佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである   作:鮭愊毘

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前回「二章はあと1話で終わる」と書きましたが、長すぎたため前後編に分けます。
そして更新が遅れてしまって申し訳ありません。


第五十話 戦士たちのジャスティス(前編)

 戦兎が美森に頼んだ事、それは惣一の端末の位置情報の特定だった。

 彼が今いる場所は大赦。

 

 戦兎は施設に入った途端、端末にライオンフルボトルを装填し、マシンビルダーを出現させる。

 

「おぉ! 久々のバイク!」

 

「万丈、マスターを頼む」

 

 限られた資材で応急処置を施したスクラッシュドライバーを龍我に渡す。

 

「轢くんじゃねぇぞ」

 

 惣一があれを完成させようとしているのか。

 一台目のビルドドライバーを持ち出した時点で黒だと確定しているが、一応本人から話を聞く必要がある。

 

「…………わかってる」

 

「何だその間」

 

 龍我がマシンビルダーに搭乗し、GPSを頼りに惣一のもとへ向かう。

 

 

「一海」

 

 仮面をつけた神官の一人が一海を呼び止める。

 

「誰だ」

 

 神官は勇者と戦兎がある部屋へ行ったことを確認すると、仮面を取り顔を露わにした。

 

「基本、勇者様に顔を見せる行為は無礼だとされている」

 

 正体は一海の元同僚。

 

「どうして俺を解雇した? カイザーのせいか」

 

「それもあるけど―――」

 

 手に持っていたアタッシュケースを一海に渡す。

 

「これを大赦の外で保管していてほしいからだ」

 

 中に入っていたものは、黒曜石のようなフルボトルが一本、ブレスナックル型のガジェット。そして、ハザードトリガーに酷似したガジェットだった。

 

 

 マシンビルダーで駆ける龍我。

 

 本庁の奥深く、人気の全くなさそうな場所で惣一の端末のGPS反応があった。

 

「何だよここ……埃だらけじゃねぇか」

 

 マシンビルダーのヘッドライトを頼りに奥へ進んでいく。

 

「それでも暗いな……」

 

 彼は自分の周りを浮遊しているクローズドラゴンマックスにライトフルボトルを挿す。

 

〔CROSS-Z FLAME!〕

 

 すると、クローズドラゴンマックスを中心として非常に強い光が放たれる。

 

「うわぁ眩しい眩しい! お前俺の目潰すつもりか――――――え?」

 

 クローズドラゴンマックスのボトルを抜こうとしたその時、龍我の足元に一発の銃弾が命中する。

 

「おっと、ここから先へ通すわけにはいかないなぁ」

 

「……マスター?」

 

 いきなり発砲してきた惣一に対し、

 なんでこんなところにいるんだよ

 俺のドライバーで何するつもりだ

 と問うが、返答はなかった。

 

「帰れ」

 

「何でだよ」

 

「俺には創らなきゃいけないもんがあるんだよ。これが完成すれば、もうお前たちは戦わなくて済むようになる」

 

「……エボルってやつか」

 

「何処でそんな事を……あぁ、成程~。戦兎か」

 

「それと、こう見えて俺は第六感が鋭いもんでな。マスターのコーヒーがクソまずいのも、戦兎やあんたに物理学の知識がほとんどないのに何で色々作れるのか」

 

「……」

 

「あんた、元々物理学者じゃないものになりたかったんじゃないの?」

 

「知ったような口を……」

 

〔COBRA!〕

 

「あぁそうさ。世界を平和にする技術や物を一から作りたかった……

 でも、そんな甘いことを考えていた俺の血は……自身に対する怒りによって蒸発した」

 

「甘くなんかねぇよ! 立派な事じゃねぇか―――」

 

「蒸血」

 

〔MIST……MATCH!〕

〔CO CO COBRA……COBRA……FIRE!〕

 

 惣一がブラッドスタークへと姿を変える。

 これを目の当たりにした龍我は、拳を強く握りしめる。

 

「…………戦わなきゃ、分からねぇのかよ……!」

 

〔DRAGON JELLY!〕

 

 腰に付けたスクラッシュドライバーに、ドラゴンゼリーを装填する。

 

「話し合う道も……あるっていうのによ……!」

 

