転生者の魔都『海鳴市』   作:咲夜泪

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03/まさかの刺客、てめぇの血は何色だ! vs元管理局の中将(1)

 

 

「……はぁ、酷い目に遭った……」

 

 ぐったりしながら行きつけの喫茶店で柚葉と一緒に一休憩する。

 『魔術師』とのデュエル? あんな状況から覆せるのは同じぐらいぶっ壊れたデッキとピンチの時に欲しいカードを絶対ドロー出来る『決闘者』だけである。

 その両方欠けているオレが何の打開も出来ずにフルボッコにされるのは当然過ぎる成り行きである。

 ……うん、楽観的に考えよう。もうあれ以上の相手はいないだろうと。それなら逆の意味で安心出来よう。

 

「柚葉、どうしたんだ? カードとにらめっこして」

「……私自身のデッキを把握しようとしているんだけど、カードのテキストが異世界の言語にしか見えないぃ……」

 

 ……うん、まぁ、コンマイ語は世界で最も難関な言語だからなぁ。

 初心者の柚葉では何が何だか訳が解らなくなってしまうだろう。何せ実際の『決闘者』にとっても難解であるのだから。

 

「そういえば、柚葉の『シスの暗黒卿』としての直感は働かないのか? こう、三段飛ばしでオレのデッキを盗んだヤツはアイツだー、とか、この次元の元凶はあれだー、とか」

 

 もはや未来予知に近い彼女の直感に期待を寄せるが、更に渋い顔になって顔を横に振る。

 

「……今日起きてから、私の直感は全部狂ったままよ。未来なんて欠片も見えない……」

 

 こ、これは『遊戯王』という世界法則が柚葉の『シスの暗黒卿』としてのフォースすら凌駕しているという事か?

 まぁ普通に考えても、世界の法則を書き換えるような輩だ、それこそ『神』に匹敵するようなレベルじゃないだろうか。

 ……普通にヤバいんじゃないかなぁと思いつつも、まぁ『遊戯王』だから、そんな人智の及ばぬ相手に対してでも『決闘』でなら解決出来る、のか? 『決闘』マジパネェな。

 

「……こんな事なら、私もこの『異変』に飲み込まれていれば――」

 

 そんな事を言って、柚葉は更に落ち込んでしまう。

 ……確かに『魔術師』のように半分受け入れていれば『遊戯王』という世界法則に乗った上で存分に活躍出来ただろうが――。

 

 

「いやいや、勘弁してくれ。こんな世界が改変されるような事態でも案外何とかなるって思えるのは、変わらずにいてくれる柚葉のお陰なんだぞ?」

 

 

 うん、柚葉すら「『決闘者』なら当然よね!」なんて言われた日には精神的に参って卒倒していただろう。

 こうして柚葉が変わらずにいるお陰で絶対に消えない道標となり、この混沌とした世界に飲み込まれる事無く初志を目指せるのだ。

 

 ――と、何故か柚葉の顔が真っ赤になっている。……あれ、オレ、何か恥ずかしい事を言ったけ……?

 

 

「――ぁー、甘ったりぃ。砂糖吐きすぎて死にそうぅ。マスターのおっちゃん、ブルーアイズマウンテン一つ~。飛び切り苦いのちょーだい」

 

 

 と、この妙な空気を読まずに引き裂いて現れたのは十四歳ぐらいの金髪少女であり、注文しながら堂々と柚葉の隣に座る。

 

「アリア!? な、何で此処に?」

「ちーっす、柚葉。そういう柚葉こそ学校サボって愛しの彼とデート? 白昼堂々大胆だねぇー」

 

 まさに「リア充爆発しろ」と言わんばかりの清々しい笑顔で柚葉をからかい、柚葉の方はより一層赤くなってしまう。

 うん、その恥じらう様はもう愛しくて、こっちも赤くなってくる。と、このままでは永遠にからかいフェイズを抜け出せない気がする。

 

「知り合いか? 柚葉。えーと……」

「ああ、こうして直接会うのは初めてかな、秋瀬直也君。君とは縁が無かったからね。私の名前はアリア・クロイツ。よろしくねー。まぁ君の事は柚葉から色々と、そりゃもう砂糖吐き散らすほど聞いてるけどぉ?」

 

 柚葉の知り合い? という事は彼女も『転生者』なのだろうか?

