佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである   作:鮭愊毘

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第五十一話 戦士たちのジャスティス(後編)

 部屋の内側で戦兎が放ったフルフルマッチブレイク。

 バスターブレードモードのフルボトルバスターでフルフルラビットタンクボトルのラビットの力で大剣と思わせないほどの振りの速さ。

 

 これは壁を破壊するのには十分すぎる威力だった。

 

「おぉぉぉぉ!?」

 

 内側からの爆音と、壁が切り裂かれ崩壊する様を間近で見ていた勇者達が驚愕し、銀が声を荒げる。

 

「あの部屋って……」

 

 皆が戦兎の安否と部屋の状況を心配しながら落ち着こうとする所へ、一海が戻ってくる。

 一海は端末の入ったケースを勇者の方へ放り投げ、腰にスクラッシュドライバーⅡ、手に、ロボットと不死鳥の絵が印刷されたロボットネオスクラッシュゼリーを持つ。

 

「さぁ、祭りの始まりだ」

 

 ドライバーにスクラッシュゼリーを装填。

 

〔GREASE DISPENSER!〕

 

「変身」

 

 崩壊した壁の向こうのカイザーを挑発するように指を指し、ドライバーのレンチ型レバーを倒す。

 これによりスクラッシュゼリーが圧迫され、中の成分がレバー反対側のタンクに溜まっていく。

 さらに、一海を囲むようにビーカー型のライドビルダーが出現し、ゲルから液状になった成分が満たされ――――――

 

〔燃える!〕

 

 着火。

 

〔潰れる!〕

 

 ライドビルダー後方から二本指のロボットアームが出現し、ライドビルダーを双方から潰す。

 

〔砕け散る!〕

 

 ロボットアームの指がライドビルダー付近の地面を強く叩き、その衝撃で先ほど潰されたライドビルダーが砕け散った。

 

〔ROBOTS IN GREASE! ブルァァァアアアア!!〕

 

 そこに残ったのは、姿を変えた一海。

 黒地のスーツに黒と金の装甲。腕や足の装甲は厚くなり、腿にも追加。胸部には焼け焦げた黒色の装甲が装着されている。

 

「"仮面ライダーグリスディスペンサー" 見参」

 

 葛城によって「ビルド・クローズとの連携・援護」を目的に開発された攻防のバランスに優れたグリス。

 一方、このグリスディスペンサーは耐火耐熱、攻撃に転用も可能な装甲を重装備した防御に優れたものへと生まれ変わった。

 

 そこへ、戦兎が現れる。

 

「やっぱりクロだったか」

 

「あぁ」

 

「そっちも大丈夫だったか?」

 

「――――――うん」

 

 部屋の外の状況を園子に聞く戦兎。園子はそれに頷いた。

 

 ハザードフォームのような姿の彼を最初は警戒していたものの、声を聴いて安心する勇者達。その中、園子は皆とは違う安心感を抱いていた。

 

 今の戦兎は赤い装甲を纏い、背中には二本のウサギの耳を模したマントがたなびいている。まるで、自身が書いた小説に登場する自分の思う正義のヒーローのようだと。

 

 

 

 

「――――正義など……平和など……下らない……」

 

 室内のカイザーらが立ちあがって戦兎を追撃しようとする。

 先に動いたのはレフト。

 

 崩壊した壁の瓦礫が散らばる地点にいた戦兎に向かってスチームブレードの刃を立てるが、戦兎はフルボトルバスターを盾にして体制を整え、右足を突き出す。

 

 すると右足が伸長し、レフトカイザーを室内へ蹴り戻す。

 

 

「ここじゃあそれは不利じゃないか? どうする」

 

 そんな一海の問いに、彼はドライバーからフルフルラビットタンクボトルを抜き、棒状に戻して振る。

 

〔RABBIT!〕

 

 発光装置が赤く光る。この状態でさらに振る。

 すると選択されている成分がラビットからタンクに変更され、発光が赤から青へ。

 

 

