それはやさしい慰めと 大きくなって知りました。
やさしさ頼りに生きてはきたが やさしさだけでは生きては行けぬ。
早く来てくれ 仕事人。
古びた社に一人の女性が小銭とお札を持って、泣きそうになりながら扉を開けた。
「お願いします!!相手は黒松物産、丈二の妻・・・佑衣!その両親、勝哉と富!!愛した人を殺され、お腹の子供も殺され・・・社会からも追放されました」
仏壇の上に置かれる金額は三十万とんで五百円だ。
「私が身を売って作ったお金です・・これで・・・これで恨みを晴らしてください!」
『その恨み晴らさせていただきます・・・金を置いて消えな』
男とも女ともつかない声を聞いた後、何度も礼を言いながらこの世を去っていった。
身体も精神もとうに限界を迎えていたのだろう。
◇
黒松物産は全国に居を構える一流大企業だ。標的を一目見ようとメンバーの一人が観察に出かける。
男女二人がテレビのインタビューを受けている。笑顔で答えているが、男の方はどこか張り付いた笑顔だ。
隣の女は女尊男卑をぼかしてはいるが崇拝しているようであり、自分が幸せである事を強調していた。
その両親である二人も似たような考えのようだ、男の方は長いものに巻かれろ主義なのだろう。
観察に来た男は吐き気がする気持ちを抑え込み、少しでも吐き出そうと唾を吐いてその場を後にした。
◇
その夜、密会の場所である地下の廃屋で、女性二人と男性一人が集まっていた。
「的は四人・・・頭数が足らねえが仕方ねえな」
「仕方ないんじゃない?頼まれたからには受けるわよ」
「っ!誰でい!」
「その仕事・・・ボクも受けさせてもらいたいな」
そこにいたのは髪を黒に染めた女だった。本来はフランスあたりの出身なのだろうが、金髪から黒髪に染めたのは仕事をする為だと解釈する。
「てめぇ・・・急に来て仕事を受けさせろだと?獲物は?」
男が聞くと黒髪の女は細く肉眼では判別が難しいピアノ線のようなものを取り出した。
「・・・・情に流された訳じゃねえだろうな?」
「ボクにもお金が欲しい理由があるんだよ」
「そうかい・・・仕事を済ませに行くぜ」
人数分に分けられた恨みの金を受け取り、それぞれが歩いていく。
◇
黒松物産の玉の輿に乗った佑衣とその親である勝哉、富も自宅にいるようだ。
四人は容易く中庭へと侵入し、屋敷の内部へと入る。
黒髪の女はフィンガーグローブの紐を結ぶと、纏められているピアノ線のような鋼線を手にした。
「うちの子の玉の輿で一生安泰だねえ・・・・あの子の夫と付き合っていた女なんて私には関係が無いから」
黒髪の女はピアノ線を口にくわえ、長さを調整する。ギィ――と鋼線が擦れる音共に
長くなっていく。
手首を返し、女はピアノ線を標的の首に向かって投げる。屋敷にあった大木を梃子代わりにして吊り上げていく。
「ああ・・・っ!ああああ・・・あああがああ!」
逃れようと足をばたつかせるが、唯の悪あがきに過ぎない。頃合を見計り、鋼線を指で弾いた。
「がっ・・・・!」
吊り上げられた標的は絶命し、女は鋼線を思い切り引っ張って回収した。
「・・・・・・」
◇
「おい、誰かおらぬのか?」
「はい、ただいま」
家政婦に化けたツインテールの少女は、風呂場にいた父親の方を標的にしていた。
「見ない顔だが新入りかね?」
「はい、今日は私が務めさせてもらいます」
「おお、そうか。しかし、若い娘に背中を流してもらえるとはな」
背を向けた瞬間、ツインテールの少女からは笑顔が消え、無表情となった。
ボールペンに見立てた物から針を飛び出させ、延髄に突き刺した。
「ぬごっ・・・!?」
「
針を引き抜き、そのまま引き返そうとするが一声を掛ける。
「旦那様?長湯は身体に悪うございますよ?」
そういって彼女は居なくなった。
◇
「全く、玉の輿に乗ったのだからみんなが祝福すればいいのに」
ドレッサーの前に座り、寝る前の肌の手入れをし始めるが突然、電気が消え常備灯だけになる。
「ちょっと!急に停電だなんて!」
祭りで使う横笛を口に咥え、その中に仕込まれた細い錐が静かに引き抜かれていく。
標的の女性の口を塞ぎ、座らせた後に錐を容赦なく左肩に突き立てる。
「ぎゃっ!・・・あああ・・」
ゆっくりと錐が心臓付近まで押し込まれていく。その中で女は声を絞り出す。
「あ・・・あん・・・た・・・仕事・・・誰に・・・・私へ・・・こんな」
「てめえの価値はよ・・・閻魔へ直々に地獄で聞いてきな?南無阿彌陀佛・・・」
仕上げと言わんばかりに錐が握られている左手を叩き、心臓へ先端を届かせ絶命させるとすぐに立ち去った。
◇
「なんだ?この列は」
これが男にとってある人物との出会いとなる。
尽きせぬこの世の怨み一切
如何様なりとも始末の儀
請け負い申し万に一つもしくじり有るまじく候
原作は少しだけ入ります。