 それに柚葉から色々聞いているとか、彼女と普通に付き合える同性なんて、中々奇異というか特異な人物じゃないだろうか。

 

「で、どうしたの? なんかまた『イベント』に巻き込まれてるんでしょ? 主人公体質にヒロイン体質ってヤツ? 年中面白そうで良いねぇ、対岸の火事として見る分は。――さぁさぁこの私に喋ってご覧。生産性のある行為になるかは知らんけど」

 

 ……ふむ、物は試しだ。世界法則が『遊戯王』に改変されている事以外は話して良いだろう。

 とりあえずはオレの元のデッキとやらを取り戻さない事には始まらないだろうし。

 

 

 ――かくかくしかじか――少年説明中。

 

 

「――へぇ、そんな命知らずが居たんだ。それに『決闘者』の風上にも置けないねぇ。ただ一つ言えるのは、君のデッキを使って『決闘』しようものならすぐ判明しちゃうだろうから、君のデッキを盗んだ犯人は『決闘』しようとしない者だね。ホント、そんなのを『決闘者』とはとても呼べないよ」

 

 香り高いコーヒーを優雅に飲みながらアリアは分析する。

 ふと、注文の紙を見てみると『ブルーアイズマウンテン』と書いており、お値段3000円と書かれている事に密かに驚愕する。

 ただのコーヒー1杯なのにすっげぇ高いぞ!?

 

「――じゃ、秋瀬君、私と『決闘』しようぜ! 君は出逢う相手に片っ端から『決闘』して行けば良いのさ。断るヤツ、もしくは姿を見せないヤツが犯人だろうし」

 

 ふむ、そういうもんなのか……?

 いや、世界の法則が『遊戯王』一色ならば、『デュエル脳』になるのが一番正しいのか? うん、とりあえず負けるにしろ、勝つにしろ、『決闘』しない事には何も始まらないか。

 オレはアリアの提案を了承するのだった。

 

 

 ――後から知ったが、彼女が『二回目』の『転生者』であり――しかもかつての、柚葉が支配していた頃の管理局の中将で――元の世界では『三回目』の『転生者』との能力格差が著しく酷かったが、この世界においてはそんな格差などまるで無かったのだ。

 

 そもそも『転生者』も非転生者もありやしない。

 ――『決闘者』と『決闘者』、此処にはそれしかないのだ。

 

 

 

 

『――デュエル!』

 

 喫茶店の外に出て、オレ達は同時にそう叫ぶ。先攻は――彼女、アリアの方だった。

 

「おっと、私のターンだね」

 

 初期手札の5枚を見て、少しだけ彼女は考える。3秒ぐらいの思案の後、開幕の一手を開示した。

 

「魔法カード『強欲な壺』発動、デッキからカードを2枚ドローするぅ。お、いいもん来たじゃん~」

 

 アリア・クロイツ

 LP8000

 手札5→4→6

  無し

 魔法・罠カード

  無し

 

 ……あ、最初期に登場した問答無用、強力無比のドローカード。発動条件もコストも無しに手札を1枚増やせる、元祖ドローソースの禁止カードである。

 当然と言えば当然だ。何せ当時から『強欲な壺』が入らないデッキが存在しなかったからだ。当時はデッキ投入率ほぼ100%を誇っていたとか。

 

「更に魔法カード『天使の施し』発動~! 自分のデッキからカードを3枚ドローし、手札から2枚選択して捨てるぅ。ふむふむ、1ターン目から動けって事かなぁ?」

 

 アリア・クロイツ

 LP8000

 手札6→5→8→6

  無し

 魔法・罠カード

  無し

 

 そして次の魔法カードは手札交換・墓地肥やし・デッキ圧縮を1枚でこなす禁止カード……すっげー、この二つが普通に使える環境なんて想像出来ないぞ。

 『強欲な壺』と比べて1枚多くドロー出来るが、2枚捨てなければならない。まぁこれは間違いだ。2枚も墓地に捨てれると書くべきだ。恐ろしいったらありゃしない。

 

「魔法カード『汎神の帝王』発動、手札の『帝王』魔法・罠カード1枚を墓地に送り、デッキから2枚ドローする」

 

 アリア・クロイツ

 LP8000

 手札6→5→4→6

  無し

 魔法・罠カード

  無し

 

 と、『帝王』だと? 『帝』なのか?

