亜種聖杯闘争 〜極夜之星〜   作:ジグソウ

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プロローグ

高校三年生の原川航一(はらかわこういち)はしみじみと思った。

あの時、別の参考書を手に取っていたら…と。

 

これは暗闇に暖かな光がさす物語。

 

 

今日は晴れた青空を眺めて、夕焼けを眺めて、星を眺めて。

そして、一日を終えた。

 

今日も快晴日和。明日も同じように平穏な日々が過ごせるようにと私は祈った。

 

しかし、現実はそうそううまく運ばない。今日は生憎の雨だった。

しとしと降り注ぐ雨音に耳を傾けてながら、明日の天気こそ晴天であるようにと、ささやかな祈りを捧げた。

 

今日は曇り。晴れとまではいかないものの、天に祈りがわずかばかり届いたのだろうか。

今日も祈り続ければ、明日こそ晴れるだろうと思う。

 

今日(こんにち)に至り我の願いが届き、雲1つない快晴だ。

こんな日を我は待ち望んでいたのだ。

ついに主への、祈りが、果たされる時だ。

「時間だ。さあ、我の聖杯戦争、……否。亜種聖杯闘争を始めるとしよう。」

サーヴァント・ルーラー、彼の尊大な宣言が亜種聖杯闘争の開始の合図となった。

 

聖堂にはただ1人も人間は存在していないにも関わらず、何かしらの気配が散乱していた。

見渡す限り伽藍とした空間で、目に見えるものは何もない。

時はまだ昼だというのに、沢山の窓から光が注いでいるというのに、心なしか薄暗い。

また、聖堂の奥には貼り付けされた男が祀られており、その足元にはたくさんのろうそくに火が灯っていた。

館内は無風であるのにも関わらず、ろうそくの火はゆらゆらと揺らめいている。

何がこの火を動かしているのだろうか。

よく観察してみると火の動きには一定の法則があることに気づいた。

ただ左右に揺れてだけではなく、あるものを中心として、取り囲むように、何も逃さぬように、火は揺らめいていたのだった。

ふと、磔にされている男の顔を見ると、気のせいだろうか。

苦悶の表情とも、憐憫の表情とも、なんとも言えない表情を浮かべているように私は感じた。

そして、目は閉じているというのに、口は結ばれているというのに、その像は私に何かを訴えているようにも感じた。

何を訴えているか思案していたが、時間切れのようだった。

「いけないですねぇ。聖なる我が社に動物が入ることは許されていない。ましてや、ネズミなどは。」

「チュー。」

音も無く現れたルーラーはゆっくりと私を捕まえて、一気に握りつぶした。

頭だけになった私は、薄れゆく意識の中で夢想する。

(しかし、「もっと生きたい」と思わないのは、

私は私の生に満足しているのだろう。

つまり、私は、幸せ、だった……。)

 

ある一匹の鼠の生涯の幕がここに降ろされた。

 

 

 

〜用語〜

・亜種聖杯闘争(1)

何者かが方々の手を尽くして再現した聖杯戦争の新たな形。

完全な聖杯には程遠いが、特徴として魔力変換の効率が高いものと

いる。

具体的にはサーヴァント消滅時に蓄積される魔力量が

桁外れに多いことが挙げられる。

状況によっては本物に限りなく近づく事もありうるだろう。

戦争ではなく闘争と呼称されるのは召喚されたあるサーヴァントの

告知によるものである。

・ルーラー(1)

この者は裁定者でありながらその職務を放棄し、

あまつさえ、亜種聖杯闘争を仕掛けた張本人。

その罪なるや、もはや救い難きを救うに能わず。

汝の真意やいかに。

求めるは知の極致か、はたまた現世への再臨か。

……はたまた地獄を再現する獣の降臨か。

・原川航一(1)

日本の地方都市に住む受験生。性格は内気であるが、表出しない

だけで、頑固で自尊心が高いため、ある種の露出願望がある。

また、本人に自覚は無いが、破滅願望も持っており、

非常事態にはそれが表出する。

 

 

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