亜種聖杯闘争 〜極夜之星〜   作:ジグソウ

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第2話 燃え盛る街〜家出〜

僕の名前は原川航一。どこにでもいる受験生の1人、のはずだった。

今では燃え盛る街中で必死に逃げ惑っている。そんな哀れなマスターの1人になってしまっていた。

 

〜今から30分前のこと〜

 

「ーそういう訳で、私たちはこのような理不尽なゲームに巻き込まれてしまったのだ。」

キャスターからの一通りの説明を聞き終えて僕は改めて思う。

「本当の真名は明かせないんですか?」

「困ったなぁ、私はアダムだと言ってるのに。」

流石にそれだけはおかしいと思う。

僕のアダムのイメージは「裸」で、「細マッチョ」な、「青年」である。

対して彼はしっかり「服」を着て、「やや太め」で、「おじさん」である。

英霊は全盛期の姿で呼ばれると言うが、果たしてキャスターにはどのような理由があるのだろうか。

「まあまあ、それはともかく家を出る準備は整った。マスターももしかすると最後の我が家なのかもしれないから、悔いのないようにしたまえ。」

「今更どうしろって言うんだ……。」

本当に最低限の荷物を持ち、家族の寝顔を見て、僕は玄関を出た。

外には炎が舐め回る地獄の風景が広がっていた。

 

〜回想終了〜

 

(……。)

僕は実体の無いキャスター・アダム(仮)の気配を感じながら、工房とするべき場所に向かっていた。

地脈の流れなどまるで知らない僕にとっては、最高の工房は召喚地、すなわち駅前の本屋であった。

(「ところで。1つ言わせてもらって構わないだろうか」)

(「何?」)

霊体化中のキャスターから念話が届いた。

(「所詮はキャスターだからね。力仕事は今後勘弁願いたいよ。

ましてや、男を抱えて何キロも走るのは。」)

(「……。ナルホド。」)

キャスターの意図を察した僕は、

(「善処しますが、また倒れたらお願いします。」)

と、逃げ回るテンションも手伝ってか、ややゆるく返答した。

キャスターの術式によって呼吸は平時のそれと同じように出来るが、

炎の暑さはどうにもならない。

クタクタにかなりながらもどうにか、キャスターを召喚した本屋にたどり着いた。

 

幸い外傷は見当たらず、電気も全て消されていた。

人払いの結界を貼っていったらしいが、それが功を成したらしい。

また、魂喰いのサーヴァントがやってくることもない。

さらに、この時間で外はこの惨状だ。まさかこの小さめの木造店にこもる人間はいないだろう。

「お邪魔しまーす。」

僕はキャスターに鍵を開けてもらって、そそくさと中に入った。

中は薄暗い闇が広がっていた。

この視界不明瞭の床から、消されたかもしれない魔法陣を探さなければならないのである。

「窓際、入り口は生憎外のおかげで明るい。しかし、流石にもっと奥の、周りが本棚の床だったぞ。私が召喚されたのは。」

気がついたら霊体化を解いたキャスターが後ろに立っていた。

「なんか魔法でパッと明るいできないんですか?」

「細かく言えば魔術なのだが……、それは置いておいて。残念ながらそういう魔術は出来ない。私のは火も光もまるで異なる魔術系統だからな。」

……アダムなら原初の何かしらをスキルなり、宝具なりをもって来そうなものだが。

とんでもない威力の代わりに一発しか打てない、といったような理由だろうか。

……しかし、漁夫の利を得るために、何故外の2人に仕掛けに行かないんだろう、と思う。正体を探るだけでも良いと思うんだけど。

そもそもー、

「世の中には考えなくても良い事柄がある。その最たる例は杞憂。

つまり、マスター、君のことだ。今防御術式を建物にかけているから、今ここで焼け死ぬような結末は考えなくて良い。

それよりも今はこれからの事を考えながら工房の要、つまり召喚地点を探すべきだ、と進言させてもらうよ。」

確かにその通りではあったので、僕はおっかなびっくりスマホの光をあてにしながら、魔法陣を探し始めた。

 

〜用語〜

・キャスター(2)

変化はゆっくりの方が好ましい。

本来はもっと腰を据えて構えているスタイルである。

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