 最後にキャップを右に120回すと、ウサギの絵柄が戦車に変更される。

 

〔TANK!〕

 

〔TANK&TANK!〕

〔BUILD UP!〕

 

 成分をタンクに選択したフルフルラビットタンクボトルを装填したドライバーのレバーを回すと、戦兎の周囲に5つのアームが出現し、アームの先には青い装甲が付けられている。

 

〔Are you ready?〕

 

「スーパービルドアップ」

 

〔OVERFLOW!〕

 

 戦兎の一声とともにラビットラビットの赤い装甲が弾け飛び、そこへ青い戦車を模した装甲が装着され、背中には履帯型のマント、仮面は金色の縁のついたタンクの複眼に書き換わった。

 

 

〔鋼鉄のブルーウォーリア! タンクタンク! ヤベェェェイ! ツエーイ!〕

 

 

 戦車のような無限軌道が四肢に装着されたビルド第二の最終形態、タンクタンクフォーム。

 ラビットラビットと同様、オーバーフローモードを自我が失われる一歩前の状態で維持している。

 尚、調整剤は常温でないと生成できない。

 

「結城友奈……貴様さえ揃えば、我々の目的が果たされる」

 

 突撃するライトカイザー。

 一海はその間に割り込み、これを止める。

 

「奴は我々の――――人類の進化の為に必要な存在だ」

 

「何だと?」

 

 一海は専用武器 スクラッシュバスターを召喚し、そこへロケットフルボトルを装填。

 

〔SINGLE!〕

 

 引き金を引く。

 

「ッ……。我が主――――貴様らの言う天神に忠誠を誓えば、これ以上我々人間がバーテックスに襲われることはない。だが、主は衰弱している。力を増幅するには――――」

 

 ライトカイザーが友奈の方を向く。

 

「貴様と主による神婚だ。結城友奈」

 

「―――えっ……?」

 

「―――――さっきから何だ! 300年ずっと俺たちを苦しめてきた天神に跪けってか! ざけんな!」

 

 レンチを下げ、ゼリータンクに溜まっている成分を濃縮させ、それを右腕に集中させる。

 

「てめぇの心はもう人間じゃねぇだろうがぁぁぁ!!!」

 

〔MEGA SCRAP BREAK!!!〕

 

 ライトカイザーに拳が触れた瞬間、彼は吹き飛ばされ、壁に激突。

 

「子供を犠牲にして自分はのうのうとするってか。人でなしが」

 

「―――愛、平和……そんな戯言を言う貴様はどうなんだ」

 

 ライトカイザーが戦兎を指す。

 

「自分が正義だと思っていることは、相手にとっては悪かもしれない。逆も然り。

 愛も平和も同じだ。そんなもの、我がままとどう違う?」

 

「……あぁ。それが脆くて説得力のない事なのは分かってる。だからこそ謳うんだ。そういうことを……現実にしたいから」

 

 戦兎はフルボトルバスターをバスターキャノンモードに変形させ、四本のフルボトルを装填。

 

〔TANK!〕

〔YUUSHA!〕

〔RIFLE!〕

〔RABBIT!〕

〔ULTIMATE MATCH DESU!〕

 

〔ULTIMATE MATCH BREAK!!!〕

 

 ボトル四本分の力が合成され、銃口から放たれる。

 

 ライトカイザーは回避を試みるが、蓄積されたダメージと元々の鈍足が相まって失敗し、直撃に終わる。

 

 続き、戦兎はレバーを回転、一海もレバーを二回下げる。

 

「俺たちはてめぇらとは違う、人らしいやり方で戦いを終わらせてやる」

 

〔READY GO!〕

 

 戦兎が腰を落とし、右足に重心をおいた体勢になり、一海は背中から重油を吹き出しそれが着火。不死鳥のような翼が展開される。

 

〔HAZARD FINISH!!〕

〔TANK TANK FINISH!!!〕

 

〔MEGA SCRAP FINISH!!!〕

 