 ――――変身……

 

〔潰れる!流れる!溢れ出る!〕

〔DRAGON IN CROSS-Z CHARGE! ブルァァァアアアア!!〕

 

 

 神官に端末を預け、待機する勇者達。

 神官によれば、今回のアップデートで『満開ゲージを一つ消費する代わりにバリアの出力を上げる』機能を追加するとのこと。

 

 スクラッシュの登場によってほぼ無効化されたに等しいバリアを今になって改修する。

 

「本当に俺に任せてよかったのか?」

 

「何だよ」

 

 明らかに怪しい雰囲気を醸し出している部屋へ向かう戦兎を止め、一海は冗談を交えた表情で問いかける。

 

「『今度は信じる』」

 

「それ、龍我にも言ったらしいな。どういう意味だよ」

 

人間不信だったあの頃(佐藤太郎)から変わりたいって思ってるだけだよ」

 

 戦兎はあの部屋へ、一海は勇者の端末を改修している部屋へと向かった。

 

 

「ハザードレベル6.8……」

 

「戦兎に続いてマスターまで……何で一人で抱え込もうとするんだよ!理由なんてどこにも―――」

 

「どこにもない こう言いたいのか?」

 

 攻めに入らず、防御ばかりの龍我に呆れた様子で拳を叩き込む。

 

「ある。俺という存在が理由そのもの」

 

「あ……? 何言ってんだよ」

 

 惣一は龍我から一度距離を取り、ネビュラスチームガンにコブラフルボトルを装填。

 

〔LOST MATCH!〕

 

「『未来の明るい子供を勇者として戦わせる時代を終わらせたい』こう願って創ったシステムのせいで多くの悲劇を生んできた」

 

〔FUNKY ATTACK!! LOST MATCH!〕

 

 龍我はこれをツインブレイカーの射撃で相殺しようとするが、火力不足でのけ反ってしまう。

 

「お前たちが何て言おうが思おうが勝手だ。だが、最後まで贖罪を背負って戦うのは誰だと思う?」

 

「……」

 

「俺だ。俺しかいないんだよ」

 

 

 戦兎が足を踏み入れた部屋、そこには装飾等は全く無い、ただ平らな地面が広がっているだけに見えると所だった。

 

「結城友奈は何処だ」

 

 待ち構えていた二人のうちの男が口を開いた。

 

「何が目的だ」

 

「我々の主と彼女による神婚」

 

 二人のうちの女も口を開いた。

 

「同士達が228年前に果たせなかった目的を――――果たす」

 

〔GEAR ENGINE!〕

 

〔GEAR REMOCON!〕

 

「「我が主の為に」」

 

〔〔FUNKY!〕〕

 

〔ENGINE RUNNING GEAR!〕

〔REMOTE CONTROL GEAR!〕

 

 二人がカイザーに変身する中、戦兎はハザードトリガーを手に取り、スイッチのカバーを開く。

 

「また自我を失う気か?」

 

「……」

 

「仮にそれで俺たちを倒せたとしても、勢い余って殺してしまうかもしれない。

 そんな姿を見られたら……どうなるかな」

 

「……」

 

〔MAX HAZARD ON!〕

 

 戦兎はスイッチを今までと違って二回押した。

 これは変身と同時にオーバーフローモードを発動させることを意味する。

 

 ドライバーにハザードトリガーを接続し、新しいガジェット フルフルラビットタンクボトルを振る。

 

 すると、フルフルラビットタンクボトルに備わっている成分を表す発光装置が赤く発光。その状態で反対側の金色のキャップを右に120度回し、その下の表示装置の絵柄がブランクを表す緑からウサギの絵柄に変更される。

 

 そしてボトルを中央から引き伸ばしながら折り、ドライバーに挿す。

 

〔RABBIT&RABBIT!〕

〔BUILD UP!〕

 

「俺はもう、自分を見失ったりはしない」

 

 ドライバーのレバーを回すことでさらに成分が活性化され、ハザードライドビルダーが展開。この周囲に胴体と肩、両腕、両足用の追加装甲が形成される。

 

 

Are you ready?