 『帝』とは『遊戯王』に古くからあるデッキテーマの一つであり、下級モンスターを生け贄(リリース)して上級モンスターである『帝』モンスターを出すアドバンス召喚を主軸に戦うデッキだ。

 だが、『遊戯王』で通常召喚出来る回数は1ターンに1回、アドバンス召喚も通常召喚に入る。故に今の最新の環境には到底追いつく事が出来ず、回数制限の無い特殊召喚を主軸とするテーマに駆逐され、ファンデッキの地位に収まっていた筈……?

 

 ――ん? ちょっと待て。手札の『帝王』魔法・罠カード1枚を墓地に送らなければ発動出来ないのかぁと思ったが、何かおかしい事しか書かれてないか? それ。

 

「そして墓地に落ちた『汎神の帝王』の更なる効果を発動、『汎神の帝王』のこの効果は1ターンに1度、墓地のこのカードを除外し、デッキから『帝王』魔法・罠カード3枚を相手に見せ、その中から1枚選ばせて、残りをデッキに戻す。私が選択するカードは『帝王の開岩』『帝王の開岩』『帝王の深怨』の3枚だ、どれにするー?」

「はぁ? なんじゃそりゃぁ!? ドローカードと思ったら三択の苦渋の選択だと!? しかも墓地に落ちて即座に発動可能だと!?」

 

 あれ、何か嫌な予感がする。この狂ったような回り、まさか古参と呼ぶに相応しい『帝』も第九期基準になってるのか!?

 

 表示されている二種類の『帝王』カードのテキストを見てみると――。

 

 

 『帝王の開岩』

 永続魔法

 「帝王の開岩」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

 (1):このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、

 自分はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。

 (2):自分が表側表示でモンスターのアドバンス召喚に成功した時、

 以下の効果から1つを選択して発動できる。

 ●そのモンスターとカード名が異なる

 攻撃力2400/守備力1000のモンスター1体をデッキから手札に加える。

 ●そのモンスターとカード名が異なる

 攻撃力2800/守備力1000のモンスター1体をデッキから手札に加える。

 

 『帝王の深怨』

 通常魔法

 「帝王の深怨」は1ターンに1枚しか発動できない。

 (1):手札の攻撃力2400/守備力1000のモンスター1体

 または攻撃力2800/守備力1000のモンスター1体を相手に見せて発動できる。

 デッキから「帝王の深怨」以外の「帝王」魔法・罠カード1枚を手札に加える。

 

 

 『帝王の開岩』はアドバンス召喚した際に他の『帝』をデッキからサーチする永続魔法、『帝王の深怨』の方は手札の『帝』モンスターを見せる事で『帝王』魔法・罠カードを何でも引っ張って来れる万能サーチカード?

 

「……『帝王の開岩』で」

 

 結局どっちを選んでも『帝王の開岩』は手札に来るので、せめて万能サーチされないように『帝王の開岩』を選ぶ。

 

 アリア・クロイツ

 LP8000

 手札6→7

  無し

 魔法・罠カード

  無し

 

 アリアは笑顔で『帝王の開岩』を手札に加える。あれだけ動いて全く手札減ってねぇ……!?