 二人は同時に跳び、戦兎はレフト、一海はライトカイザーに向かって蹴りを入れる。

 カイザー二体はこれまでのダメージ蓄積が災いし、二人の重量級の必殺技に耐えきれなかった。

 

「ぐっ……」

 

「帝王の時代はこれまでだ」

 

 

「後は我々に御任せください」

 

 変身の解除された二人を白いガーディアンと神官が拘束。連行していく。

 この二人は天神の信者。神世紀72年に発生した大規模なテロを実行した者と同じように、天神の力を信仰の対象にしていた。

 ファウストの幹部でもあった彼らは相当な罰を受けるだろう。

 

「―――ん?」

 

 戦兎が一人の神官を凝視する。格好は他の神官と同じだが、殺気を感じた。

 

「どうした」

 

「いや、何でもない」

 

 二人はドライバーからボトルとスクラッシュゼリーを外し、変身を解除。

 

「きっつ……」

 

 戦兎の足がふらつき、倒れそうになるところを一海が支える。

 

「おっと、大丈夫かよ」

 

「まぁ……な」

 

 彼の変身したラビットラビット・タンクタンクフォームはハザードフォームの自我喪失の原因である強化剤をフルフルラビットタンクボトルの生成した調整剤で抑制して自我を永続させている。

 強化剤も調整剤も、人体にとっては毒である。

 

「なぁ、あの二人はどうなるんだろう」

 

「一応、お前の両親だからな。でも―――」

 

 

 

「さっと~ん!!」

 

 

 

「もっと大切にしなきゃいけねぇのがあるだろ?」

 

「ぐぇえ!」

 

 腰に思い切り飛び込んでくる園子。

 

「腰はやめろ腰は……」

 

「もう……あんなことにはならないよね……?」

 

 あんなこととは自我を失ったハザードフォームのことだろう。

 

「あぁ。絶対にな」

 

 戦兎は園子を落ち着かせようと、彼女の頭を撫でる。

 

「いいなーいいなー。さっとんいいなぁー」

 

 この光景に一海が嫉妬する。

 

「むぅ~」

 

 一海が園子の作ったあだ名を使うと、園子は一海に対して頬を膨らませながら見つめる。

 

「その表情も……良いっ!」

 

「ダメだこりゃ」

 

「…………それと、何か焦げ臭くねぇか?」

 

「お前だよ」

 

 戦兎に指摘された一海が自身の服を嗅ぐ。

 

「あ、ホントだ。

 

 じゃねぇだろぉぉぉ!? 後、変身するとき『燃える』って聞こえて熱い思いしたけど何で燃やした!」

 

「だって、『心火を燃やす』ってよく言うじゃない」

 

「だからってホントに燃やすなぁぁぁぁ!!」

 

「痛い痛い痛い!」

 

 一海が戦兎の頭をグリグリする。

 

「……後は龍我か。上手くいってればいいんだが」

 

 

「どうした万丈! 守ってばかりじゃ俺には勝てないぞ!」

 

「俺は勝ち負けなんかどうでもいいんだよ! あんたを止めに来たんだ!」

 

「止める?」

 

「あぁ!」

 

 惣一の拳を受け止め、じりじりと壁の方へ押していく。

 

「――――小倉香澄」

 

「!」

 

「誰のせいで彼女が亡くなったと思う?」

 

「……ローグだ! あいつは人を人として見ていない! 俺の……敵だ!」

 

「じゃあ、ローグがそうなった原因は誰が作ったと思う?」

 

「っ……」

 

「ここにいるだろ。ここによぉ!」

 

 動揺で力が弱まった龍我の拘束を破り、腹に蹴りを一発食らわせ、ネビュラスチームガンにブラッドスタークの紋章が描かれた"コブラエボルボトル"を装填。

 

〔EVOL COBRA!〕

 

〔FUNKY BREAK!!! EVOL COBRA!〕

 

 銃口を向け龍我を仕留めようとするが、これは自分のしたいことじゃない。

 その思いからか、惣一は無意識に銃口をそらして引き金を引く。

 龍我は直撃は避けたものの、余波によって吹き飛ばされ、変身が解除。

 

