佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである   作:鮭愊毘

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第五十二話 防衛兵器エボル

 仮面ライダーとファウストによる戦いはパンドラボックスの破壊によって幕を閉じた。

 

 だが、全てが終わった訳ではない。

 

 世界の平和の為に力を使おうとした葛城巧。

 力を拒んでいたにも関わらず、ある日を境に力に溺れてしまった氷室幻徳。

 

 この二人による、新たな戦いが始まる――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイス……ソフトクリーム……あっ、ラムネもいいな」

 

「ちょっとお客さん! 早くして下さいよ!」

 

 カイザーの死により、戦いは一旦終わりを迎えた。

 今は各々が自由な時を過ごしている。

 

「ん~…………アイス」

 

「はい600円」

 

「高くない?」

 

 戦兎は今、移動販売式のアイス屋を訪れている。

 リヤカーを利用した簡素な店であるが、イネスを始めとしたスーパーに立ち寄れない人たちからの人気は凄まじい。

 

「最近すっごく暑いだろ? だから氷を作りづらくなったうえにたくさん人が買いに来るんだよ。

 

 かみさんはこの暑さを神様の祟りとか言ってるけどよ、ここで言う神様ってのは神樹様のことだろ? 神樹様がそんなことするとは俺は思わねぇ!」

 

「そうですよね……」

 

 戦兎はアイスをリアカーのクーラーボックスから取り出す。

 

 アイスを口に入れようとしたその時、突如一瞬だけ熱風が吹きアイスを完全に溶かしてしまった。

 

「あぁぁぁぁ!!?」

 

「だから早く選べと……」

 

 念願のアイスが目の前で溶けてさらに蒸発。

 戦兎は木の棒を見つめつつ聞いた。

 

「俺、『喫茶店のマスターやってそうな人』探してるんですけど、何か心当たりあります?」

 

「喫茶店?あぁ、そんな感じの奴なら……

 

 

 何か、赤っぽい四角い物持ってたっけ」

 

「四角い……」

 

 戦兎はビルドドライバーを取り出し、アイス屋に見せる。

 

「あーそれそれ!……お客さん、もしかして――――」

 

 アイス屋が何かを言いかけた瞬間、戦兎ら付近の住宅地から悲鳴が響く。

 

「スマッシュ……?とにかく、俺行ってきます」

 

 戦兎は支払いを済ませ、ビルドドライバーを腰に装着。

 

 〔MAX HAZARD ON!〕

 

 さらにハザードトリガーを接続し、フルフルラビットタンクボトルを取り出し、調整剤生成の為に振る。

 

「……」

 

 が、今彼が振っていたのは食べ損ねたアイスの棒だった。

 気を取り直して今度こそフルフルラビットタンクボトルを取り出し、振って折って装填。

 

〔RABBIT&RABBIT!〕

〔BUILD UP!〕

 

〔Are you ready?〕

 

「変身!」

 

 〔紅のスピーディージャンパー! ラビットラビット! ヤベェェェイ! ハェーイ!〕

 

 ビルド ラビットラビットフォームに変身した戦兎は、その跳躍力を生かして現地へ急ぐ。

 

 

 

「ホントに仮面ライダーだったよ――――――あっ!」

 

 アイス屋は何かに気付き、急いで戦兎の後を追いかけた。

 

 

「結城友奈!」

 

「同じく、三ノ輪銀!」

 

「「依頼完了しましたー!」」

 

「うんうん、相変わらず元気でいいわね~」

 

 市民からの依頼を終えてきた友奈と銀がnascitaに入る。

 そこには既に他の部員も揃っており、部長の風は二人の活発さに感心する。

 

「なぁ、国防仮―――東郷はどうした」

 

 一海が聞く。

 この依頼は明るさと元気が取り柄の友奈と銀、二人のブレーキ役として美森が選抜されていた。だが、この場に美森の姿はない。

 

「用事を思い出したって言ってました!」

 

「用事……」

 

 心当たりがあるような表情をする一海。

 

 

「スマッシュはどこだ……?」

 

 現地に到着した戦兎があたりを見回す。

 

「あの、あっちに泥棒が!」

 

「泥棒!?」

 

 女性が指さした方向を見ると、走るバッグを持った男の後姿が。

 

「すぐ取り返しますよ」

 

 戦兎は地面を蹴って跳躍。

 さらにラビットラビットの力で腕を伸長し泥棒の体を掴む。

 

「うぉおおおおぁぁぁあ!!?」

 