 

「あいあい、それじゃ永続魔法『帝王の開岩』を発動、このカードが魔法・罠ゾーンに存在する限り、私はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚出来ない。そして『帝王の開岩』は1ターンに1度、私が表側表示でモンスターのアドバンス召喚に成功した時、そのモンスターとカード名が異なる攻撃力2400・守備力1000のモンスターをデッキから手札に加えるか、そのモンスターとカード名が異なる攻撃力2800・守備力1000のモンスター1体をデッキから手札に加える。――まぁ『帝』モンスターを生け贄召喚した時に別の『帝』モンスターをデッキから持ってくる効果だねぇー」

 

 アリア・クロイツ

 LP8000

 手札7→6

  無し

 魔法・罠カード

  永続魔法『帝王の開岩』

 

「手札から《天帝従騎イデア》を通常召喚、効果発動。《天帝従騎イデア》の効果は1ターンに1度、このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから《天帝従騎イデア》以外の攻撃力800・守備力1000のモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。そしてこのターン、自分はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚出来ないんだけど、『帝王の開岩』で被ってるねー。――デッキから《冥帝従騎エイドス》を守備表示で特殊召喚~」

 

 アリア・クロイツ

 LP8000

 手札6→5

 《天帝従騎イデア》星1/光属性/戦士族/攻800/守1000

 《冥帝従騎エイドス》星2/闇属性/魔法使い族/攻800/守1000

 魔法・罠カード

  永続魔法『帝王の開岩』

 

 1枚で2体分の生け贄要因を確保? まぁ次のターンまでに倒してしまえば――。

 

「そして《冥帝従騎エイドス》の効果発動、このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合、このターン、自分は通常召喚に加えて1度だけ自分メインフェイズにアドバンス召喚が出来る。――《天帝従騎イデア》と《冥帝従騎エイドス》をリリースして《轟雷帝ザボルグ》をアドバンス召喚~!」

 

 アリア・クロイツ

 LP8000

 手札5→4

 《轟雷帝ザボルグ》星8/光属性/雷族/攻2800/守1000

 魔法・罠カード

  永続魔法『帝王の開岩』

 

 あ、うん、解ってた。やっぱりこれオレの知っている『帝』の動きじゃねぇ!?

 

「《轟雷帝ザボルグ》の効果発動、それにチェーンして『帝王の開岩』の効果発動、更にチェーンして墓地に落ちた《天帝従騎イデア》の効果発動~」

 

 な、一体何が起こるんだ……!?

 

「まずは《天帝従騎イデア》の効果処理からねー、このカードが墓地に送られた場合、除外されている自分の『帝王』魔法・罠カード1枚を手札に加えるー。私は除外されてる『汎神の帝王』を手札に」

 

 げ、あの万能ドローカードがまた手札に戻るのかよ!? つーか除外したのにあっさり戻ってくんなよ!?

 

「続いて永続魔法『帝王の開岩』の効果処理。アドバンス召喚に成功した事でデッキから攻撃力2800・守備力1000の《冥帝エレボス》を手札に加えるねー」

 

 アリア・クロイツ

 LP8000

 手札4→5→6

 《轟雷帝ザボルグ》星8/光属性/雷族/攻2800/守1000

 魔法・罠カード

  永続魔法『帝王の開岩』

 

 おっかしいなぁ、手札がまた6枚に戻りやがった。アドバンス召喚したのに何で減ってないの? 何かおかしくね?

 

「そして最後に、《轟雷帝ザボルグ》がアドバンス召喚に成功した場合、フィールドのモンスター1体を破壊する。私は《轟雷帝ザボルグ》を破壊、たーまやー!」

 

 へ? 自分から自分を破壊した? プレイングミス――なんて到底望めないんだろうなぁ……。

 

「破壊したモンスターが光属性だった場合、その元々のレベルまたはランクの数だけお互いはそれぞれ自分のエクストラデッキからカードを選んで墓地に送る。《轟雷帝ザボルグ》は光属性の上にレベル8、つまり8枚ずつだ――ただし、《轟雷帝ザボルグ》が光属性モンスターをリリースしてアドバンス召喚に成功した場合、豪華特典で墓地に送る相手のカードを私が選べちゃうんだよねー!」

 

 んな、1ターン目からエクストラデッキ破壊だとぉ!?

