佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである   作:鮭愊毘

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第五十八話 究極のライダーシステム

戦兎が復帰し、ついにビルドΩの開発が始まった。

 

だが

 

「その前に、お前ら"ライダーシステム"って分かってんのか?」

 

惣一が龍我と一海に聞く。

 

「そりゃぁ、あれだよ。あれ」

 

「あぁ。……」

 

「……」

 

「「……」」

 

「じゃあハザードレベル」

 

次に戦兎が聞く。

 

「「戦うほど上がる数値」」

 

「下がるときもあるぞ」

 

「「えっ……」」

 

「最後に、フルボトル」

 

「振って使うボトルだからだろ?それに、満って意味のフルを掛け合わせてフルボトル!どうだ!」

 

「龍我お前たまにはやるじゃねぇか!」

 

「たまには余計だ!」

 

 

「「……マジで?」」

 

まさかの正解を当てられ、唖然となる惣一と戦兎だった。

 

 

惣一はライダーシステム、そしてこれの原型であるエボルシステム開発の経緯を話し始めた。

 

「10年前、パンドラボックスが発見された」

 

当時発見した学者らは素手では触らぬように、重機を使って回収。厳重な警備とともに施設に収められた。

 

そして、発見場所からは謎のガスが噴出していた。後のネビュラガスだ。

 

数年後、葛城巧は、助手であり友人の氷室幻徳と共にこれらの研究に取り組んでいた。

 

『幻徳、これを見てくれ』

 

『これは……』

 

幻徳が葛城の操作する機会をのぞき込む。

 

そこには頑丈なガラス越しにプレパラートが置かれ、プレパラートには葛城の皮膚の一部があった。

 

すると、機械の奥からネビュラガスが少量噴出され、葛城の皮膚の一部が包み込まれる。

 

『何てことだ……』

 

幻徳が思わず目をそらす。

 

彼の目には、ネビュラガスを吸い人間ではない何かに変異した皮膚。

 

『ネビュラガスは人体を侵食し、変化する』

 

『……』

 

『言い換えれば、これを防ぐとともにネビュラガスを体内に注入できる技術を完成させれば、人類は未知の脅威に立ち向かえる』

 

『葛城……何を……』

 

『こっちの話だ』

 

なお、この話はまだ幻徳が世界の真実を知る前の時である。

 

 

その数年後、世界の真実と葛城の計画を知った幻徳は大赦を離反した。

 

さらに時が経ち、展覧会中に事件が発生。

幻徳がパンドラボックスに触れ、力が解放されてしまった。

 

「この影響で誕生したのが――」

 

「スマッシュ……」

 

すると、あることに気づいた龍我が手を挙げる。

 

「ん?このスマッシュって、俺達が戦ったあれか?」

 

「ああ。それと、パンドラボックスの外装は二重構造になっている。外側が今ここにあるパネルだな」

 

惣一が青いパネルを手に取る。

 

「実は、ボトルは当時全て同じ形だった」

 

「―――はぁ」

 

フルボトルとは、当時は今のようなエレメントごとの色、外装のレリーフが存在しない、エンプティボトルと同様の形状だったと話を続ける。

 

しかしそれでは判別が出来ないため、今のようになった。

 

そして、惣一が戦兎に渡したラビット、タンク、スマッシュから採集した成分を浄化したものを含めた10本と、それ以外のボトルの違い。

 

ラビット~ライトの10本は外装の全体に色がついているのに対し、残り50本は透明の外装にレリーフの部分だけ色がついている。

 

これは、ボトルの出来方に由来する。

 

「6枚のパネルは同時に外れたわけじゃない。4枚はあの事件の時、2枚は、既に外れていた。空の状態で」

 

「その二枚に挿さってたのが、俺達が浄化したボトルか」

 

「あぁ。成分はボックスに移っていて、例の事件の際に解放された」

 

博覧会の最中を狙い、幻徳はパンドラボックスに『力を寄越せ』という強い思いで触れた。

そして、光が放出された。

 

ハザードレベルが2に達していない一般人はスマッシュへ変貌。その数10体。

 

幻徳と葛城は人間としての姿を保ったものの、精神は好戦的なものへと変貌していた。

 

葛城はある程度離れていたためこの症状を『自分は光に侵され好戦的になった』と自覚し、抑えることが出来た。

 

だが、幻徳は間近で光を受けたことで葛城より重傷だった。

 

数か月後、葛城はあるものを完成させた。

 

パンドラボックス回収時に手に入れた二つのパネル。これに刺さっていた二十本の容器を基に、そこへネビュラガスを人間が扱えるように浄化した"フルボトル"。

 

そして、エボルシステムを再設計し、現段階での技術で完成させたトランスチームシステム。

 

この力を使い、葛城はスマッシュと戦った。

だが、現時点で撃破できたのは二体だけ。この二体の成分は後にラビットとタンクのフルボトルになる。

 

「で、ここにある浄化装置は大赦やファウストにあったものの簡易版になる」

 