 人の気配が無いのに突然掴まれた事に驚愕。

 戦兎の腕の収縮とともにずるずると引きずられる。

 

 腕をもとの長さに戻し、バッグを取り返して女性に渡す。

 

 これで少しはいい印象を持ってもらえればいいが。

 

 そして泥棒を引き取ってもらうために警察を呼ぼうとしたその時

 

 

「後は私にお任せを!」

 

 上から女性の声がした。

 

 その声の主である女性は旧正規の軍人のような服を纏っている。

 彼女が屋根から戦兎のいる所へ降り立ち

 

「憂国の戦士 国防仮面、見ざ――――」

 

「……」

 

 女性―――国防仮面は戦兎を見て固まった。

 戦兎も聞き覚えのある声に疑問を抱いた。

 

「「……」」

 

 二人の間に何とも言えない空気が張り詰める。

 

「……何してんの須―――――」

 

「あー!あー!誰かが助けを呼んでいる!行かねば!」

 

「誰かって誰よ」

 

「……この度はご協力ありがとう!」

 

「……」

 

 戦兎は国防仮面の今の焦り具合で正体を美森だと確信した。

 

 泥棒を縄で縛って担ぐ彼女に対し、『国防仮面は東郷美森である』という確信を持つため、戦兎は口を開く。

 

「国防仮面さんや」

 

「手短にお願いします」

 

「友奈って子が寂しがってましたよ」

 

「なっ……何ですって?!」

 

「『東郷さんいなくて寂しい』って。この子、他にも友達いるみたいだけどこういう風に個も大切にできるって優しいよね。だからその東郷さんって人を探すことも視野に入れてほしい――――」

 

 国防仮面の目の色が変わった。

 

「ごめんなさい友奈ちゃん!いくら世の為人の為と言っても友奈ちゃんとの時間を犠牲にすることなんてできなかった……!」

 

「世の為人の為にそんな恰好してたのか……」

 

 みんなのためになる事を勇んで行う部活動、勇者部。

 彼女はその一員である誇りをもってこんな事をやっていたのだが、この行為で一人の人間を悲しませていた(?)事を知り愕然となる。

 

 そんな国防仮面―――美森を慰める(?)戦兎。

 

「まぁ、こういうことやらなくてもお前は十分人の為になってるから」

 

「戦兎さん……」

 

「あれっ、呼び方変えたんだ。じゃあ俺も呼び方変えようかな」

 

「えぇ?この前須美呼びで決定したばかりじゃないですか」

 

「「……」」

 

「こう考えると、そのっちのあだ名って便利ですね」

 

「だよなぁ」

 

 この光景を見ている市民と縛られている泥棒は思った。

 

 何コレ

 

 と。

 そこへ、この気温の中先ほど戦兎が訪れたアイス屋の人が走ってきた。

 

「お客さん!」

 

「さっきはすみませんでした。アイス食べれなくて――――」

 

「一円!一円足りないよ!」

 

「……」

 

 戦兎が買ったアイスは600円。しかし彼は焦っていたこともあって599円しか払っていなかった。

 戦兎が財布の中を確認するも一円玉はなかった。

 

「5円玉で勘弁してくれませんかね?」

 

「いや~それはちょっと……」

 

 どうやらアイス屋の方も一円玉がないらしい。

 

「じゃあ1000円で」

 

「何で増えてんだよ!」

 

 一円を笑う者は一円に泣く。今の状況を指す最適な言葉だ。

 

「―――私が払いましょうか?」

 

「それは流石に……」

 

 たかが一円されど一円。

 それにしてもこの仮面ライダーは何をやっているんだと思う市民だったが、一人の市民が遠くを指さして叫んだ

 

「お、おい、あれ!」

 

 戦兎らが市民の指さす方向を向く。

 

 

 そこには、もう存在しないはずの―――

 

「スマッシュ……」

 

 戦兎はアイス屋の人に1000円を握らせ、フルボトルバスターを召喚。

 三本のフルボトルをそこへ装填する。

 

〔MAGNET!〕

〔HARINEZUMI!〕

〔TANK!〕

〔MIRACLE MATCH DESU!〕

 

 

「スマッシュの目撃情報?」

 

「はい。ですが、仮面ライダーによって撃破されたとのことです。

 その際、従来のスマッシュとは異なり素体となる人間は確認されていません」

 

「人体実験で生まれた訳ではない……ということか」

 

 ここは大赦の一室。神官達が神妙な面持ちで会議をしている。

 

「ファウストのアジト、実験装置は全て我々が回収・破棄しています」

 