 エクストラデッキの枚数は15枚、つまり、半分以上削られる訳である。

 そもそもエクストラデッキに頼らない戦い方が主となる『帝』にとって、自分のエクストラデッキを粉砕しても何ら痛手を背負わない。

 それにエクストラデッキのモンスターは一度正規召喚しなければ墓地から特殊召喚する事が出来ない。正規召喚を経ずに落とされたモンスターは完全に死に札となるのだ――。

 

「さーて、『魔術師』から貰ったデッキのエクストラはぁ~と。わー、すっごい白に偏ってるぅー。……あー、苦労するね、これじゃぁ」

 

 その同情が超痛ぇ! そして容赦無く8枚のカードが選出される。

 

「《ミラーフォース・ドラゴン》《デス・ウィルス・ドラゴン》《氷結界の龍 トリシューラ》《レッド・デーモンズ・ドラゴン・スカーライト》《クリアウィング・シンクロ・ドラゴン》《ブラック・ローズ・ドラゴン》――あとドラゴン族っぽい《氷結界の龍 ブリューナク》と《TG ハイパー・ライブラリアン》、以上8体墓地行き決定ぃ~!」

 

 ん? 妙な選出だ。他に落とすべきカードがあるのに、何で此処までドラゴン族モンスターに偏ってるんだ? オレとしては助かるが……?

 

「あ、私の方はエクストラデッキから《PSYフレームロード・Ω》×3、《PSYフレームロード・Ζ》×2、《旧神ヌトス》×2、《No.86 H-C ロンゴミアント》の8体を墓地に落とすねー」

 

 ぽいぽいと処理が終わる。1ターン目から大惨事であるが、オレのデッキにはエクストラデッキに頼らずとも高打点になる《ワイトキング》がいる。

 本当に《ワイト》系が必要なのかと思っていたが、それのお陰でまだ何とかなるレベルである。

 

「墓地の《PSYフレームロード・Ω》の効果発動~、このカードが墓地に存在する場合、このカード以外の自分または相手の墓地のカード1枚をデッキに戻す。私は1枚目の《PSYフレームロード・Ω》の効果で《旧神ヌトス》、2枚目の《PSYフレームロード・Ω》の効果で2枚目の《旧神ヌトス》をエクストラデッキに戻すねー」

 

 ……何、だと……!? 墓地に行っても悪さするんかよ、そのカード!?

 

「更に墓地の《PSYフレームロード・Ζ》の効果発動、このカードが墓地に存在する場合、このカード以外の自分の墓地の『PSYフレーム』カード1枚を手札に加え、このカードをデッキに戻す~。私は3枚目の《PSYフレームロード・Ω》を手札――まぁシンクロモンスターカードだからエクストラデッキに戻るんだけどね」

 

 自爆特攻かと思いきや、8枚中6枚エクストラデッキに戻りやがった!?

 ……これ、もう1回《ザボルグ》出されたら、こっちのエクストラデッキだけ根刮ぎ墓地に送られる事になるのかよ……!?

 

「まだまだ行くよー。魔法カード『帝王の深怨』発動、『帝王の深怨』の効果は1ターンに1度、手札の攻撃力2400・守備力1000のモンスター1体、または攻撃力2800・守備力1000のモンスター1体を相手に見せて、デッキから『帝王の深怨』以外の『帝王』魔法・罠カード1枚を手札に加える。――私は攻撃力2800・守備力1000の《冥帝エレボス》をチラ見せてデッキから永続罠『連撃の帝王』を手札に加えるねー」

 

 アリア・クロイツ

 LP8000

 手札6→5→6

  無し

 魔法・罠カード

  永続魔法『帝王の開岩』

 

「更に手札から『汎神の帝王』発動、『帝王』カード1枚捨てて2枚ドロー」

「は? そのドローカード、1ターンに1度の制限無いのかよ!?」

「墓地から除外して3枚苦渋の選択させる効果は1ターンに1度だけど、この効果に制限は無いんだなぁ。――他のカードには大抵ある、墓地に落ちたターンは墓地から除外する効果は使用出来ないって一文も何故か無いしぃ?」

 

 それ、明らかに第九期のカードだろ!? 色々とおかしいって!