「……ってことは、あの20本は正式な方法で作られたわけではない、と」

 

「そんなとこだな」

 

そして、話は現行のライダーシステムのものへと切り替わる。

 

「まず、ビルドはドライバーに装填した二種のボトルの成分を二つのハーフボディに変換し変身する。

ハーフボディ毎で性能が違ううえ、組み合わせも多数。……その代わり、左右の重量のバランスが崩れやすいがな」

 

「あ、そうだ」

 

「何だ万丈」

 

「ラビットタンクが、マスターが葛城だった時に見つけた最初のベストマッチで『戦兎』って名前の由来だってのはわかってる。

 

 

で、タンクって何?」

 

「「「……」」」

 

龍我の言葉に三人が絶句する。

 

その数秒後、惣一が最初に口を開いた。

 

「でもまぁ、しょうがないか。タンクというのは、旧世紀まで存在していた戦闘車両の一種だ」

 

「じゃあ何でタンクって言うんだよ。タンクは水とか貯めるあれだろ?」

 

「OPEN読めなかったのにそういう事はわかるのか……」

 

「読めないけど言われると意味わかるってのは珍しくねぇぞ。……てかその話マジ?」

 

「おい」

 

「まぁまぁ」

 

惣一がタンクの由来について話し始める。

 

まとめると、戦車をタンク(貯蔵容器)と呼んで開発していたからで、今存在しない理由はバーテックスに対して無力だったから、である。

 

「さっぱりわかんねぇ」

 

「「……」」

 

この空気を何とかするため、惣一がビルドの話を再開した。

 

 

〔READY GO!〕

〔EVOLTECH ATTACK!!!〕

 

神世紀の始め頃に大赦の訓練施設として利用され、今や封鎖され廃墟と化した場所で二人の戦士が対峙していた。

 

大赦離反の際、未調整の二十本のフルボトルとともに持ち出したデータから複製したエボルドライバーを変身に使う二人の仮面ライダー、マッドローグとヴァーテックス。

 

幻徳と天神だ

 

「―――この道具は、フルボトルで変身する設計ではなかったようだな」

 

「……そうだ」

 

「それを克服するために、エボルトリガーなるモノが必要」

 

「……」

 

「だが、起動には高濃度のネビュラガスから作られるエネルギーの吸収が必要」

 

全てを見透かした天神に、幻徳は頷くしかなかった。

 

「葛城……と言ったな。奴はその力をブラックホールとして具現化した」

 

天神はクローズマキシマムに剥がされたガントレットの跡に視線を落とす。

あの時の傷は治ってはいなかった。

 

「ヴァーテックス、今のお前との戦いではこいつは何も……」

 

「今の"俺"の力では足りなかったか……?まぁいいだろう」

 

今のヴァーテックスは正確には仮面ライダーではない。

変身者はいない。

かつて、変身者として存在したものの遺伝子の一部を奪い、それで人の形を保っているに過ぎなかった。

 

 

「やっとそれに取り掛かるのか」

 

機器に繋がれ、60本のフルボトルの成分が入れられた小箱をみる龍我。

 

「ダメだ。二重にした方がいい」

 

「分かった」

 

戦兎はラビットタンクスパークリング、フルフルラビットタンクボトルに搭載されている、成分増幅装置を複製し、小箱に組み込む作業を、

一海は小箱の外装の耐久試験。

惣一は小箱に対応した新たなビルドドライバーの開発をしている。

 

龍我にはすることがなかった。

 

彼はクローズトリガーを取り出し、眺めてみた。

表面のネイビーブルーが部屋の照明で輝く。

 

戦兎の使うハザードトリガーの色と対象にしたのか?と、暇をつぶすため自問する。

 

「そういえば、クローズってどういう意味なんだ?」

 

ふと、そんな疑問が浮かんだ。

戦兎が休憩に入った時に、彼は聞いた。

 

「戦兎」

 

「どうした、お前は休んでろ」

 

「なぁ、クローズってどういう意味なんだ?」

 

「戦いを終わらせるって意味だ。『戦い』はCross、Zはアルファベットの最後と言う事で『終わらせる』『最後』と表せる。この二つを組み合わせたものだ」

 

「へぇ」

 

 

 

その時、

 

「あっ」

 

「ッ!」

 

龍の横顔を模したクローズトリガー。

それの上あご辺りを持っていた龍我だったが、この持ち方を長時間していたのに加え、動いた衝撃で上あごが斜め上にスライドし、上あごと下あごの間が赤く発光していた。

さらに、緑と赤のメーターが赤、青、赤青の混合の三色になった。

 

「やっべぇ……」

 

戦兎が黙り込んだことから、壊してしまったのかと焦り上あごのパーツを押し込む。

 

「戻った……」

 

 

 

「……」

 

 

この様子を一海は覗いていた。

そして、よく見えなかったがクローズトリガーの赤く発光した部位に字が書いてあった。

 

 

 

 

 

 

 

C■OS■-■ ■■I■D

 




失踪はしません

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