきつい…………」

 

 女を追いかけ、走る龍我と惣一。

 惣一がばて始めた頃、女は立ち止まって彼らの方を振り向き、得物を取り出す。

 

〔GEAR REMOCON!〕

 

 ネビュラスチームガンにギアリモコンを装填。

 

〔FUNKY!!〕

 

 引き金を引くと、銃口からネビュラガスと同時にバグスターウイルスが噴出され、スーツと装甲を形成する。

 

〔REMOTE CONTROL GEAR!!〕

 

 

「こいつ、あの時の……」

 

 一度龍我との交戦経験のある戦士、レフトカイザー。

 そんな彼女はフルボトルをネビュラスチームガンに装填し、引き金を引いた。

 

〔FULLBOTTLE!〕

〔FUNKY ATTACK!! FULLBOTTLE!〕

 

 すると、先程装填したボトルの性質を反映させた力を持つスマッシュが一体出現。

 これをボトルを変えてもう一度行い、3対2の状況を作りだした。

 

「こいつら……スマッシュまで!」

 

 スクラッシュドライバーを取り出す龍我。

 しかし、彼の周囲をクローズドラゴンマックスが『自分を使え』と言わんばかりに飛び回っている。

 

 彼はドライバーをビルドドライバーに変更し、首を尾を収納したクローズドラゴンマックスにドラゴンフルボトルを装填し、ドライバーにセット。

 

〔FLAME UP! DRAGON!〕

〔NEO CROSS-Z DRAGON!〕

 

〔COBRA……!〕

 

 惣一も龍我に続き、トランスチームガンにコブラフルボトルを装填。

 

〔Are you ready?〕

 

「変身ッ!」

「蒸血」

 

〔MIST……MATCH……!〕

〔CO COBRA……COBRA……FIRE!〕

 

〔BURN UP DRAGON FIGHTER! CROSS-Z NEO! YEAH!!〕

 

 惣一がブラッドスタークへ、そして龍我が

 ネイビーブルーのボディ、被さるように装備された龍の翼の形状をした追加装甲。

 複眼も銀色の縁が追加され、一回り大きくなった―――

 "仮面ライダークローズネオ"に変身。

 

「何だよこの力……! 負ける気がしねぇ!」

 

「またしても……」

 

 龍我の新しい姿を前に、レフトカイザーが苛立ちを見せる。

 

「万丈! そいつを任せる!」

 

 レフトカイザーに狙いを定める龍我。

 だが、彼女は突如逃走した。

 

「早い!」

 

 レフトカイザーは遠隔操作機の力を使うスピード重視の戦士。

 格闘戦重視の龍我とは相性が悪いと判断したためこのような行動に出た。

 

 龍我は追加装甲を展開し、翼を形成。

 クローズネオは従来のクローズとは違い、単独飛行が可能。そして――

 

〔FLAME UP! TAKA!〕

 

 クローズドラゴンマックスに装填されているボトルを交換。

 

〔READY GO!〕

〔HAWK BREAK!!〕

 

 空からレフトカイザーを追跡する。

 

 

〔READY GO!〕

〔GIGA VOLTEC FINISH!〕

 

 戦兎が召喚した大剣を巨大化させて振るう。

 叩き付けられるように振るわれたレオ・スタークラスターさえ圧倒したものだったが

 

「―――やるじゃないか。旧型の分際で」

 

「何ッ!?」

 

 ライトカイザーはそれを耐えた。

 

〔FUNKY DRIVE!! GEAR ENGINE!!〕

 

 大剣を放棄して回避を試みようとしたが間に合わず、直撃。

 変身解除と同時に所持しているボトルが散らばってしまう。

 

〔ラビットタンクスパークリング! YEAH! YEAHHHH!!〕

 

「何が目的なんだよ……!」

 

「……」

 

 ライトカイザーは回収した勇者フルボトルをネビュラスチームガンに装填。

 

〔BRAVER SYSTEM!〕

〔FUNKY ATTACK!! BRAVER SYSTEM!〕

 

 ライトカイザーの手に槍が召喚される。

 

「どうした、ハザードトリガーは使わないのか?」

 

「くっ……」

 

〔READY GO!〕

〔VOLTEC BREAK!〕

 

 ユニコーンフルボトルを使用した必殺技を発動。

 それに対しライトカイザーは槍を傘のように展開した盾で防御する。

 一点に力を集中させたこれに、流石のカイザーも身動きが取れない。

 そこへ、

 

〔SCRAP FINISH!〕

 

「うらぁぁぁああああ!!」

 

 カイザーの死角からグリスが不意打ちを仕掛ける。

 これにより防御が崩れ、カイザーに直接攻撃が当たった。

 

「猿渡!」

 

「トリガー使え! 暴走したら止めてやる!」

 

「―――わかった」

 

〔HAZARD ON!〕

 

 ハザードトリガーを起動、ドライバーに接続。

 一海の不意打ちで散らばったボトルを拾い上げ、装填する。

 

〔GORILLA!〕

〔DIAMOND!〕

〔SUPER BEST MATCH!!〕

 

〔CONTROL SWITCH! BLACK HAZARD! ヤベェェェェイ!〕

 

「……駄目だ」

 

 ◇

 

〔DRAGONIC BREAK!!〕

 

「オラァァァァア!!」

 

 龍我が上空からレフトカイザーに急降下キックを放つ。

 

 直撃はしなかったものの、余波によってレフトカイザーの装甲の一部が破裂。

 所持していたガジェットが飛び散った。

 

「ハザードトリガー? どうしてこれが―――」

 

 龍我がトリガーに気を取られている隙をつき再び姿を消そうとする。

 

「逃がすかよ!」

 

〔SMASH SLASH!!〕

 

 ビートクローザーを振り下ろす。

 だが斬られたのは、とっさに召喚したスマッシュだけ。

 

 

 一方、ハザードフォームでカイザーと交戦する戦兎。

 力だけなら負けていない。

 

〔CROCODILE!〕

〔FUNKY BREAK!!〕

 

「力に振り回されるようでは俺には勝てない」

 

〔CROCODILE!!〕

 

「ぐあぁぁぁ!!」

 

 戦兎が吹き飛ばされる中、カイザーはボトルを手に呟く。

 

「…………こいつは―――」

 

 戦兎がよろめきながら立ち上がる。

 

「フルボトルのシステムはもはや過去の産物になった。俺達にはもう、必要ない」

 

「……待てよ…………!」

 

「運が良ければまた会おう」

 

 一海を見る気もせず、カイザーは消えた。

 




今回から登場したクローズネオですが、

・カラーリングが青系と銀
・液体の入ったアイテムを装填
・「ネオ(英:新しい・復活)」という名前

<チヒルォ!!

……狙ってません。たまたまです(震え声)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。