 

「墓地の《冥帝従騎エイドス》の効果発動、墓地のこのカードを除外し、《冥帝従騎エイドス》以外の自分の墓地の攻撃力800・守備力1000のモンスター1体を守備表示で特殊召喚する。この効果を使ったターン、自分はエクストラデッキから特殊召喚出来ない。――私はこの効果で墓地の《天帝従騎イデア》を守備表示で特殊召喚するねー」

 

 アリア・クロイツ

 LP8000

 手札6→5→4→6

 《天帝従騎イデア》星1/光属性/戦士族/攻800/守1000

 魔法・罠カード

  永続魔法『帝王の開岩』

 

 げ、また出てきやがった。墓地に行っても効果発動してリリース要員が尽きないのか……!?

 

「まぁ此処で特殊召喚しても《天帝従騎イデア》の効果は2つとも1ターンに1度だから使えないけどね~」

 

 む、そう言われてみれば、これを次の自分のターンでやれば、さっきと同じようにまたデッキから《冥帝従騎エイドス》が特殊召喚されてリリース要員が尽きなくなるのに、何でこのターンに出したんだ? 何か別の意図がある……?

 

「墓地の永続罠『真源の帝王』の効果発動、『真源の帝王』のこの効果は1ターンに1度、このカードが墓地に存在する場合、このカード以外の自分の墓地の『帝王』魔法・罠カード1枚を除外し、このカードを通常モンスター(天使族・光・星5・攻1000・守2400)としてモンスターゾーンに守備表示で特殊召喚する。尚、この状態の『真源の帝王』は罠カードとして扱わない」

 

 げ、『帝王』魔法・罠カードを墓地に肥やしていたのはこれが目的か。

 ほぼ無尽蔵なリソースから毎ターン生け贄要因を確保し、更に除外したカードを手札に戻したい放題、なんぞこれ!?

 

「カードを2枚セットしてターンエンド」

 

 アリア・クロイツ

 LP8000

 手札6→4

 《天帝従騎イデア》星1/光属性/戦士族/攻800/守1000

 《真源の帝王》星5/光属性/天使族/攻1000/守2400

 魔法・罠カード

  永続魔法『帝王の開岩』

  伏せカード2枚

 

 敢えてこの2体のモンスターを壁要因として出した……?

 いや、それだけじゃない。先程、アリアがサーチした『連撃の帝王』の効果を、『デュエルディスク』の画面を弄って改めて見てみる。

 

 『連撃の帝王』

 永続罠

 (1):1ターンに1度、相手のメインフェイズ及びバトルフェイズに

 この効果を発動できる。

 モンスター1体をアドバンス召喚する。

 

 うわぁ、相手ターンにアドバンス召喚して相手ターンに動く気満々じゃねぇか!?

 もう1枚のカードも、何か非常にやばそうな予感がする。

 

「オレのターン!」

 

 秋瀬直也

 LP8000

 手札5→6

  無し

 魔法・罠カード

  無し

 

 さて、どうするか。1ターン目でエクストラデッキを8枚も破壊された以上、そっち方面は余り期待出来ない。

 だが、幸運な事にもエクストラデッキに頼らずとも戦える手札が来てくれていた。まずは――。

 

「オレは手札から魔法カード『ブラック・ホール』発動! フィールドのモンスターを全て破壊する!」

「あーりゃりゃ、破壊されて墓地に行った《天帝従騎イデア》の効果発動、除外されている『帝王』魔法・罠カード、『帝王の深怨』を手札に加えるよ~」

 

 秋瀬直也

 LP8000

 手札6→5

  無し

 魔法・罠カード

  無し

 

 アリア・クロイツ

 LP8000

 手札4→5

  無し

 魔法・罠カード

  永続魔法『帝王の開岩』

  伏せカード2枚

 

 良し、壁モンスターは全部排除した。更に!

 

「そして更に魔法カード『ハーピィの羽根帚』を発動! 相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する!」

 

 強大無比の魔法カードで相手の魔法・罠ゾーンのカード3枚を一気に殲滅して丸裸とする。

 

 アリア・クロイツ

 LP8000

 手札5

  無し

 魔法・罠カード

  無し

 

「あーあ、『連撃の帝王』と『帝王の烈旋』が台無しだねぇ~。残念残念」

 

 伏せられていたもう1枚は速攻魔法『帝王の烈旋』? なになに?

