亜種聖杯闘争 〜極夜之星〜   作:ジグソウ

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第3話 告白 〜丘の上で〜

「あっ、これかな? キャスター。」

見るからに魔法陣、……の消えかけらしい跡が床に残っているのを発見した。

「ちょうどいいところだ、マスター。こちらも非力ながら結界を貼り終えたところだ。」

やや汗をかいたキャスターが歩いてきた。

(キャスター「魔術師」のクラスなのになんでそんなに疲れているんだろう。古代の人は魔術が苦手なのかな? それとも「系統」というのがそんなに重要なんだろうか。)

相変わらず不思議なサーヴァントのキャスター・アダムは発見した魔法陣に座り、最後の仕上げに取り掛かろうとした。

その時、

「ズパッ!!!」

何か分厚い物をすごい速さで切ったような、そんな音が頭上から聞こえた。

間も無くして、天井の板とそれに付いている四方の壁の一部が、爆風によってきれいに吹き飛ばされていった。

それを見てキャスターは、

「即席とはいえ、私の防御術式がまるで効いていない……!」

「ど、どうするんだ、キャスター!」

空から入り込む熱風にむせながら、とりあえず僕たちは床に伏せていた。

「マスター、2人のサーヴァントらしき反応が近づいて来ているが、これは……! ……手に負えなそうだ。」

「急にしおらしくなって、そんなやばい2人なんですかー!?」

確かに、サーヴァントの能力というのは聞くところによると戦闘機1個分らしいが、それはこちらも同じなはずだ。

せめて逃げ切ることは出来ないのだろうか。

急変する事態の中、僕は必死に考えた。

(こんな、唯巻きこまれた挙句、何もせずに死にたく無い。そんなことあんまりだ。何もしてこなかった僕だけど、ただ無駄死にするよりは…。)

「1人でも道連れにしてやる!」

最後の思いは心を超えて、口から理不尽な現実に向けて解き放たれていた。

僕にとっての人間の本性というものが現れた瞬間だった。

その時。

胸が熱くなった。紅い光が溢れているのに気がついた。続いて頭がぼうっとした。

「……! その令呪を使ってはならない! 意識をしっかり持て、マスター! 」

時すでに遅く、紅い輝きは収まり、驚異的な速さでキャスターが僕を捕まえ、僕の視界から背景の風景が溶け落ちた。

数秒たった後、僕たちは近隣の小高い丘の上にいた。

一体何が起こったのだろうか。

まだ、状況に頭が追いついていない状態で、先程輝いた胸をさすっていると、

「これは強制転移! なるほど、この程度を無理を令呪は可能にするようだ。しかも、サーヴァントだけでなくマスターも一緒に転移出来るとは。……これは扱いが難しそうだ。」

と、自身に言い聞かせるようにしてキャスターは僕を地面に降ろした。

「よく分からないけど、ありがとうキャスター。」

僕は自然とお礼を口にしていた。令呪を使ったのは僕だが、口では使うなと言っても、何だかんだで命令に従ってくれた所を僕は非常に頼もしく思った。

「いや、礼はいい。もう少し強いサーヴァントだったら対抗するなり、止めるなり出来たはずだ。本当にすまない。最低限の命は保障するつもりだったのだが……。戦争というものを履き違えていたようだ。」

何故か逆に謝ってきた。しかし、その思いは僕も一緒だった。

「違うよ、キャスター。僕も履き違えていて、その、浮かれていたんだ。僕はこの非日常に。」

キャスターは不思議そうな顔をして、

「今までの生活に不満があったのか? 経済的に苦しくなく、今の居場所である学校では新聞で読んだようないじめもない。確かに、勉強はあまり出来ないみたいだが、それがそんなに苦痛なことかね。」

いつ間にか仕入れた情報を明かしつつ、キャスターは質問してきた。

(本当にその通りだ。僕はむしろ環境的には恵まれている。何かのコンプレックスもない。でも……。)

「僕はね、それが嫌だった。退屈で僕一人居なくても回っていく世の中には、全く興味も持てなかった。生きていく理由が分からなかった。痛いのが嫌いだから積極的に死は望んで無いけど、積極的に生も望んでない。そんな駄目な人間なんだ。だから……。」

「マスター……。」

キャスターはどこか神妙な顔持ちになり、僕を近くのベンチに降ろし座らせると、自分は隣に座り、顔をこっちに向けた。

「それで?」

キャスターは優しい、どこか暖かい表情になり、僕に独白の続きを促した。

「だから、僕なりに生きる意味を探した。部活に打ち込んでみたり、新しい趣味を始めたり、両親の仕事も調べたりした。でも、見つからなかった。とても失望したよ。僕はどうして生きているか分からなくなって、それで何も考えなくなって、テキトーに周りについて行くようになったんだ。」

一気に喋り、舌が回らなくなり始めていたが僕は続けた。

「でも、今分かった。理由は分からないし、この状況がこう思わせているだけかもしれない。けど、とても、今、僕は、生きたい。」

 

眼下に街が火に包まれている中、少年は確かに生きることについて触れ始めたのだった。

 

〜用語〜

・キャスター(3)

戦場経験は皆無。後、髪は地毛らしい。

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