佐藤太郎は勇者である/桐生戦兎は仮面ライダーである 作:鮭愊毘
石動惣一が足を踏み入れた地は、彼が葛城巧として生まれ育った地。
住宅の多くに規制線が張られている。スマッシュによる被害が原因だ。
「しけてるねぇ」
ファウストの毒として活動していた自分の行いのせいでもあった。
子供に手をかけたこともあった。
「向き合うんだ。過去に」
すると、惣一が背後にさっきのようなものを感じ取り、トランスチームガンを構えた。
「スマッシュ……あいつの仕業か。
格闘特化の個体か。だったら」
エボルドライバーを装着し、エボルボトルを装填。
〔DRAGON!〕
〔RIDER SYSTEM!〕
〔EVOLUTION!〕
「変身!」
◇
「もう、貴方達が戦う必要は無くなった」
「……どういう意味だよ!魔王は倒してないし、あたしらの力も無くなったわけじゃない!世界だってちっとも平和になってないじゃないか!」
幼稚園で行われている勇者部による劇。
勇者が仲間と共に世界を脅かす魔王を討伐する話だが、終盤に差し掛かった今、美森扮する賢者が勇者達に戦いをやめるよう諭していた。
銀が扮する勇者がそれに噛みついていた。
「貴方達以外にも魔王に立ち向かう者がいることはご存知ですね?」
「まさか、そいつらに任せるっていうの!?」
夏凜扮する勇者も賢者の言う事に納得していない。
「力を得すぎた勇者はいずれ英雄ではなく悪魔として人々に恐れられる」
―――――普通の人間として生きることができなくなる。
◇
〔READY GO!〕
〔EVOLTECH FINISH!! CIAO!〕
エボルの蒼炎を纏った蹴りによりスマッシュは爆散した。
「……弱い。これは明らかに変だ」
数を揃えれば、生身の人間ですら動きを抑制させることができるのでは。
そう感じさせるほど弱体化していた。
「戦兎達にも知らせ―――」
変身を解除し、戦兎へ電話をかけようとしたその時、惣一の端末が撃ち抜かれた。
「―――始まりだ」
「ッ!」
〔BAT!〕
惣一は声のした方へ振り向き、トランスチームガンにバットフルボトル(トランスチーム用)を装填。
〔STEAM BREAK! BAT!〕
引き金を引いた。
惣一が反動で大きくのけ反る中、声の主はエボルトリガーに酷似した物体を光弾に向ける。
すると、光弾が物体から放出した何かによって相殺された。
「幻……徳……っ」
「聞こえるか、破滅へのカウントダウンが」
「何を言って―――」
この瞬間、この世界のどこかに亀裂が走る。
◇
劇が終わった。
途中で雰囲気がガラッと変わる場面があったものの、円満に幕を閉じることができた。
園児たちにありがとうと手を振る友奈達に笑顔はあったものの、心の奥から発せられたものではない。どこか迷いのような感情があった。
「いい劇でした」
幼稚園を後にする勇者部の前に、男とその側近が現れた。
◇
~nascita~
「暇だああああああ!!」
「んじゃ、俺コーヒー畑見てくるわ」
「そんなああああぁぁぁぁぁ……
猿渡も出かけちまったし、万丈もこれだ」
戦兎が端末を操作する。
「おかしいな、園子からの連絡が無い。もう劇は終わってもいい時間なのに」
地下室に移動し、置いてあったジーニアスフルボトルを手に取る。
「パンドラボックスは無くなり、そこから出来たボトルの力が集まったボトルがここにある。
……ある意味これもパンドラボックスと考えていいのか?
まっさかなー…………ん?」
龍我が朝まで寝ていた所の近くに、見かけない物体が転がっていた。
「ボトル?これどこかで……どこかで……あぁっ!ライフルのボトルと一緒に出てきたドライバー非対応の――――――」
ボトルを持った手で指をさす仕草をしたその時、ボトルが手から滑り落ちてしまった。
「おっと」
戦兎がこれを拾った瞬間
「がっ!?」
頭痛と共に映像が頭の中に流れ込んでくる感覚がした。
映像にはノイズが走り、明確ではない。ただ、声だけははっきりとしていた。
『葛城、お前は物理学者という肩書きすら偽りだった!』
男の声。
『戦兎、どうにもならないのかよ!』
相棒の声。
『私は……いえ、―――――――――郡千景』
「ッ!!」
頭痛が止んだ。
「忙しい奴だな、君は」
そして、頭痛の際倒れそうだった身体を支えてくれた男の姿があった。
「檀黎斗……さん」
◇
「確かに、あんなおいしい話のまま最後までいけるはず無いわよね」
帰路につく彼女らに笑顔は無くなっていた。
「でもこれが……本来の形、なんだよね……?」
「あたし達は戦いを甘く見てた所があったってことだ。いやぁ、これからも頑張らなくちゃな。ははっ、あはははは!」
「気味が悪いわ、この感覚。ビビッてるのかしら。こんなの見られたら太郎にどんな顔されるか」
「……お父さん、泣いてた」
「えっ?」
「分かるよ。ずっと一緒に暮らしてたから。でも、昔のままだったらあそこまではならなかったんじゃないかなぁって思ってる。人ってここまで変わるんだね」
園子のこの言葉に、美森が冗談半分でこう返す。
「あら?そのっちは何か変わったかしら」
「むぅ、そんなこと言うわっしーにはこうしてやる~!」
「え、ちょっと、そのっち!そこは……やめっ」
「須美~」
「何!?まさか銀も―――」
「友奈も混ざりたいだってさ」
「……」
「友奈も混ざりたいだってさ」
「……」
一瞬、美森の表情は何とも言えないものになっていた。
「あの三人、強いわね」
「見習ったほうが今後のためかもね。私達も頑張りましょ」
夏凜が風と樹の背中を励ましの意で叩いた。
「いったぁ!!今明らかにアタシの方が強かった!樹の方が明らかに優しかったぁ!」
「ね?いつもの騒がしい風に戻ったでしょ?」
「はい!ありがとうございます!今度試してみます!」
「樹ーっ!」
「あらあら。そんなに騒いでは女子力が薄らいでしまいますわよ?」
「夏凜ーっ!」
◇
「このボトルにそんな作用が?」
戦兎は、黎斗にこうなった経緯を話した。
「……特に気になった事が一つ」
「何だ」
「コオリチカゲ……」
この言葉を聞いた途端、冷静な素振りだった黎斗がいきなり戦兎の肩を掴んだ。
「今、何て言った?!」
「コオリチカゲ。知ってるんですか?」
黎斗は、驚きを隠せなかった。