 

 『帝王の烈旋』

 速攻魔法

 「帝王の烈旋」は1ターンに1枚しか発動できず、

 このカードを発動するターン、

 自分はエクストラデッキからモンスターを特殊召喚できない。

 (1):このターン、アドバンス召喚のために自分のモンスターをリリースする場合に1度だけ、

 自分フィールドのモンスター1体の代わりに相手フィールドのモンスター1体をリリースできる。

 

 何この鬼畜生のカード。こっちのモンスターをリリースして展開するとか酷くね? だ、だが、幸運な事にもその危険性を排除出来た訳だ。千載一遇の勝機――!

 

「魔法カード『闇の誘惑』発動、デッキから2枚ドローし、手札の闇属性モンスター1体を除外する。手札に闇属性モンスターが無い場合、手札を全て墓地に送る! ――ドロー! そしてオレは闇属性の《ワイトキング》を除外する!」

「あー、《ワイトキング》を除外するって事は《ワイトメア》が手札にあるんだね」

 

 秋瀬直也

 LP8000

 手札5→4→3→5→4

  無し

 魔法・罠カード

  無し

 

 バレバレであるがスルーする。

 

「更に魔法カード『おろかな埋葬』発動! デッキからモンスター1体を墓地に送る。オレは《ワイトプリンス》を墓地に送り、効果発動、このカードが墓地に送られた場合、デッキ・手札から《ワイト》《ワイト夫人》を1体ずつ墓地に送る」

 

 万能の墓地肥やしカードを発動し、手札が3枚になってしまうが、これで墓地に骸骨のアンデットである《ワイト》達が3体――いや、まだまだ墓地を肥やせる!

 

「魔法カード『生者の書-禁断の呪術』発動、自分の墓地に存在するアンデット族モンスター1体を特殊召喚し、相手の墓地に存在するモンスター1体をゲームから除外する。オレは《ワイトプリンス》を特殊召喚し、《天帝従騎イデア》を除外する!」

 

 秋瀬直也

 LP8000

 手札4→3→2

 《ワイトプリンス》星1/闇属性/アンデット族/攻0/守0

 魔法・罠カード

  無し

 

 『帝』の『従騎』をゲームから除外して小さい王冠を被った貴族風の髑髏モンスターを特殊召喚する。

 この『生者の書-禁断の呪術』、相手の墓地にモンスターがいなければ使えないが、相手の墓地のモンスターも除外出来るので非常に便利である。

 

「ソイツで本当に良いのかなぁ? ――相手の墓地はもっと良く見た方が良いよー?」

 

 なんかアリアが意味深に笑っているが、とりあえずこれで生贄要員の終わり無き確保の流れを断ち切った、と思う。

 

「そして手札からレベル1のチューナーモンスター《グローアップ・バルブ》を通常召喚し――レベル1の《ワイトプリンス》とチューニング! シンクロ召喚! レベル2《フォーミュラ・シンクロン》!」

 

 一輪の花に一つ目という特徴的な植物族モンスターが一つの光の輪となり、その中を身なりの良い骸骨が潜って光となり――エクストラデッキから現れるはF-1の車体と機械族のロボットが合体したようなモンスターだった。

 攻撃力が200なので守備表示だ。コイツは打点用ではなく――。

 

「《フォーミュラ・シンクロン》の効果発動、墓地に落ちた《ワイトプリンス》の効果発動、まずは《ワイトプリンス》から――デッキから《ワイト》《ワイト夫人》を墓地に送る。そして《フォーミュラ・シンクロン》がシンクロ召喚に成功した時、デッキから1枚ドローする」

 

 秋瀬直也

 LP8000

 手札2→1→2

 《フォーミュラ・シンクロン》星2/光属性/機械族/攻200/守1500

 魔法・罠カード

  無し

 

 むこうと比べれば雀の涙ほどのアドだが、現在、墓地に落ちた《ワイト》モンスターの合計は5枚。更に――!