「スマッシュの上位個体、ハザードスマッシュの源である装置も仮面ライダーによって回収されています」

 

「では何者が……?」

 

「私共からも報告を。エンジンブロスが完成、リモコンブロスは最終調整中となります。バイカイザー改めヘルブロスへの合体機構も再現可能です」

 

 こう、唯一仮面をつけていない者が言及した。

 この者は仮面をつけた神官と同じくらいであるにも関わらず、仮面をつけていない。

 

 これは一種の反逆行為であるが、大赦は彼らを排除できない。

 何故なら、彼らはあの葛城巧の部下。先日の勇者システムのアップデートも彼らが行っている。

 

「またしても勝手な事を……」

 

「そう言われましても、仮面ライダーが無くなって一番困るのは貴方たちでしょう?

 もし彼らがいなければ、今頃大赦はファウストやスマッシュの襲撃で目も当てられない状態になっていたでしょう」

 

「……」

 

 

 

 

 

 

「そうそう。この世界はもう、勇者の力だけでは護り切れなくなった」

 

 会議室の扉が開き、男が入室する。

 

「誰だ」

 

「かつ――――石動さん!」

 

Buon giorno(ボンジョルノ)(こんにちは)」

 

 男―――石動惣一は青いグリップのレバーのついた赤い物体を手にしながらこう口を開いた。

 

「前々から俺―――葛城巧が計画していたシステムの完成を、報告しに参りました」

 

 これを聞いて神官は葛城の元部下に視線を集中させるが、彼は何も知らないと首を横に振った。

 

「馬鹿な……まさか、お前が……!?」

 

 惣一は赤い物体――――エボルドライバーを腰に装着。

 

〔EVOL DRIVER!〕

 

 そして、コブラの意匠のあるコブラエボルボトルと、nascitaで龍我が発見したライダーエボルボトルを装填。

 

〔COBRA!〕

〔RIDER SYSTEM!〕

〔EVOLUTION!〕

 

 レバーの回転によってスナップライドビルダーが展開され、惣一の前方に濁った赤色の完全に形成されていない状態のハーフボディが、後方には同じ状態の黒いハーフボディが出現。

 

〔Are you ready?〕

 

「変身」

 

 ドライバーが装着者の変身の意思を確認。

 惣一が赤と黒の中途半端に形成されたハーフボディに挟まれる形でスーツや装甲を形成。

 

 天球儀を模した装甲が形成され、複眼は横から見たコブラのシルエット。さらに額には円形の、星座の描かれた測位装置・レーダーが備えられた。

 

 

〔COBRA! COBRA! EVOL COBRA! フッハッハッハッハッハッハァァァ!!!〕

 

 

「フェーズⅠ完了。仮面ライダー……エボル」

 

 惣一はついに、自らが求めていた究極の戦士 "仮面ライダーエボル"に変身。

 

「な、何をする気だ……、大赦を乗っ取るつもりか!?」

 

「それも悪くない」

 

 惣一は腰の引けた神官と視線を合わせる。

 

「だが、俺にはやる事がある。一つ約束しろ」

 

 神官は必死に首を縦に振る。

 

「勇者並びにその関係者―――仮面ライダーも含めて、一切手を出すな。あいつらはお前たちの敵になるような存在じゃない。

 

 

 

 

 

 お前たちが何もしなければ…………の話だが」

 

「それを決めるのは……ここにいる者たちではない……」

 

「――――――だよなぁ。簡単に言うこと聞くわけねぇよな。ライダーシステムに適応した人間が何故樹海化してもなお活動できるのか……、これの理由を踏まえると合点がいく。

 

 でもこれだけは言っておく。人間の心を持っている限り、そいつは人間だってことを」

 

 顔を仮面で隠し、個を捨てている神官達。

 しかし、この神官は個を捨てることより本能が働いてしまっている。

 目の前の異質な者に対して、恐怖を覚えている。

 

「仮面ライダーは俺一人でいい。そして戦いが終わった暁には―――」

 

 部屋を退出する惣一。

 

「……」

 

 そんな彼を目撃する一人の女性神官。

 彼女は惣一がトランスチームガンから出した蒸気に紛れて姿を消すまで彼を見ていた。

 

 自分の育ててきた者が背負わなくていい物を背負い、戦うことになって傷ついた。

 自分も力になりたかったけど及ばなかった。

 そして仮面で顔を隠し、自分を否定する。

 

 自分にそっくりだと。

 

 この神官は、かつて"安芸先生"と呼ばれていた女性である。

 

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