「ぁあ……マス……タぁ…………」

 

「データの収集は終了。これでエボルが完成する。さて……」

 

 惣一は黙々と、飛び散った龍我の所持するフルボトルを回収する。

 

「何で……マスターが、こんなことしなくちゃならねぇんだよ……!」

 

 惣一は先ほどネビュラスチームガンに装填したボトルを見せ、口を開く。

 

「―――――こいつはな、フルボトルと違って浄化を行っていない。つまり、使えばハザード以上の負担が体にかかる」

 

「あの時見つけたあれも……」

 

「あぁ。それと、俺は戦兎やお前と出会って、『こいつらなら、この戦いを終わらせることができるだろう』って思ってた。でも、そんな考えは甘かった。

 戦兎やお前らの体や人生……全てを狂わせた奴を生み出しちまった元凶は誰か……俺だったんだよ」

 

 龍我はここで、以前惣一が言っていたことを思い出す。

 

 

『戦兎の、太郎の身体機能は―――――返ってこない』

 

 

 惣一はこれの理由を『太郎は神樹に選ばれた存在ではないから』『ネビュラガスを投与され、返さなくてもいい体になったから』『一回目の園子の時は良かったが、二回目の太郎の時には神樹には力が無く、勇者の身体機能を供物として貰うことでようやく生きていられる状態だから』と説明していた。

 

「もうお前たちが苦しむ理由はない。全部俺に任せろよ」

 

 惣一が龍我の所持ボトル最後の一本、ドラゴンフルボトルに手を出そうとするが、龍我が先にこれを握りしめたうえで体全体を使って守ろうとしている。

 

 無論、スタークとなった惣一にそんなものは通用しない。

 龍我の手首を引っ張り、ゆっくり力を加えていく。

 

「―――ぁぁぁ……! やめろ……やめてくれ……!」

 

「……」

 

 もう少し力を入れれば握られたボトルは落ちる。だが、惣一はそうなる寸前でこれを中止した。

 

 ドラゴンフルボトルは、龍我の大切な人が変貌したスマッシュの成分から創られている事を思い出したのだ。

 

「俺は……俺は……クズになりきれない中途半端な人間だったんだな」

 

「何を……言って…………」

 

 惣一はドラゴンフルボトル奪取を諦め、暗い通路のさらに奥へ歩いていき

 最後にこう言い残した。

 

 

 

 

 

「チャオ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――――マスタァァァァァ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 カイザーの二人を連行する神官達。

 

「後は私に任せろ」

 

「何をするつもりだ」

 

「黙って私に従え」

 

 神官がガーディアンに指示を出す。

 すると、他の神官を拘束して遠くへ連れ出してしまった。

 

 

 

 

「その声……まさか……」

 

 二人を演習場まで連れて行く神官。

 そこで神官は仮面を取った。その顔に、二人は戦慄する。

 

「――――――――久しぶりだな。佐藤」

 

「氷室……幻徳……!」

 

「俺のいない間に好き勝手やってくれたそうじゃないか」

 

「……」

 

「黙秘か。なら」

 

 幻徳は男を殴り、ボトルを奪取する。

 

「これで全てが揃った――――」

 

 幻徳の腰にはビルドドライバーに酷似した、ビルドドライバーの原型たる"エボルドライバー"が装着されていた。

 そこへ、紫と赤、バットとエンジンのフルボトルを装填する。

 

〔コウモリ!〕

〔発動機!〕

〔EVOL MATCH!〕

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フハハハハハハ……! アーッハッハッハァァァァァ!!!」

 

 演習場には血が蔓延しており、その中央に、仮面ライダーが一人立っていた。

 

 名は"マッドローグ"。

 

 長い間姿を消してきた幻徳は、狂ったならず者として帰ってきた―――

 

 

 

 

 

 

~二章 桐生戦兎は仮面ライダーである ビルド編~




次回から最終章に入ります。
ライダーや登場人物の詳細は後日更新します。
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