バカとつばきちゃんとクレヨンしんちゃん 作:星の王子(笑)。
とある事件から約11年が経ち、野原しんのすけは高校二年になった。
「とうちゃん、俺バイトする」
背はスクスクと伸び、今ではひろしと殆ど変わらないまでになり、髪の毛も伸ばし坊主頭では無くなっていた。
「はぁ?何処でするつもりだ?」
ひろしは白髪が増えた程度であまり11年前と変わらない。
「んー、コンビニとか何処でもいいからバイトしたいんだ」
「ふーん。ま、いいんじゃねえか?もうしんのすけも高校生だしな」
「へー、お兄ちゃんバイトするんだ。じゃあお兄ちゃんのお小遣い私のになるの?」
小学六年生になったひまわりは、よくモデルとかのスカウトに話しかけられるようになったらしい。
「ほらほら、バカなこといってないで風呂でも入ってきなさい」
野原一家は11年経とうと平常運転である。
「………私、だれ?………かすかべ………しんちゃん……」
「新しくバイトに入った野原くんだ。みんなよろしく」
「野原しんのすけです。よろしくおねがいしまぁーす」
コンビニのバイト初日、パートのおばさん三人と挨拶をする。
「ああ野原くん。君に教える柊くんはもう少しで来るそうだから掃除でもして待ってなさい」
「ほーい、了解です」
予め教えてもらっておいた掃除用具入れから箒と塵取りを手に持ち、店の外に出る。
「んー、つまんないゾ」
30分程掃除をしていると、不意に強い風が吹く。
「あー!せっかく集めたごみがー!」
ごみの行方を追うために見上げると、茶髪のサイドテールで水色を基調とした質素な服の可愛いらしい少女のスカートが、強風により浮き上がっていたのだ。
「…白」
思わず呟いたその言葉に反応したその少女は、此方を見ると怒るわけでもなく呆けていた。
「…しんちゃん?」
「ん?俺はしんのすけだゾ?」
「やっぱり…大きくなって一瞬わかんなかったけど、しんちゃんなんだよね」
少女は眼に涙を浮かばせて儚く笑う。その顔を見て脳裏に浮かび上がる幼稚園時代の数々の記憶のひとつ、カスカベ座という映画館の映画に吸い込まれた事。そしてはじめて恋をしてプロポーズをした少女。映画から出ても遊ぼうと約束したのにもう二度と会えなかった少女。その少女は……
「……つばきちゃん?」
「覚えててくれたんだね、しんちゃん」
「忘れるわけないゾ!俺はあのときプロポーズしたつもりだったんだゾ…」
「…ごめんねしんちゃん。私が映画の住人だったばっかりに……」
そう、彼女は本来あの映画の世界の住人なのだ。ここにいるのはどう考えてもおかしい事なのだ。
「つばきちゃん、もう……オラの前から居なくならない?」
「……うんっ!」
少女つばきは満面の笑みでしんのすけに答えた。
そして店長には怒られた。