 

「手札から《ワイトメア》の効果発動、手札のこのカードを墓地に捨てて、ゲームから除外されている自分の《ワイト夫人》または《ワイトキング》をフィールド上に特殊召喚する。フィールドに舞い戻れ、《ワイトキング》!」

 

 そして除外ゾーンからこのデッキのエースモンスターが颯爽と登場する。

 ――青い衣を纏った『死者の王』が、オレのフィールドに君臨する。

 

 秋瀬直也

 LP8000

 手札2→1

 《フォーミュラ・シンクロン》星2/光属性/機械族/攻200/守1500

 《ワイトキング》星1/闇属性/アンデット族/攻?/守0

 魔法・罠カード

  無し

 

「《ワイトキング》の攻撃力は自分の墓地に存在する《ワイトキング》《ワイト》の数×1000ポイントの数値になる。《ワイト夫人》《ワイトプリンス》《ワイトメア》には墓地に存在する限り《ワイト》として扱う為、今の《ワイトキング》の攻撃力は6000だ!」

 

 秋瀬直也

 LP8000

 手札1

 《フォーミュラ・シンクロン》星2/光属性/機械族/攻200/守1500

 《ワイトキング》星1/闇属性/アンデット族/攻?→6000/守0

 魔法・罠カード

  無し

 

 ふっふっふ、今や《ワイトキング》はあの《ブルーアイズ》の二倍の攻撃力を持っている上に、万が一、戦闘破壊破壊されても墓地の《ワイト》を除外する事で自己復活出来る超弩級モンスターなのだ!

 

「――バトル! 《ワイトキング》でプレイヤーにダイレクトアタック!」

 

 《ワイトキング》がアリアに指差し物凄い勢いで地下から出現した骨の大群が押し寄せ、蹂躙する。

 ……あれ、大丈夫なのか? 超痛そうなんだが。物理的に。

 

「~~っ!? さっすがに攻撃力6000は痛いねぇ、アニメだったら後攻1ターンキルですよ奥さん。――でもおかしいなぁ、私はこのターンに仕留められると思ってたのに」

 

 アリア・クロイツ

 LP8000→2000

 

 一気に6000もの大ダメージを食らいながらも、それでも浮かべたアリアの不敵な笑みに警戒心を上げる。

 ……その感覚が恐ろしい。6000もの大ダメージを受けた、ではなく、このターンで仕留め損なったという認識でしかない事に恐怖を覚える。

 

「……カードを1枚セットしてターンエンド」

 

 秋瀬直也

 LP8000

 手札1→0

 《フォーミュラ・シンクロン》星2/光属性/機械族/攻200/守1500

 《ワイトキング》星1/闇属性/アンデット族/攻6000/守0

 魔法・罠カード

  伏せカード1枚

 

 

 




 本日の禁止カード

 『強欲な壺』
 通常魔法(禁止カード)
 デッキからカードを2枚ドローする。

 シンプル・イズ・ベストを地で行く最強のドローカード。
 『遊戯王』初期のカードでは文章が短いからこそぶっ壊れているカードが数々あり、これはその一枚である。
 どんなカードもデッキから引かねば意味がない中、何のコストも無しに手札を1枚増やす万能カード。
 どんなデッキにも入る事から、『強欲な壺』の入ってないデッキはデッキじゃないとさえ言われていた。
 皆もこれで逆転のカードを引き当てよう!

 ……なお、秋瀬直也のデッキには入ってない。

 『天使の施し』
 通常魔法(禁止カード)
 自分のデッキからカードを3枚ドローし、その後手札を2枚選択して捨てる。

 使われる方にとっては悪魔の如き万能カード。ドローしてデッキ圧縮しつつ墓地においてこそ意味のあるカードを2枚も墓地に送れるスーパーマン。
 制限→禁止→制限→禁止と結構禁止制限の境界を行ったり来たりしていたが、このままの効果で現在の環境に帰ってくる事は絶対に無いだろう。

 ……なお、秋瀬直也のデッキには入ってない。

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