 

 

 視界に広がるのはハザードライドビルダー。

 これを『兵器じゃない』と言い切る事は出来ないだろう。でも、人を傷つけることへは絶対に使いたくない使わない。

 こう決心し叫ぶ。

 

「変身!」

 

〔OVERFLOW!〕

 

 ハザードライドビルダーにプレスされ、強化剤を煙として放出し続けているラビットタンクハザードフォームが形成される。続いて、赤い追加装甲が装着されようとした時

 

〔FUNKY SHOT! EVOL SYSTEM!〕

 

 ライトカイザーがネビュラスチームライフルの引き金を引いた。

 追加装甲が飛び散り、戦兎も吹き飛ばされる。

 

 構造上、変身やフォームチェンジの直前直後は回避行動が不可能。

 ビルドのこの弱点を突き、追加装甲の装着を阻止――――

 

「―――ん?」

 

 したかに思われたが、追加装甲の胴体・肩用を中心に5つの装甲が一つに合わさり、ウサギの形を成した。

 

 一瞬動揺するカイザーらだったが、おそらく自我を失っているであろう戦兎を狙おうとする。

 

 戦兎はカイザーの攻撃を交わしてジャンプ。ウサギも後につき、空中で分裂。

 吸い込まれるように腕、足、胴体・肩の順で装甲が装着され、最後に禍々しい形状の仮面の上からパーツが付き、装甲がフィルターの役割を果たし強化剤の黒煙が白い蒸気として体外に放出。複眼が金色の縁のついたラビットに書き換えられた。

 

 これと同時に、同成分での干渉で生成された調整剤によって戦兎の自我が復活。

 

 

(くれない)のスピーディージャンパー! ラビットラビット! ヤベェェェイ! ハエ~イ!〕

 

 桐生戦兎が創ってきたビルドの最終形態。ラビットラビットフォーム。

 

 ただでさえ頑丈なハザードフォームの上から装甲が追加されただけでなく、重大な欠点である自我喪失を克服した形態。

 

 

 ライトカイザーがレフトへ指示を出す。

 レフトカイザーが瞬時に戦兎の背後へ回るが、戦兎に先を越されてしまう。

 

「ッ!」

 

 速さで負けたことに動揺しつつ腕を突き出すが、これも今の戦兎には当たらず、逆に拳を当てられてしまった。

 

 装甲があるにも関わらず、それが一切ないような衝撃がレフトカイザーの体に走る。

 

 戦兎が地面を強く蹴り跳躍と同時に、大剣 フルボトルバスターを召喚。

 

〔RABBIT!〕

 

 一度バスターキャノンモードに変形させ、ラビットフルボトルを装填。

 

〔FULLBOTTLE BREAK!!〕

 

 落下で勢いをつけ、ライトカイザーに向けて振り下ろす。

 

「ちぃ!」

 

 鈍足なライトカイザーは回避に間に合わず、右肩の装甲を持っていかれる。

 

「勇者などという人柱でしかない存在を護って何になる!」

 

「ふざけるな!」

 

〔UNICORN!〕

〔KUJIRA!〕

〔JUST MATCH DESU(でーす)!〕

 

 バスターキャノンモードにしたフルボトルバスターに二本のボトルを装填し、二つの力が合成された弾を打ち出す。

 

〔JUST MATCH BREAK!!〕

 

 さらに、棒状に戻したフルフルラビットタンクボトルを装填。

 

〔FULL FULL MATCH DESU!〕

 

「人々の……みんなの自由のために戦う! これが俺の正義だ!」

 

「さっきから綺麗事ばかりを並べて……! そんな甘い考えが通じるとでも思っているのか!」

 

「あぁそうだよ! だからこそ……だからこそ、現実にしたいんだ」

 

〔FULL FULL MATCH BREAK!!!〕

 

 ボトルの成分が刃に集中し、それを横に薙ぎ払う。

 

 




『さぁ、祭りの始まりだ』

『正義など……平和など……下らない……』

『てめぇの心はもう人間じゃねぇだろうがぁぁぁ!!』

『それが脆くて説得力のない事だってことは分かってる。だからこそ謳うんだ』

『これでエボルが完成する』

『俺は……クズになりきれない中途半端な人間なんだな』

『マスタァァァァァ!!!!』

二章最終話~戦士たちのジャスティス(後編)~

万丈の勘が鋭いのは伏線ではないです。

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